裏フレグランステイル

29日目

クレイ「・・・ウィルの葉とメーラの葉を調合するのは、
    単に、葉が目に付いたからに他ならない」
 
 いや、言い訳せんでも・・・


リアム「・・・開けて?」
クレイ「仕方がない・・開けるか・・」
リアム「えーと・・・その・・。
    メーラの葉。使ってね」
クレイ「・・・まあ、礼は言う」
リアム「・・・・・・今日も、ここにいて・・いい?」
クレイ「(?・・なにやら、やけに大人しいな)」
リアム「クレイドル。
    僕・・・あなたという存在を、もっとよく知りたくなっちゃった。
    何でも良いから・・・話してくれる?
    貴方ってどういう人間なの?」
      
クレイ「では、生まれ故郷の事でも話すか・・。
    俺の生まれた海辺のクランの街では・・・」
リアム「・・・・・・・。
    それが、貴方の幼い頃の記憶・・・。
    ・・・・・・・。
    貴方には、想い出というものがあるんだね・・・。
    えーとね・・・貴方って、とっても興味深い。
    その・・・メーラの葉、もう少しあげる。使って」
クレイ「あぁ、使うとしよう。・・・礼を言う」
リアム「・・・僕に向かって、礼を言うの?
    −−まあいいけど。僕は、もう少し、ここにいるね・・・。
    貴方にとっても、それが望みでしょう?」
クレイ「・・・・・・まあ・・・違うとは言わんが」
リアム「クレイドル。
    貴方、まだ、僕の話を聞きたい・・・?
    ・・・・・・・・・。
    何を聞きたいの・・・・?」
      
クレイ「なんでもいいが・・・」
リアム「僕の何を知りたいの?
    つくづく・・・・妙な人間・・・・。
    僕に、理解をみせるなんて・・・・。

    クレイドル。
    貴方・・・・僕と話してて、楽しい?」
クレイ「・・・・・・・」
リアム「・・・・・・・」
クレイ「・・・・まあ・・・・」
リアム「貴方に・・・頼んで良い?」
クレイ「俺に、か?
    (珍しいな・・・どうかしたのか?)」
リアム「−−貴方が見ている世界を見てみたいんだ。
    案内してくれる?」
クレイ「・・・まあ、いいだろう。
    (闇にしか、興味がないと思っていたが・・)
    どこを見たい?」
リアム「僕、リルダーナのことなんて知らないから・・・。
    貴方の好きなところへ案内して」
クレイ「俺の好きな・・・・
    では、森にでも行くか。
    好き、というわけではないが、色々と興味深い。
    お前は、気に入らないかもしれんがな」
リアム「どこでもいいから・・・案内して」
クレイ「では、ついてこい」


 森にて。


リアム「・・・・・・」
クレイ「(さっきから、黙り込んでいるな・・・。
     こういう、光に満ちた場所は苦手か?
     倒れでもしたら、面倒だが・・・)」
リアム「クレイドル・・・・・これが、貴方の世界?」
クレイ「俺の、というと、やや語弊があるようだが」
リアム「これが、リルダーナ・・・」
クレイ「(やはり、今日はどこか妙だな・・。
     最近、やけに大人しいと思っていたが・・・
     今日はまた一段と・・・元気が無いのか?   
     なにやら・・・落ち着かないな)」
リアム「この道はどこへ続くの?」
クレイ「あぁ、シーの森だ。
    非科学的な昆虫の一種が住む・・・」
リアム「そう・・・・・
    もう少し、一緒に行ってみようか」
クレイ「まあ・・・かまわんが。
    (大人しくしていると、本当に、可愛いんだが・・・・
     なっ、可愛い、だと!?
     俺は、何を考えている!
     いくら、可愛くて大人しくても、コレは、悪魔だ!)」

 さて、シーの森にて。

クレイ「・・・いたか」
サフィ「あ・・・学生さん。
    こんにちは、いいお日よりですね。
    お散歩ですか?後ろの御方はどなた−−−
    −−−キャアッ!?あ、悪魔ーーっ!?」
クレイ「・・・そのまんまだな。
    コレは、リアム、という・・・
    ・・・逃げたか」
リアム「・・・・今のが、昆虫?」
クレイ「あぁ・・・一般的には『妖精』と呼ばれているらしいが。
    ・・・まあ、あまり気にするな。
    しょせんは昆虫・・・脳味噌が脊髄にあるような連中だ・・・」
リアム「・・・気遣ってくれるの?」
クレイ「ふん・・・。悪魔を見て、悪魔ーっなどと・・・
    まったく、ひねりがないというか・・・」
リアム「・・・そんな顔、しないで。
    僕なら・・・気にしてないから。
    実際、悪魔なんだし・・・」
クレイ「まあ・・・そうではあるんだが・・・
    いや、その、もう少し、ひねったほうが良いというか・・・」
リアム「・・・変なの。
    いいよ、そんな顔しなくたって」
クレイ「(俺は、おかしな顔をしているか?)
    あー・・ここまで来たついでに、俺は、香料を採っていくが・・」
リアム「うん・・・僕は、向こうで待ってるから」
クレイ「(別に、、悪魔なのは、俺は理解している・・・
     今更、昆虫如きに『悪魔』と指摘されたからとて、
     何も動揺する要素はないはずだが・・・)
     っっと。・・・棘を刺したか・・・
     この俺ともあろうものが・・・」

クレイ「待たせたな」
リアム「・・・あれ?」
クレイ「なんだ?」
リアム「指に、血が付いてる・・」
クレイ「あぁ・・・さきほど棘を刺したからな」
リアム「・・・貸して」
クレイ「・・・・・・・・・
    ルーの、守護を、破るつもりか?」
リアム「・・・・・・
    そうじゃないよ・・・・
    今のは・・・そうじゃなくて・・・・
    ただ・・・・・・」
クレイ「いや・・・悪かった。
    そうだな・・・お前は、賢い。
    俺が、ルーの守護を自力で破りたいという気持ちを、
    理解しているはずだからな・・・」
リアム「−−クレイドル。
    そうだね・・・その気持ちは・・・分かるけど。
    でも・・・もう、待てないって気持ちも、僕にはあるよ・・」
クレイ「・・・俺を、信用できないか?」
リアム「そうじゃない・・・そうじゃないけど」
クレイ「では、待て。
    俺は・・・自力で、ルーの守護を破ってみせる。
    それまで・・・待てるな?リアム」
リアム「うん・・・分かった。
    そうしたら・・・その時こそは・・・
    −−戻ろっか。
    貴方の家の近くまで、送るよ」

クレイ「・・・今更、何だが。
    ひょっとして、俺は、
    とんでもないことを口走ったのではないだろうか・・」



 29日目 


裏フレグランステイルに戻る