ドラマティックレポート 9
勉学に明け暮れる夏休みを経て、俺たちはますます張り切って戦っていた。
しかも、ライバルのような存在まで出来た。その名は鬼道衆。なにやら鬼の面を被っているのがトレードマークの人たちだ。
何かと事件がある度に現れる彼らは、てっきり俺が目的と思ったら実は美里狙いだったらしい。うーん、悪趣味な。
という冗談はともかく、龍脈の流れを見ることが出来る菩薩眼が、何の役に立つんだ?龍脈を司る俺が欲しいというならともかく。まあ、全く役立たないことはないが、最初が菩薩眼狙いとしたって、そばにいる俺狙いになってもおかしくないだろうに。
で、何だかんだとあった挙げ句、その総元締めであるところの九角とやらが美里を連れ去るという強硬手段に出た。
「美里なら、平気なばかりか、むしろ敵を壊滅させて戻って来るんじゃないか?」
という俺の意見は押し潰された。しょうがないので、九角を美里の手から救い出しに行くことになった。
そうして、九角家終焉の地とやらで、俺たちは対面した。
これまでの鬼道衆も鬼に変化したけど、九角も変化して鬼道とやらを披露してくれた。
「外法ってやつを見せてやるぜ」
まあ、せっかく見せてくれるってんだから、有り難く拝見させて頂いたが。
感想?うーん…直接殴る方が好みです。
結局、俺の方が強いわけで、でっかい鬼に変化した九角も、俺がこの手でどつき倒した。
その際の九角の言い分によると、さらにまだラスボスがいるらしい。ま、そうこなくちゃな。言っちゃあ何だが、この程度の敵じゃ物足りない。
修行の成果で、以前よりもずっとずっと強くなった俺としては、もっともっと強い敵と戦いたい。こんなんじゃ全然足りない。自分の血も、他人の血も。
それでも、いったんは平和が戻った感じで、俺たちは修学旅行だの秋祭りだのといった平和な行事を満喫していた。ま、俺はその間にも旧校舎で一人修行に勤しんでいたわけだが。
秋とはいえまだ暑い夜、何となく寝付かれなくて、俺は夜の街に出かけることにした。目指すは歌舞伎町。俺でも知ってる夜の街。
でも、意外と表通りは普通の繁華街だった。俺としてはもっとこう…誰かが絡んでくるのを期待してたんだが。しょうがない、ちょっと裏に回るか。
裏路地をぶらぶらしていると、なにやら怒声が聞こえてきた。基本的に俺の関わらないトラブルなんてもんに興味は無いんだが、退屈しのぎに覗いてみると。
最近はとんと見かけなかった男が中心にいた。
白い長ランをばさりと拡げ、片膝立てて座る姿はどう見たって高校生とは思えない。目の前のおっさんと同類項だ。
裏路地だが、やっぱり俺と同様に声に引かれてきたらしい人だかりが出来ていて、俺はその隙間から覗いてみた。どうやら、花札をしていて、おっさんがイカサマだと難癖付けてるらしい。しかし、村雨は飄々とそれをかわし、さっさと金払えと言っている。正論だが、高校生がそんな主張して通るのだろうか。
だが、俺の心配をよそに、おっさんは結局金を払った。どうも人混みから聞こえる村雨の風評からして、素直に支払った方が良いと判断したらしい。どんな生活を送っているんだ、村雨祇孔。
人混みが散り散りになっていく。それをつまらなそうに見た村雨が、ようやく俺を認めた。ひょいっと片眉が上がる。器用なことだ。
「よぉ、緋勇。久しぶりだな」
全くだ。あれは六月だったか…三ヶ月…いや四ヶ月?
