後編
どうやら俺は、かなりの間固まっていたらしい。 ふと気づいたら、村雨が俺の両肩持って揺さぶってた。 「ちょっと待ってくれ!龍麻、俺が悪かったって!土下座でも何でもするから、別れるなんて、言わねぇでくれ!!」 ・・・・・・? 俺・・・なんか口走ったのか? とゆーか、なんでお前、そんな必死な顔してんだ? お前が別れたいんじゃないのか? 「なぁ、龍麻・・・頼むぜ、愛してんだよ」 村雨は、俺をぎゅーって抱きしめて、なんだか気弱な声を漏らす。 ここは、どう返したら良いんだろうか。 いつもなら、「知ってる」って言うんだが・・。 「・・・俺も」 あ、言えた。 「俺も、愛してる」 うわあ、言っちゃったよ、おい。 村雨は、がばぁって音がするくらい思い切り身体を起こして、俺の顔をまじまじと見た。 「・・なら、なんだって、『別れる』なんて言うんだ?」 「別れたいのは、村雨じゃないのか?」 「何で!?」 「だって、これ・・・」 まだうにょんうにょん動いていたモノを目の前に突きつける。 「お前が入れる代わりに、これ入れるってことなんだろう?もう、俺に入れたくないってことなんじゃないのか?」 「そんなわけあるかよ!第一希望は、一緒に入れることに決まってるだろ!!」 ・・・待て。 今・・なんかすっげー恐いこと言わなかったか? 村雨は、俺の両手を握って、じっと見つめた。 この真剣な顔に、俺は結構弱いんだが・・・包まれた俺の手の中で、バイブが光りながらうにうにしてるのが大変間抜けだ。 「なぁ、龍麻。白状するとよ。俺の予定としては、アンタは箱を興味なさそうに『ふーん』とか言いつつ受け取って、中身を見た途端に怒り狂ってぎゃーぎゃーと暴れるのを、押さえつけつつアンタの弱いとこを責めたてて力の抜けたところを見計らって、これで弄ぼうかなーという計画だったんだが・・・」 ・・・・・・・・・。 淡々と言われているが・・・冷静によく聞いていると、むっちゃ鬼畜なこと言われてないか?これ。 「そうしたら、さぞかしアンタは嫌がって、でも快感にゃ弱いから、イヤイヤ言いながらも腰を振る姿は、そりゃもう可愛かろうと・・・」 ・・・いや、だから。 そんなこと言われても、俺にどーしろと言うんだ。 そうですか、じゃあどうぞ、とか言えってか。 ・・・なんかもう。 怒るより、脱力してしまったぞ、俺は。 「まさか、アンタがこんなもんを『初めてのプレゼント』なんて可愛いこと言って笑うなんて思いもしなかったし、まさか、バイブ見て泣き出すたぁ、まったくの予想外で・・」 ・・・だって、初めてのプレゼントには間違いないもん。 まあ、それがこれってのも、村雨らしくていーかもしんない。 「・・・そういや」 なんか・・危険な声音だな。 さっきまで神妙な顔してたくせに、いきなりにやにや笑ってるのはどーしたことだ。 「アンタ、俺に捨てられると思って、あんなに頼りない顔で泣いたのかい?」 ・・・どんな顔だったかなんて、俺、知らないし。 「そうかい、そうかい。アンタ、やっぱり俺のこと愛してんだなぁ」 ・・・・・・・・・。 「前から、そうだって言ってるじゃないか」 信じてなかったのか? そしたら、村雨は、そりゃもう『顔面土砂崩れ』としか言い様のないようなでれでれした顔で、俺にキスしたのだった。 ・・・なんか、計画は狂ったけど、俺も愛してるって伝わったみたいだから、まあいっか。 そう思って、大人しくキスされてたら、村雨の手がするするっと下がった。 ・・・あ。 そういえば、俺、下半身すっぽんぽんだったっけ。 「・・してもいいかい?」 今更。 ・・・・・・まあ・・・でも・・・今日は、『愛してる』を伝える日だし(と勝手に決めた)・・・・・・たまには、素直に言ってやるか。 「・・俺も、したい」 うわあ。 いや、別に、俺、発情してるんじゃなくて、単に、村雨がしたいなら、してもいーかなーってくらいで、その・・・。 じたばたしてると、村雨が、「ハレルヤ」って口走った。 ・・・ケーキのメーカーだったっけ? 何なんだ、いきなり。 考え込んでると、速攻でパジャマの上もむしられ、ベッドに押し倒されてた。 いつもより性急な愛撫にびっくりして身体が動かない。 なんか呆然と事態を見守ってる間に、すっかり本番体勢になっていた。 別に抵抗もしてないのに、両手首を押さえ込まれて、足は村雨の肩に担ぎ上げられて。 「ひゃっ・・・んーっ!んーんー、ん〜〜!!」 