【もののふの眼】
渋江喜久夫:
もののふ…? 何、それ〜? 無理もない、今の日本では死語となってしまったのだから。
「武士」と書いて「もののふ」。その信義と礼節を重んじ、己の信念を貫く美学を、我々現代に生きる日本人は忘れてしまったのかもしれない。
そんな中、私のイメージする「もののふ」を見つけた。その老人がどこの誰かは知らないが、眼だけを描かせてもらったのがこの作品である。
(点描画)
  西谷 史:
この人物が、どこのダレかは問題ではない。むしろこのワンショットがスケッチされたとき、この鋭い眼は何を見つめていたのだろう。敵対するダレかを睨みつけていたのだろうか。あるいは、友人の話を聞きながら、その真偽に思いをめぐらせていたのだろうか。それとも・・・・・・。眼が正面を向いていないが故に、私たちはあらゆるシーンを想像し、しかも「これだ!」と確信することができない。そのじれったさが、見るものの心を揺さぶる。渋江さんの作品の中では、珍しい味を持った作品だ。

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