「あんたみてぇなのが、こんな所に何しに来たんだい?」
あー、そーいえば、俺って気弱系優等生だっけ。でも咄嗟には嘘が出ない。
「えっと…何だか眠くなくて、散歩に」
嘘じゃない、うん、嘘じゃない。
何でこんな所まで、と言われるとおしまいだが。
「俺に会いに来てくれたってんなら嬉しいんだがねぇ」
頷いても良かったが…危ない危ない、俺はこいつの行動範囲を知らないはずだ。
「あ…その、えっと、しこう、は」
うげー…何で男を名前で呼ばにゃならんのだ。
「しこうは、この辺に、よく来るのか?」
「あぁ、この街は俺の家みてぇなもんだ」
そこまでか。
嫌な高校生もあったもんだ。つーか、俺の秋月家護衛ってもんのイメージが音を立てて崩れ落ちるわ。そんな閑職なのかよ。
「あんたは、よく来るのかい?」
「いや、初めて。何となく、恐いイメージがあったから」
お上りさんとしては、歌舞伎町ってのは、そりゃもうネオンぎんぎらの半裸のお姉ちゃんうはうはの、ついでに男色家もてんこ盛りってイメージだ。
「けど、しこうがいつもいる所なら、そんなに恐いところでも無いのかな」
見かけはどうあれ、本当に一八歳の高校生には違いないんだ、この男。高校生が入り浸ってて平気なんなら、まあ、思ったよりは優しい場所なんだろう。
村雨は、へぇ、なんて言って、喉を鳴らして笑った。何となく、嫌な笑い方だった。何か仕掛けてくるな、と分かるような笑みというか。
「そういや、あんたには振られたのが最後だったな。これから付き合えよ」
浜離宮に連れて行かれるのなら、下手すれば拉致監禁って可能性もあるが、歌舞伎町じゃ、仕掛けようにも秋月の力は借りられないだろう。
俺は、現在退屈している。
そして、こいつが一体何を狙っているのかが大変気になる。
てことで、我ながら馬鹿だと思いつつ乗ることにした。
「お酒は駄目だぞ?未成年だから」
…って、こいつも未成年だがな。
同じことを考えたらしく肩をすくめる村雨に、もう一つ言っておく。
「賭事も駄目だ。やったこと無いから」
ルールを知れば結構良い線いけるんじゃないかとは思うんだが、いかんせん興味がない。札だの麻雀だのしてるくらいなら、命の遣り取りをする「賭け」の方がよっぽど楽しい。
こう言えば、つまらない優等生そのものだというのに、村雨は俺を誘うのを諦めなかった。どうやら、なにがしかの魂胆があるらしい。そうでなきゃ、こんなつまらん奴誘うわけない。
「ま、とりあえず、俺のヤサに行こうぜ」
いちいち言葉が平均的高校生を離れている男だ。
呆れつつも、村雨曰くの『ヤサ』なるものに連れて行かれる。ご丁寧に、手まで繋がれてる。
「はぐれないようにな」
あぁあ、また、他人からはやくざに引っ張って行かれる優等生だよな。
で、手を掴まれたまま歩いた先には、もう潰れてんじゃないかって感じのアパートがあって。通りすがりに開きっぱなしのドアの中を覗けば、荒れ果てた畳の上に、ワンカップとかが散らばってて、如何にもアホ共の溜まり場って感じだった。
その中の一室に村雨は引っ張って行き、鍵を開けた。うーん、一応、鍵付きの部屋もあるってことは、まだこのアパートは生きてんのかー。
