俺は、そのひじきの煮物を箸で摘んで味見した。 ふっ。 完璧だぜ。 いやあ、我ながら惚れ惚れするような腕前だねぇ。 もともと、俺にとって食事とは『エネルギー補給』でしかなかった。 エネルギーさえありゃあ良いんだから、高蛋白の一品料理しか作ったことがねぇし、足りねぇ野菜だとかは、金出しゃあ店で食えるんだから、それでいいじゃねぇかってなもんだ。 それが、先生が如月んとこに行く理由の一つは、あそこの和食が目当てらしいと気づいてからは、俺ぁ精進したね。 如月に下げたくもねぇ頭を下げ、行きつけの料亭の女将さんに教えを請い・・。 めきめきと腕が上がったのは、そりゃもう愛する先生の顔が見たいがためだ。 先生と来たら言葉じゃ労ってくれねぇが、うまいもん食ってるときは、顔が幸せそうに緩むんだよな。 妙なとこで素直ってーか。 しかも、一口一口味わうように、ちょこちょこと箸を運ぶ姿が、なんだか子供みたいで微笑ましい。 思わず、俺以外の前で、そんな無防備な顔するんじゃねーぞー!と叫びたくなるぜ。 先生は、俺の自信作のひじきを口にして、ちょっとびっくりしたような顔になった。 かすかに目元を赤く染めて、じーっとひじきの器を見つめながら噛み締めている。 「お口に合わなかったかい?」 今回のは、如月風味じゃなく、料亭風味だからなぁ。 先生にゃ、如月風味の方が慣れてるか? しかし、先生はぶんぶんと頭を振って、また一口食べた。 頬がほんのりと紅潮しているところを見ると、旨いと感じてるんだろうが・・。 それにしちゃあ、ずいぶんと口が止まってるようなんだが。 「旨いから、味わってる」 ・・・まあ、先生がそう言うなら、そうなんだろうけどな。 なんかひじきで連想するようなエッチなことってあったっけか? 先生の表情ときたら、顔は紅いわ、目は潤んでるわ、まるでエッチの最中みてぇに色っぺぇんだが。 あぁ、もう、今日も、俺の先生は、最高に可愛いぜ! メシが終わって、俺は洗い物に勤しみながら、ふんふんと鼻歌を歌っていた。 ちなみに、後かたづけは俺がすると決まってしまったようだが、不満はねぇ。 先生の目に、葛藤が浮かぶのが楽しいからだ。 どうやら『後かたづけごとき、貴様で十分だ』という態度でいながらも、実際にゃ『ホントに毎回これでいいのかなぁ』なんて弱気になったりもしてるみてぇで、強気を崩したくはない、でもちょっぴり気が咎める、みたいな戸惑いが目の色に出てて、そりゃもう可愛いったら。 こんなことで、後ろめたい気分になってくれるのは、実に結構な話じゃねぇか。 その分、キッチンでことに及んでも大して文句は言わねぇし、ときどき、先に風呂に入って、俺が来るのを待ってたりするしな。 先生は、自分の意地っ張りで、随分損してんじゃねぇかとも思うんだが。 まあ、俺としてはラッキーだがな。 今日も、俺が後かたづけを終わらせてキッチンから出てくると、先生はちょうど風呂から上がったところだった。 どうせ二人きりなんだから、素裸で出てきても構やしねぇのに、先生はきっちりタオルで身体を隠してやがる。 おまけに、俺の姿を認めた途端、タオルが落ちないように素早く手で持ち替えやがった。 ひでぇなぁ、先生。 毎日見てるもんだし、今晩だって、もうじき拝ませていただくもんじゃねぇか。 何もそこまで隠すこたぁねぇだろうに。 悪戯半分にタオルに指をかけたら、先生に振り払われた上に、尻を蹴っ飛ばされて浴室に追いやられてしまった。 照れ屋さんだからなぁ、先生は。 湯に浸りながら、今日はどんな具合に先生を可愛がってやろうか、と、つらつら考えてるうちに、そういや、通りすがりの店で買った小道具があったっけ、と思い出した。 さすがにありゃあ先生がよっぽど機嫌がいいときか、いっそ酔って抵抗できねぇときに使おうと思ってたんだが、考えてみりゃあ、先生が怒って抵抗するのも可愛いんだよなぁ。 先生は、エッチに関して言やあ、抵抗はするが、本気の本気で嫌がったりはしねぇんだよな。 最後にゃ絶対折れてくれるし、そうと分かれば、それまでの抵抗も楽しめるってもんだ。 