0日目
クレイ「仕方がない。今の研究は一時中断せねばならんようだから、
フィーレ師に報告しておくか。
あぁ、朝早くからすまない、師よ」
先生 「(いつもながら、態度のでかい学生じゃ)
おはよう、クレイドル。どうしたね、実験が行き詰まったか?」
クレイ「(そんなことを、この俺がするか!)
・・・実は、このような事態になって・・」
先生 「なんとまあ・・・こら、おどろいたのぅ。
天使様に、悪魔殿、とな。
あの御方々がこのリルダーナにやってくるとはのぅ・・。
しかも、ワシの教え子の中でも、最も信仰心の薄い男の
ところにのう・・。長生きはしてみるもんじゃ、うんうん」
クレイ「今、何気なしに批判された気がするが・・」
先生 「いやいや、そんなつもりは。
この神殿は、その昔は天使様どころか我らが創造主ジーア様
もが降臨されたと言われている場所じゃ、と何度も言ったが、
お前は認めようとはせなんだのぅ」
クレイ「・・・だから、何気なしにイヤミを言わないで欲しいものだが・・・
だが、俺は、この仕事をやる気はある。一科学者として、
試料を調合して目的のものを創り出すというのには、
興味があるからな」
先生 「うんうん、それでこそワシの教え子じゃ」
クレイ「とは言うものの、目的のものの成分が、
皆目見当が付かないのだが。何か、心当たりはあるか?」
先生 「古い文献によると、魔力を持つ水薬を、聖水で中和しながら
精霊木と神霊木を加えてゆくんじゃ。
すると、魔の力が聖なる力へ変わる。
今度の場合は『香薬』じゃから・・
聖水に香りの強い精霊木と神霊木を浸して、
香りが移ったところでグラウメリーに足すんじゃ。
ふむ、それなら道具も必要じゃな。
どれ、ちょっと待っていなさい。・・・これじゃ」
クレイ「・・・で、試料と聖水の割合は?」
先生 「ビーカーにつかるくらいかのぅ」
クレイ「抽出時間は?」
先生 「香りが移った頃じゃ」
クレイ「・・・・・・なんて、ザッパーな実験だ
・・・科学者としては、認めがたい・・・」
先生 「それから、これも持って行きなさい。ワシからの贈り物じゃ」
クレイ「本?・・・ではないな。中に何も書いていない。
成る程、これに実験計画、及び経過を書き込め、と」
先生 「いや、あの方々−−フラヒスとアンヌンの高貴な方々から
聞いたことを、きちんと・・」
クレイ「罫線が入っていない・・
まあ、グラフを書き込むには適しているか・・」
先生 「グラフは書かんでええと言うに。
−−さあ、もう、シーの森へ行きなさい。
香料になる精霊木をもらうのじゃよ」
クレイ「・・・妖精・・・あの非科学的な存在からか。不愉快だ」
先生 「(不愉快と言っても、仕方なかろう・・)
さ、何か分からないことがあったら、
いつでも聞きにくると良い」
クレイ「不明な点は、自分で解決するのが主義だが・・・
一応、礼は言う」
さて、シーの森では・・・
ルビィ「来た!あの大天使が言ってたヤツ!」
アンバ「確かに、性格悪そうですよ」
クレイ「・・・誰だ」
ルビィ「アンタね、グラウメリーのビンを開けたのは。
すっごい迷惑なんだから!」
クレイ「これが、妖精か・・・。
四肢及び羽を持っていると言うことは、6対の肢を持っている
訳だから、外見は脊椎動物だが、むしろ昆虫に属すると
見た方が良いようだな」
ルビィ「失礼ね!誰が昆虫よ!」
エメル「こんちは、学生さん!おいら、エメル!」
ルビィ「アンタ、何自己紹介なんかしてんのよ!」
クレイ「・・・まったくだ。俺は、お前達の個体識別をする気はない」
アンバ「・・・そこまで、言いますか」
クレイ「お前達の背後にあるのが、精霊木だな。貰っていくぞ」
アンバ「どれがどれだか、わかっているんですか?」
クレイ「・・・バカにしているのか。
植物学の造詣が深いとまでは言わないが、
この程度の知識はある」
アンバ「・・それでは、どうぞ、御勝手に」
ルビィ「聖水も、ちゃっちゃと持って帰ってちょうだい!!」
クレイドルは、精霊木と聖水を入手した。
いいのか、この先、こんなので・・。