「言っとくが、ここは単に縄張りの一つだぜ?俺の家は別にある」
知ってる。見るからに金のかかってそうな豪華マンションの玄関写真が報告書に添付されてました。
で、中は、そこそこに清潔そうだった。他の部屋は犬の糞でも落ちてても不思議じゃなかったが、ここは人が住んでてもおかしくない程度には綺麗だった。
靴を脱いで、恐る恐る入り…いや、だって畳が腐ってたりしたらどーしよーと…どっかり座った村雨の前に正座した。部屋の中はタバコの匂いが染みついてて、とても長居したい所ではない。
「さて、と。酒も駄目、賭事も駄目…となると、どうしたもんかねぇ」
俺に聞くな、俺に。
あぐらをかいて俺をじろじろ見る村雨から目を逸らす。
「あんたとは、もっとお近づきになりてぇんだが」
何でじゃ。
いや、秋月関係からすると、そのセリフの意味は理解できるが、それは知らないことになってる俺には、もっとちゃんと説明すべきではないのか。
「俺好みの顔してるんでねぇ」
…そう来たか。
確か報告書には、歌舞伎町を根城に玄人のお姉さん方にモテモテ、みたいなのがあったが、訂正の必要があるな。村雨祇孔、両刀、と。
「なぁ、あんた、女と寝たことあるかい?」
「無い」
即答してしまったぞ。自慢じゃないが、女相手に勃つとは思えん。それに、女と寝るより、敵をぶっ殺してる方がよっぽど気持ち良いし。
「惜しいねぇ、可愛い顔してんのに」
はぁ?…うーん、いくらこれが心にもない口説き文句と分かっていても、あまりに事実とかけ離れた話題は駄目だろう。俺を口説くにしても、もうちょっとやりたくなるような言い方をしろよ。
「俺と寝てみねぇかい?なぁに、男同士のセックスなんざ、スポーツみてぇなもんだ。一緒に汗をかこうぜ?」
うわー、そのものずばりか。普通、お近づきになりたいつったその口で、三分後にセックスしようなんて言うか?まだ会ったのが四回目、会話時間総計としてもせいぜい一時間未満ってとこなのに。いや、これこそが『手が早い』ということなのかもしれないが。
呆れてる場合じゃないな。俺の貞操の危機のような気がする。
「せっかくの申し出だが、必要無いんで」
立ち上がろうとしたら、手を引っ張られてバランスを崩した。
げ、と思った一秒後には、俺は村雨の腕にすっぽりと包まれていた。
まさしく「手が早い」。ここまで来ると、感心するより他無い。
で、感心してる間に、顎をすくい上げられたかと思うと、口元にタバコ臭いものが押しつけられていた。
意外と、柔らかい。そして、温かい。うーん、おっさんくさい男の唇でも、こんなもんなんだなぁ。
ふーん、などと感心してると、今度はざらりとした感触が唇を這った。
………待て。これは、まさか…舌か?いきなりディープか?
口の中まで来るのは阻止しようと、唇をしっかりと閉じ、ついでに目を覗かれないように瞼もぎゅっと閉じる。俺が嫌がってるのは分かってるだろうに、舌は遠慮なく俺の唇を這い回り、隙間をこじ開けようとしてくる。
待て、もう息が続かないぞ。
腕を突っ張って村雨の口から逃れ、大きく息を吸い込む。はー、苦しかった。
って、おや?
畳に横向きに倒れたこの姿勢は、何というか…『どうぞお召し上がり下さい』って感じ?