あぁ・・可愛いだろうなぁ・・烈火の如く怒り狂って、ぎゃんぎゃん叫ぶのを抱きすくめて色々と触ってるうちに、徐々に力が抜けて俺に身体を委ねながら、目元だけ怒ったままで「村雨の・・ばかぁ」とか呟いて・・さっきまで怒って興奮してた分、いつもより燃えやすくて、泣きながら俺にしがみつくんだよなぁ・・。 最後にゃ「しこぉ・・もう・・だめぇ・・・」とか掠れた声で訴えて、身体からくったりと力が抜けて・・こうなったらバックからしても抵抗できねぇんだよなぁ・・。 ・・・くっくっく・・・。 よし、今日は、その路線だ。 最近甘甘エッチが続いてたからな。 たまにゃあ虐めてやるのも良いだろう。 俺が小道具を手に寝室に入ったときにゃ、先生はパジャマ姿でベッドに横になっていた。 赤い布地に小さな子犬の模様が散らばってるパジャマは女用だが、先生にゃそれでもちょっぴり大きめで。・・いや、そういうのを選んだんだけどよ。 裾からすぐに手が入るのが良いんだよな。 下は、女用だと前開きじゃねぇんだが、下着ごと下ろしちまえば問題なし。 何種類かペアパジャマは買ったんだが、先生は文句を言いつつも、ちゃんと俺とペアになるように選んで着てるんだよ。 もー、可愛いったらありゃしねぇ。 「せ・ん・せ♪プレゼント。いやあ、店で見かけて、これぞ!と思ってねぇ」 先生の手の中に落としたのは、ベージュの箱に赤いリボンがかかった代物で。 包み紙にゃ何も描いてねぇし、中身がなんだか分からねぇだろ。 どうせ興味なさそうに受け取るだろうと思ってたら・・・。 「・・・・ありがと」 ・・・・へ? ちょ、ちょっと待ってくれ、先生よ。 何でこんな時に限って、ぽっなんて顔を赤らめて、嬉しそうに受け取るんだ? ・・・はっ!これ、普通のプレゼントの箱に、限りなく近いか!? 動揺してる俺に、先生は続けて「初めての俺からのプレゼント」などと・・・。 うわ〜!!そーなるか〜〜!? これまで買ってきた家具や実用品は、プレゼントってことにゃならねぇんだな!? 先生的には、これが「初めてのプレゼント」になっちまうんだな!? よりにもよって、これが!? 待った!! ちょっと待った!! さしもの俺も、大事な大事な恋人への『初めてのプレゼント』ってやつは、もうちょい記憶に残って嬉しいものにしてぇぞ!! だいたい、先生、普段は物欲薄いくせに、なんだって今日に限ってそんな嬉しそうに・・! 「ち、ちっと待ってくれ、先生。その・・こりゃ、な、その・・そう!大したモンじゃねぇんだ!」 何とかして、取り返して、別のもんを『初めてのプレゼント』に・・! 「でも、俺のために、買ってきたんだろ?」 「そりゃまあそうなんだけどよ・・・」 「なら良いじゃないか。俺に合うと思って買って来てくれたってとこが嬉しいんだから」 うお〜!更にまずいじゃねぇかっ! いや、確かに、先生に合うだろうなぁってーか、先生に使うことを想像しながら買ったぜ。 しかし、そうも期待されると、ますます気まずいじゃねぇか! しまいにゃ思わず先生を拝んじまったぜ。 「頼むぜ、先生、この通り!これのことは記憶から抹消してくれ!」 たーのーむーぜー! かえって意地になったみてぇで、先生は紙をむしり取ってる。 「先生って!これを最初のプレゼントなんて認識しねぇでくれ!」 こうなったら、もう、実力行使しかねぇか? 先生の背後から飛びかかって、箱を奪い取ろうとしたんだが、先生は身体を丸めて抵抗している。 ま、この格好だと、先生も箱の中身を確認できねぇんだけどな。 そりゃいいんだが・・いつまでもこの状態ってわけにもいかねぇし、何とかして取り返しちまわねぇと。 「頼むから、返してくれって!」 リーチは俺の方が長いんだ。 先生は小柄だし、背後から巻き込んでも、十分胸に手が届く。 ごそごそと先生の腕の隙間を縫って、箱を探してたら。 「うにゃっ!」 突然、先生が、奇声を上げた。 ・・・? 今の・・・何だ?どっか痛かったか? ・・違うな。耳が赤くなってるってことは・・・・・あぁ、なるほど。 この角度で手を入れると、先生の乳首に指先が引っかかるんだな。 先生、胸はからっきし弱いからなぁ。 全然その気が無いときでも、ちょっと乳首を撫でてやっただけでふにゃって力が抜ける。 