悲鳴が上がりかけたのを、村雨の口が塞ぐ。 毎日してるはずなんだけど、その日最初に入れるときだけは、どうにも身体が竦むんだよなぁ。 特に、一番太いとこが入るときがすっごい怖くて。 そこさえ乗り切っちゃえば、まあまあ・・・あ、でも、時々いきなり奥まで力づくで押し込まれるときはちょっと怖いけど。 うー・・今日も結構いきなり奥まで来たなぁ・・。 ようやく村雨が口を離したかと思うと。 「悪ぃ、龍麻。今日、ちっと手加減できねぇかもしれねぇ」 ・・・はい? 脅してるのかと思ったけど、村雨の顔、ホントに切羽詰まってる感じで。 何で、今日に限って?? てーか、いつもは手加減してたのか??あれで?? その疑問は、あっさり解消した。 いつもは手加減してたんだなぁ、と、たった今、身にしみて分かったからだ(泣)。 ・・・本気で死ぬかと思った。 一回しかしてないのに(いや、俺は4回いったけど・・って、くそぅ・・)、ぐてっとなった俺の背中を、村雨が嬉しそうに撫で回してる。 ぼーっとしたまま、目を上げると、視界の端に光るものが見えた。 そーいや、スイッチ入れっぱなしだったっけ・・。 のろのろと手を伸ばして、それを握る。 村雨のより遙かに細いけど・・村雨のが入ったら隙間無いくらいぎちぎちだもん。 絶対、一緒には入らないよなぁ・・。 スイッチを消してどっかに放り投げようとして、考え直した。 一緒に入れるのは無理としても、村雨、これを俺に使いたかったんだよなぁ。 ・・まあ、村雨のより破壊力は大幅に下回りそうだし、正直言って、今、もう一回村雨の相手とか出来ないと思うから、これで我慢してもらえれば、そのほうが俺の身体の負担は少ないんじゃないかと。 「村雨さぁ」 「ん〜?」 「これ・・・使う?」 がばぁ。 また、すごい勢いで村雨が身体を起こした。 「ち、ちょっと待て、龍麻。アンタ、意味分かって言ってるか?」 他にどーゆー意味があるんだ。 「俺が使うってぇのは、俺に入れるんじゃねぇぜ?アンタに入れるんだぜ?」 誰がお前に入れたがっとるか。怖いこと言うな。 「だって、それ用に買ってきたんだろ?だから、いーよ」 「男に二言はねぇからな!?イヤだっつっても、止めてやらねぇからな!?」 ・・・いや、そこまで念を押されると・・・。 そんなに、イヤなことなのか?これって。 悩んでる俺をよそに、村雨は俺の下半身の方に回った。 「龍麻、もうちょい腰上げれるか?」 ・・やだなー・・その嬉々とした声。 ちなみに、腰は上がりません。てーか、下半身、全然身動きとれません。 ・・・誰のせいだ、誰の。 「しょーがねぇなぁ。横向きのままで・・」 全然声は「しょうがない」って感じじゃないんだが。 まあ、そこまで喜んでるなら、俺としても付き合い甲斐がある・・・のかも知れない。 うー・・指が、さっきまで散々突っ込まれたとこを押し開いてる。 なんか熱持ってて、ひりひりする・・。 「さっきので解れてるし、濡れてるからこのままいけるか」 ・・・入れるんなら、黙って入れろ! 解説せんでいい! なんか、冷たくて固いものが押し当てられて。 ずるって感じで、それは入ってきた。 う・・・け、計算外・・・村雨のよりは細いけど・・指よりは太いんだよなぁ(当たり前か)。 なんか・・結構、きつい・・・。 固いのがダメな感じ・・・いかにも『異物』って感触で、内臓をその形に合わせさせられるってゆーか。 いや、まあ、村雨のアレにしても、俺に合わせて曲がってくれるわけじゃないけどさ。 冷たかったのは、ちょっと温まった感じなんだけど、でも異物感がひどい。 俺が気持ち悪さに耐えてるというのに、村雨はそこを覗き込んで、呟いた。 「すっげぇ・・・こんな風に、俺に絡みついてんのか・・・」 ・・・・・・は? ・・・えっと・・・あれ・・・? ひょっとして、あれが透明でしかも中が光るってことは・・・! 「ちょっ・・・ま、まさか、見えてるのか!?」 「おー、ピンクの襞がぎゅって締まって、しかも俺のが糸引いてるぜ。うわ、たまんねぇなぁ、おい」 やーめーれー! じたばた抵抗してんのに、村雨は俺の腰を押さえつけて、まだ呟いてる。 「傷は付いてねぇな。しっかし、充血して痛々しいくれぇだが」 痛々しいなら、もう見るな〜! 「こーすっと、どうなんのかねぇ」 うきゃっ! 握るなぁっ! 「へー」 へーじゃない!何が、へー、だ!いや、全然解説して欲しいわけじゃないが! 