どーしたもんかなー。
俺としては、こんな所で男相手に童貞捨てようが、処女(笑)捨てようが、別にどうでもいい。まあ、正直、興味もある。俺の『何かを殺してる方が気持ち良い』は、あくまで自分の手が比較対象だからな。ひょっとしたら、普通のセックス(いや、男同士って時点で普通ではないが)の方が気持ち良いんなら、俺も更生する道があるかもしれない。
うわ、すでに制服ボタンが外されてる。早いなー、これぞ神速と名付けたいな。
村雨の息が首筋にかかる。うげー、鳥肌立ったぞ、鳥肌。
「…スポーツだから」
「あん?」
「あくまで、スポーツだから。愛情とかじゃないから、キスはパス」
いや、単に目を見られたくないんだがな。それに、正直、唇の感触は気持ち悪かった。
俺の上に乗っかってる男は、ちょっと笑って「いいぜ」と答えた。しかし、単にそれだけの言葉を吐くのに掠れたような響きで耳元に吹きかけるように言いやがる。エロくさいなー。
俺は目を瞑り、ついでに顔も見られないように両腕を交差して顔を覆った。その分、抵抗なんぞ出来ずに、村雨のされるがままに服がちゃっちゃか脱がされる。
「やっぱ、あんた、可愛いな」
くつくつ笑う調子が気に入らない。どうにも馬鹿にされてる感が拭えない。しかしまあ、こいつに好かれてもしょうがないので、放っておくことにする。
げ。
男でも胸に触るのか。女じゃあるまいし、揉むような質量もなければ、乳首も無いんだが…あぁ、いや、乳首はあるにはあるか。小さいのが。
で、その触ってて何が楽しいのか分からないようなもんをぐりぐりと弄られていると、何というかこう…背中がざわざわして、俺は村雨の手を思わず振り払った。
「くすぐったい」
村雨はまた喉で笑って、今度はべろりと舐めてきた。うー、気色悪い…。
俺の乳首をねろねろ舐めつつ、空いた手が下がってくる。脇腹、へそ、それから薄い茂みの中の俺のもんをきゅっと握る。『ぎゅっ』じゃないぞ。『きゅっ』だ。さすがに男同士、絶妙な握り具合だ。
「ふぅん…あんまり反応してねぇなぁ。自分でやったりしねぇのかい?」
正直言っていいか?俺は自分では結構やってる。この場合、反応してないのはお前が下手だからだろう。村雨祇孔、報告書では結構女とやってるから期待したが、あんまり男とはやってないと見た。いや、俺も男とやるのは初めてだから、こいつが下手なのか俺が不感症なのかは知らないが。
それでも、他人の手が俺をさすったり入り口に爪を立てたりしてると、それなりに気持ちは良くなる。しかし、残念ながら、血の匂いに包まれるよりはいまいち反応が…。しょうがないなー。えーと、この間旧校舎でやった奴…人間だか人間のふりしてるだけの魔物だか知らないが見かけは普通のおっさんに見える奴が、ぼろぼろの刀を手にして襲いかかってきたっけ…それをかわして、手首を折ってやったんだ、そしたら情けない悲鳴をあげやがって、うるさいもんだから喉に手刀を叩き込んだら、べこって音がして喉骨が潰れて、ひーひー空気が漏れるような悲鳴にしかならなくなって、そしたら安心して目玉を刳り抜いてやったんだ。で、地面に転げるところを胸郭を思いっきり踏んづけてやったら肋骨がべきべきと音を立てて折れて、肺や肝臓に刺さったのか口からがぼっと血を吐いて…あとは腹に拳を埋めて、中から内臓を引きずり出してやったら、綺麗な綺麗なピンク色だったんで笑えたっけ…。
あ、イきそう。
手が、魔物の腹部に包まれた感触を覚えてる。温かくて、ぬるりとした感触。それを引きずり出すと空気に触れてどんどん冷たくなってくる。自分の手から命の液体が滑り落ちて地面を濡らす。
その瞬間、男の手が俺の濡れた鈴口をぐりっと弄った。
はぁ…ま、誰が相手でも、射精の瞬間は悪くないやね。
しかし、自分でやっても大して変わらないっつーか、あえて他人を引きずり込むほどのもんでもなかったな。
「…次は、あんたの番?」
スポーツって言うからには、お互い汗かいて裸のぶつかり合いだろう。こいつのも握ってイかせてやれば良いんだろうか。そんなスペシャルな技は持ってないが、普通に扱くくらいは俺にも出来る。
が、村雨はニヤリと笑って
「あぁ、今度は俺の番だ」
と言ったのに、俺の上から退かず、俺のに濡れた手を後ろに回してきた。
えーと。
男同士でセックスする時には…あぁ、握りっこだけでは済まずに、俺の尻も使うつもりなのか。はー、男のケツなんぞ、何が楽しいんだろうか。
とりあえず、俺の尻を瞼の裏に思い描いてみる。筋肉は付いてるが脂肪はあんまり付いてない、小さくて全然柔らかくもない尻。女のとは全く違う。いやまあ、考えてみれば、女のにしたって、ケツがでかかろうが柔らかろうが、やる場所さえあればどうでもいいか。尻のでかさと穴のでかさは無関係だろうし。多分。
くぷん。
妙な音を立てて、村雨の指が俺の穴に沈められた。入り口をにゅるにゅると擦っている。粘液をそこに馴染ませてるんだろう、何度か擦った後もっと奥まで入れてきた。
うげー、気色悪ー。
入り口は狭いが、中に入ればある程度の空間があるんだろう、指がごそごそと動いている。何か探るように動いていた指が、前の方の何かに触れた。
…?