それをまた、恥ずかしがってイヤイヤするのが可愛い。 先生は、箱と胸をかばって余計に力を入れたが、そういう隙間を狙って強引に手を入れると、指先が触れる突起にゃ、ちっと乱暴なくらいの愛撫しかできねぇ。 ま、それにまた弱いんだから、たまんねぇんだよな、先生は。 いやぁ、なんて甘えたような声を出して、ふるふる震えてる。 ・・・なんかもう、箱のこたぁどうでも良くなってきたぞ。 まるで強姦してるみてぇで、興奮するじゃねぇか。 こうなったら、必死で庇われてる胸は一応置いておいて、本題に入るとするか。 上半身にばかり気を取られてて、すっかり無防備な下半身を剥かせて頂いた。 つるんとして白い肌が露になる。 丸まってるせいで、小さな双丘の間の、うっすらと色づいた場所まで覗き込める。 <黄龍の器>の回復力のおかげかどうか知らねぇが、毎日毎日何度もやってんのに、ここは最初と同じくれぇ綺麗な色してんだよなぁ。 ・・あ、見られてるのに気づいたのか、きゅっと蕾が締まった。 滑らかな肌に歯を立てると、先生がびくっと跳ねた。 ついでに締まったそこに指を這わせる。 いつもなら舐めるか体液を絡めるかして濡らしてやるんだが、今日はちっと虐めたい気分だ。 そのままの指で撫でると先生が「いた・・」と呟いた。 「なぁ、先生。いい加減、観念したらどうだ?」 悪役みてぇなセリフだ。 それでも先生は強情に箱を抱え込むもんだから、ますます虐めたくなって、ちょっと指に力を加えた。 柔らかい粘膜は、乾いた指で簡単に擦れて痛みを生じる。 するってぇと、余計に蕾にゃ力が入って、拒もうとする。 この状態で突っ込めるわけねぇんだが、少し脅しながら指を動かすと、先生が下を向いたまま泣き出しそうな声を漏らした。 ・・・しかし、背中も震えてねぇし・・・泣き真似だな、これは。 先生、エッチの実力じゃ俺に適わねぇのを知ってて、ときどき泣き落としかけるんだよ。 泣かれるとこっちも弱いしな。 だけど、今日のは効かねぇぜ、先生。 指はそのままに、もう片方の手で先生のあれを握り込む。 耳たぶに歯を立てると、先生がふるっと震えた。 う〜ん・・・マジでこのままやっちまいてぇなぁ・・。 「良い子だから、それ、渡しな」 なんて言いながらも、もーどーでもよくなってたり。 むしろ、今返されるより、このままそれを理由にやっちまいてぇ。 さぁて、どうするか。 もう少し手ぇ延ばせばベッドヘッドの引き出しに届くよなぁ。 このまま突っ込みつつ先生が逃げるのに合わせて伸び上がって引き出しからローション取り出すか。 でもって、垂らしながら突っ込めば、何とかなるかもしれねぇ。 ・・いや、何とかする。 「・・龍麻・・」 声に本気が見えたのか、先生が振り返って俺の顔を見た。 怯えたような顔が余計にそそる。 いやあ、楽しいなぁ。 でっきるっかな、でっきるっかな、はてはて、ふっふーん♪てか。 「・・・む・・・」 はい? 「村雨の、ばかーーーっ!!」 ・・・・あ。 「村雨なんか、大っっ嫌いだ!!触んな、もう!!」 うわっ!やべっ!! 先生は手に持ってた箱を俺目掛けて放り投げた。 なだめようと伸ばした腕も叩き落とされる。 目ぇ瞑ったまま、ぶんぶん腕を振り回して、「村雨なんか、嫌い〜!」と繰り返す。 枕も投げられ、近くには何も無くなってから、先生は布団に潜り込んで、ふええええん!と泣き声を上げた。 あ〜・・・虐め過ぎちまったか〜・・。 いやあ、先生が泣く姿も可愛いんだが、口走ってるだけとは思いつつも「嫌い!」とか言われると辛ぇよなぁ・・。 すっかり布団の中に籠もってしまった先生に、謝罪の言葉をかけても、反応がない。 参ったなぁ、こりゃ・・。 無理矢理布団を剥がしてもいいんだが・・なんか、余計怒らせそうだ。 どうしたもんか。 布団の上からでも撫でまくって、その気にさせるとか・・うーん・・しかし冬用布団だしなぁ・・。 やっぱ、素直に謝り倒すしかねぇのか。 北風と太陽の話もあるしな。 ・・・あ。 そういや、先生、結局この箱の中身知らねぇんだよな。 よし。 「・・・あ、そうだ!な、これ、何だったのか、白状するからよ、こっち見てくれよ」 ちっとわざとらしいほどの声を出しつつ、箱を開ける音をさせてやる。 