「えーと、確かこの辺になると・・・」 ぶつぶつ言いながら、村雨はそれを動かした。 内臓がぐにっと動かされる感触に、思わず息を詰める。 村雨は、それを俺が感じたと勘違いしたのか、バイブのスイッチを入れたらしい。 振動が腹ん中から響いてきて、気持ち悪さに拍車がかかってしまった。 ホントは、前立腺刺激されて気持ちいいんだろうけど・・俺、駄目みたいだ、この感触。 村雨は、伸び上がって俺の顔を覗き込み、少し笑って眉間を弾いた。 「すっげぇ、皺寄ってるぞ」 だって、気持ち悪いんだもん。 黙ったまま、更に皺を深くしてると、村雨がまた俺を握った。 「・・・反応してねぇな。気持ちよくねぇか?」 「どっちかっつーと、気持ち悪い・・・」 ちょっとの間、村雨は俺の顔を窺ってたけど、黙ってスイッチを切って、俺の体内からそれを抜き出した。 ふぅ。ちょっと一息つこう。 横を向いたままの俺のこめかみに、村雨は唇を落とした。 「顔色が悪ぃな。そんなに気持ち悪かったかい?」 だって。 ホントに、気持ち悪かったんだから。 冷たくて固い本物の『異物』が腹ん中を動かすんだぞ? 冷や汗が出そうなくらい気分が悪い感触だぞ、あれは。 どーにかぼそぼそと説明したが、村雨は怪訝そうな顔をした。 「異物ったって・・俺の指やこれもアンタにとっちゃ『異物』だろうに」 そりゃ・・そう言われれば、そうなんだけど・・。 「異物だけど、村雨だもん」 ・・・我ながら、何の説明にもなってないぞ、これ。 だけど、それ以上は俺にも分からないし。 「・・・俺のは、気持ちいい?」 うん。 ・・・・・・はっ! 頷いたのは、ひょっとして、めっちゃまずかったか!? 墓穴か!? ・・・うわー!うわー!村雨の目がまずい感じだ〜! 「ふぅん」 その低い声は、やめろー! 「せっかく、今日は一回で勘弁してやろうと思ってたんだが」 そーしてくれー! 「そこまで誘惑されちゃあ、乗らにゃあ男が廃るってもんだよなぁ」 誘惑なんてしてない〜! 男も廃らない〜! てーか、むしろ、この状態で我慢してくれる男を、俺は尊敬するぞ〜〜! 逃げたいけど・・・身体、動かないんだよ〜! う〜わ〜〜〜!! 生きてる。 あそこまでされて、生きてる俺って、すっげぇ丈夫。 生命体ってスバラシイ。 俺が早朝の爽やかな光の中、人類の肉体の神秘について思いを馳せていると、そりゃもうすっきり爽やかなツラの村雨が、俺の上にのし掛かった。 「なぁ・・・」 ・・・もう出来ません。 「アンタ、夕べは凄かったよなぁ」 ほぉ、アレは夕べの出来事だったのか。 ついさっきの出来事かと思ったよ。 「俺としちゃあ、いつでもあれくらい素直でいてくれりゃあ、嬉しいんだが・・」 そう言ってから、村雨は無精ひげを撫でた。 「・・あ、いや、いつもみたいに意地っ張りなのもいいけどな。さんざん抵抗した挙げ句に落ちてくるのもまた良いんだが」 そーゆーことは、本人がいないところで言って欲しい。 ・・・いや、他人に言って欲しくもないが。 「で、今後の参考のために聞いておきたいんだがよ。何だって、夕べはあんなに素直だったんだい?」 そりゃあ・・・。 ・・・・・・。 説明するの、面倒くさいな。 そもそもは、ひじきが旨くて〜。 同じくらい愛を表現したくて〜。 だから、自分の気持ちを素直に言おうかな〜とか。 ・・・・・・・・・。 ま、いっか。 「ひじきが、旨かったから」 「・・・はい?」 「それだけ」 嘘は言ってない。うん。 一週間後。 「なあ、村雨」 「なんだい?先生」 「一言、言ってもいいか?」 「何だ?」 「・・・・・・お前は、アホか」 ひじきは、相変わらず、旨い。 しかも、毎回微妙に具も替わってる。 それはいいんだが。 さすがに、一週間連続で出てくるのは、どーだろう。 そんなに俺が素直なのは珍しかったのか。 でも、ここまであからさまに期待されたら、かえって反応出来ないじゃないか。 この男は、こんなにアホだっただろうか。 ひじきを噛み締めながら、目の前の懲りない男を睨み付ける俺だった。 |
あとがき えーと、久々の龍麻さん1人称。 ・・何か、龍痲さん入ってるてーか、ボケってゆーか・・。 玩具→泣く、は密かに、かつて朱麗さまからリク受けた「泣く龍麻さん」の ネタの一つでした・・。 さすがに、人様に差し出しのに玩具ネタはねぇだろう、と思って、自主規制。 ・・自分は朱麗さまに『お道具』リクしたけどな(笑)。 |