勝手に腰が跳ねた。なんだか、射精前のような重苦しさが腰の奥に蟠る。
反応がばれたんだろう、村雨の指が確実にそこ狙いになった。確かめるように撫でたかと思うと指の腹でぐぅっと押される。
うわー…話には聞いていたが、これが前立腺ってやつかー。
感心していると、指が抜かれた。
勿体ない、せっかく自分の手と妄想よりは楽しめそうだと思ったのに…と残念に思っていたら、今度はもっと太いものが中に入ってきた。体勢から推測するに、指が2本。ただ2本ってわけじゃない。拡げたり束ねたりと人のもんだと思って好き勝手しやがる。まあ、これからもっと太いもんが入る予定ということは、確かに入り口を拡げておかないと辛いんだろうなぁとは推測できるので、あんまり文句も言わなかったが。
で、指が俺の前立腺を押さえつつ、片方の指がぐりぐりと俺の入り口を拡げて回り、それなりに解れてきたんだろう、指がずりっと抜かれた。
あー、これから村雨のもんが入って来るんだろうなー、と思って視線をやると、村雨は自分で何度か扱いてそれを臨戦態勢に持っていっていた。うーん、何で男の尻相手に勃つんだろう。それにしても、立派な代物だな。女泣かせってのも頷ける。俺は男なのでどうでもいいが。いやむしろでかいだけ嫌。
で、村雨が俺の足を持ち上げて間に入ってきたので、俺は慌てて身を捻った。
今更抵抗するなって思ったんだろう、気にせず村雨は俺の尻を掴んだが、俺はじたばたと足を蹴った。
「顔は、見られたくないから」
眼鏡はまだかけてるとはいえ、やってる間に外れるかもしれないし、眼鏡越しでも目が見えるかもしれないし。そのくらいなら、俯せの方が遙かにマシだ。
「ま、バックからの方が負担が少ねぇって話もあるしな」
村雨は納得したように、俺の体をころりとひっくり返した。
四つ這いなんて、あんまり楽しい姿勢でもないが、背に腹は代えられない。俺は首も垂れて村雨が入って来るのを待った。
さっき解された入り口に、常温より高いものが押し当てられる。反射的に腰がひけるのを押さえつけるように、村雨の両手が俺の腰の両脇を掴んで、ぐいっと力を込めた。
でーーっ!