数秒の間の後、布団の塊がもそもそと動き出した。 白い布団の隙間から、赤いパジャマが見える。 かと思うと、するりと布団が滑り落ち、先生が座ってる全体像が現れた。 俯き加減でこっちを見ているが・・・その目元が真っ赤に染まり、瞼が腫れぼったいのを見て、思わず手を伸ばす。 うわ〜、マジで散々泣いたんだなぁ・・。 鼻も赤いし・・あぁ、盛大に鼻をすすり上げちまって・・。 目元に唇を落とすと、先生は抵抗せずに受け止めてくれた。 まだ鼻を鳴らしながら、重そうな瞼を上げて、俺を見る。 「悪かった・・」 今度の謝罪の言葉は、素直に口から飛び出した。 やっぱ、プレイの一環とはいえ、強×はいかんな、強×は。 ちょっぴり反省してる俺に、先生は不機嫌そうな唸り声を上げた。 しょうがねぇなぁ・・。 もっと怒らせそうな気がするんだが、箱、渡すしかねぇか。 覚悟して先生がそれを取り出すのを見守ってたんだが。 それが出てきても、先生は、怒り出さなかった。 てーか、不思議そうにそれをひっくり返している。 ・・・おいおい、18歳の男が、これを一目見て何か分かんねぇかねぇ。 スイッチ入れて、光らせておいて、「ライト?」なんてボケかましてるし。 うーん、スケルトンタイプだからわからねぇのかなぁ。 これで黒いとか褐色の『いかにも色』なら、先生でも分かったのだろうか・・。 あ、バイブのスイッチ入れた。 ・・・それでもまだぼけるか〜。 ぐにぐにするこの動きは、マッサージじゃねぇって気づいてくれよ・・。 そりゃまあ、あんまり怒られるのも、今はまずいたぁ思ってたが、あんまり気づいてくれねぇのも、切ないってーか、虚しいってーか・・。 なんてーか、こう、淫靡な雰囲気がただのスポーツになるってーかよ。 ・・・あ。 ついにマニュアルに手ぇ出した。 先生、最後までマニュアル読まねぇからなぁ。 ・・・・・・・固まってる、固まってる。 さすがに、分かったんだろうなぁ、これが何か。 さー、爆発するか?どう出る? ・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・まだ・・・固まってるな。 頭ん中、真っ白ってやつか? 顔も妙に無表情だし・・・あ、崩れた。 うっわ、なんだ、その今にも消え失せそうな儚い顔はっ! どどどどどどうしたってんだ!? 蒼白な先生の口から・・・ぼそっと・・・。 わ、別れる!? 別れるっつったか!? ちょっと待て〜! こんなもん買ってきたのは、悪かった!! 謝る!いくらでも謝る!! だから、別れる、は、止めてくれ〜〜〜!! 結局。 先生は別れるつもりは全然無いらしく。 その上、なぜだか妙に素直で、愛してるなんて擦り寄ってくるもんだから。 ・・・やってしまった・・・。 いやー、先生、丈夫だからなー。 ついつい、手加減ってやつを忘れちまったぜ。 あ、でも、先生の顔は『苦痛』じゃなかったんだぜ? ・・ま、『快感』でもねぇけど。敢えて言うなら、『驚愕』? でもまあ、俺が一回いく間に4回いったから、勘弁してもらいたい。 いつもなら、もうちょいゆっくりと、先生を徐々に高めつつ・・正直に言えば焦らし気味に・・先生の方が『快感』を欲しがるくらいにしてからラストスパートかけるんだが(そうした方が、先生も素直に快感を味わってるんだよな)、今日は、その〜・・最初っから高みに強引に連れてったってーか。 垂直離陸で一気に天国ご招待。 先生も、身体は『快感』に翻弄され、でも、まだ意識が付いていってねぇって感じで、あんあんとよがりつつも半分呆然としてたな。 ・・・そんなのもたまには良いかもしれねぇって言ったら、先生、怒るかねぇ。 いや〜、それにしても、強×より、やっぱ、和×に限るな!やっぱり!! え?なんだ? その上、これも使っていいのか!? ・・・くくくっどうした、先生。 今日はえらく乗り気じゃねぇか・・・。 はぁ・・・相思相愛ってやつは堪んねぇなぁ・・・。 しみじみ、俺はラッキーな男だぜ!! ・・あ、これからの出来事は、『二人の秘密』ってやつで。 くっ・・・くくくくっ・・・・かーわいーよなぁ・・・俺の先生は・・・。 |