これは…うーん、セックスってもんを甘く見てたなー。痛いよ、結構。
指で拡げられてたからいけると思ったんだが…見た目より更にでかいのか、こいつのこれは。あぁ、確かに見た目の茎よりは、かさが張ってる部分は太いわな。
あぁ、もーどーしたもんかなー。ま、どーするもこーするも、村雨は止める気は無いらしく、ぐいぐいと腰を押しつけてくるわけだが。
ずるん。
あ、ちょっと楽になった。
多分、感触的には、一番太い部分が入りきったんだろう。
村雨もちょっと息を吐いて、それからちょっとずつ揺すったり輪を書いたりしながら奥へと進めてくる。やってる方もきついと思うんだが。
村雨が体を動かした。俺の背中に沿うように体を倒してくる。釣られて中のもんもぐりっと動く。いってぇー。
だが、村雨が俺の首筋に歯を立てた瞬間、俺の背中を電流が走り抜けた。脳底から脊髄を通って尾てい骨までびりりと。
そーいや俺って、Mっ気もあるんだっけか。なんか、首筋に歯を立てられて、あーこれでもし噛み切られたら血がどくどく出て死ぬよなーと思ったら、めっちゃ興奮してしまいました。
「ふぅん…ここがイイのかい?」
中のもんがぐりっと動かされる。
違います。
そこが良いんじゃなくて、頸動脈が疼くんです。
ま、言うのもアホくさいから言わんけど。
しかし何だな、Mってことは…想像で補えば良い訳か。この俺の中に収まってるもんは灼熱の剣か槍かで、俺の内臓を焼き尽くしてるんだーとか。
あぁん、ちょっと良いかも〜。
俺の腸も、あの魔物みたいにピンク色で、うっすら血管が走ってて…そこに熱棒が突っ込まれて、きっと真っ赤に腫れ上がってるだろう…ひょっとしたら、激しくされて突き破られたりなんかしてー…。
うわ、結構来るかも。
俺は四つ這いで後ろからがしがし突っ込まれながら、自分の腕を噛んだ。あぁ、血の味…ますます興奮する。自分のあそこがきゅうっとしまって、中のもんを締め付けるのが分かった。
耳元に聞こえる息が早い。野犬にのし掛かられているような錯覚に、ますます俺の背中が粟立つ。
うわーうわーうわー。
自分の手よりは、ちょっとイイかもしんないー。
後ろの男が呻いて、俺の腹の中に熱い液体がぶちまかれた。腹をかっさばかれた時の感触とだぶって、俺も思わず射精していた。
腹の中で液体が逆流する。村雨が緩く腰を動かすと、入り口から溢れて太股を伝って落ちた。
はー、すっきり。
いや、多分皮膚は全然すっきりしてないけど。さっさと帰って風呂に入りてー。ここには風呂なさそうだし、仮にあっても入りたくないような風呂と推測され。
後ろの男が体を離した。
俺はずりずりと這って自分の服を手に取る。
さっさとシャツを着ていると、村雨が大きく息を吐いて、タバコをくわえた。
「余韻ってもんがないねぇ、あんた」
アホくさい。スポーツにそんなもんあるか。
答えずにさっさと着込んで、俺は立ち上がった。尻から濡れる感触があるが、心に蓋をする。願わくば、ズボンにまで染み出しませんように。
「じゃ」
簡潔に別れの挨拶をして、俺は扉に向かった。
「溜まったら、また来な。あんた、結構イイ締め付けしてたから、いつでも相手してやるぜ?」
「それはどうも」
嘲笑じみた声かけに、靴を履きながら様子を窺うと、だるそうにタバコを吹かしながら俺の方を量るように見ていた。甘いな、俺が怒るとでも思ったか?…いや、俺を怒らせても無意味だな。何がしたかったんだろうか、こいつは?
ま、どうでもいい。さっさと帰ろう。
で、帰ってきてさっぱりと風呂に入って、布団に潜り込んでから、俺は今日の出来事を反芻した。
秋月護衛の男が、俺がどんな人間か調べようとしている、というのは理解できる。ついでに言えば、俺に好意を持たれて悪いことは無い。てことは、何気ないふりして接触して、友人になるのが良策だということは推測される。
が。
今日のあれは、全部ぶち壊しだと思うが。
下手すれば、体狙いで近づいた、と判断されても仕方のない行動だ。分からん、そんなことして、あれに何のメリットがある?
まさかとは思うが…テクにかなりの自信があって、俺をメロメロにして、離れられないようにする、あるいはあいつの言うことを聞かざるを得ないようにする、というつもりではないだろうな?
いや、それが下策とは言わない。成功すれば、切り札になり得る。しかしなー、諸刃の剣だし、何より、俺はメロメロになってない。
ま、また次の機会に見極めよう。一体、俺にどういう態度を取るのか。
…ちょっと、楽しい気分だ。
俺は、面白い玩具を見つけた気分で、機嫌良く眠ることにしたのだった。