後編
デパートの一角、買い物や食事を楽しむ沢山の客と同じ屋根の下で。充満した熱気に躯を浸して、二人はこっそり淫靡な遊びに耽った。
しかし、それももうじき終わる。遊びは佳境に入り、龍麻も村雨も絶頂に手が届くところへ差し掛かった。
「ぁ……ン…っ」
「先生………、イク、ぜ?」
「ん……っ!」
繋がった場所が淫らな律動を繰り返し、破裂寸前の風船のように快感が昂まる。二人が二人とも同等の快楽を得られたという証は目の前だ。
(く……る……)
村雨がイキそうなのが分かる。自分も、奥深くに村雨を受け入れたまま心地よい解放を迎えたい。
口内にあった村雨の指が抜き去られ、体内に受け入れているものと同じくらい興奮している龍麻自身に絡んで刺激した。
「ん……は…あ……っ」
噛めるものが無くなって、声が普通に出てしまう。でも、気にしていられない。
思考は狭まり二人を支配するのは本能だ。
「あ……ぁ……あ……っ」
龍麻が激しく悶える。
村雨をきつく締め付ける。
そして、ほぼ同時に…………………というときに。
(……!?)
コツンコツンと音がするのが聞こえた。すぐ近くで鳴っている足音だ。小さい音なのに大きく響き、夢から覚めたように龍麻を緊張させた。
足音は、明らかにこの証明写真機の入り口の前だと分かる場所で止まった。誰か来たのだ。
緊張が大きくなる。危機感で心臓がドクドクと脈打つ。なのに、村雨だけはちっとも気にせず、動きを止める気配がない。どこまで図太いのだろう。
そんな中、今まで微動だにしなかったカーテンが揺れた。外と中を遮断していた重いカーテンが、誰かの手によってゆっくり持ち上げられていった。
+++
??
忙しない呼吸みたいなのが聞こえる………。
な、何、これって………。
+++
龍麻は咄嗟に手を伸ばし、カーテンを掴んで押さえた。すると外から、「すみません」という女性の慌てた声が聞こえた。
(行った……か……?)
燻る熱を持て余しつつ、神経を凝らして様子を伺った。食事目的でこの階までやってきた客達の話し声は変わらず聞こえてくるが、今の女性の気配は遠ざかったようだ。
だが、また別の人間がやってくるかもしれないと思うと、気持ちが落ち着かない。躯も別の意味で落ち着かないので早く終わりたいが、ノッていた気分を中断させられた所為で集中することが出来ない。
が、相手は少々デリカシーに欠けた欲望に忠実な男。「めげる」なんて言葉は辞書に載っていない。少しの動揺も見せず、龍麻の最奥を突き上げた。
「アァアア……っ!」
最高の快感が走り抜けた。躯が悦びでわななき、忘れかけた愉悦が一気に復活して吹き出し、村雨の手をグッショリと濡らした。
村雨も、堪っていた大量の熱を熱い壁に包まれながら弾けさせたのだった。
+++
……………。
……………。
結局…………何がなんだか分からなかったんだけど………。
ちょっとだけ聞こえた荒い息づかいらしきもので、イケナイ想像をしてしまったわ、アタシ………。愛読書みたいな………。
な〜〜んてネ!
読むのは好きだけど、緋勇先輩がホ●なんて嫌よ! 未来の恋人はアタシなんだから! (未定)
あ、やっと二人が出てきた。
………………ん?
ヤクザが緋勇先輩の肩を抱いたりなんかしちゃってる。友達と肩組むような感じじゃなくて、もっとこう…………恋人同士みたいな………。
ち、違うわよね。愛読書の所為で、変な風に深読みしちゃう習性が身に付いてるだけよ。や〜ね、アタシったら。
そんなコトをグルグル考えていると、二人はこっちの方へ歩いてきた。
そして、周囲の人達から不審な目で見られながら柱にかじり付いているアタシの視界で。
ヤクザが。
緋勇先輩のホッペタに、
チュッと
キスをした。
+++
乱れた衣服を元通りにし、身だしなみを整え、自動証明写真機の外へ出た。
傍目にはどこも変わっていないだろうが、情事の余韻を引きずって躯が火照っているので、どことなくそれらしい雰囲気はあるかもしれない。時間が経って落ち着くのを待つしかない。
「さて、続きの運動は俺の部屋でヤるかい?」
な〜〜〜んにも気にしていない村雨は、龍麻の肩を抱き寄せて耳元で誘った。
「ま、まだやる気か!」
「当たり前だろ。一回だけで満足するほど淡泊じゃねェだろうが、俺もあんたも。」
「あんたも」という付け足しに龍麻が赤面する。羞恥のあまり言いたい文句が言葉にならず、口をパクパクと空振りさせた。
村雨はそんな龍麻にニヤリと笑いかけ、頬にキスをした。
+++
う、嘘……。
うそうそうそうそぉおおおおおお!
チュッてしたわよ、チュッてええええ!!
しかも先輩ってば、恥ずかしそうに顔赤くしちゃったりなんかしちゃってるわよ!
こ、これはどう見たって! アタシの愛読書の世界!! 男同士の禁断の世界!!
い、今の今まであの中で何をやって………………………あわわわわ!!
まさか、そんな、まさかっ! 入学当時から憧れてた緋勇先輩が………だったなんてぇぇぇぇ! そんな美味しい……じゃない、そんなショックな話が許されるの!?
人生最大のパニックに陥ってるアタシの傍を、二人が何も気付かないで通った。
と、思ったら。
通り過ぎ様ヤクザがチラリとアタシを見て、ニヤッと笑った。しっかりアタシの目を見て意味深な……というか、全てお見通しだぜ〜〜みたいな感じで………。
も、もしかして。
ずっと、何もかもバレてたとか………?
ひょっとしてアタシってただのバカ?
アタシは立ち尽くして、エレベーターに乗り込む先輩達をボケ〜〜ッと見ていた。
――――――ずっと好きだった人が男とデキていた。
この衝撃から立ち直るには、どうしたら良いんでしょう。
どうやって気持ちの整理をつければ良いんでしょう。
誰か誰かアタシに教えて〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
END
ジーダの謝辞
Believeにて35000を踏んで頂いたものvv
詳しいネタふりは、私の夢ネタを参照して頂くとして(笑)、
『向こうからは見えない聞こえないけど、こっちからは見えるし聞こえる。そんな状況でのエッチ』
と言う、大変難しいリクをばしてしまいました。
要約すると、羞恥攻め?(要約するな)
この女子高生は私なのだろうか、それとも涙樹さまなのだろうか・・とか
謎を残しつつ、めでたく龍麻さんも恥ずかしがって(でも燃えて)くれたようで、
よかった、よかった。
別名『変な場所第2弾』(笑)。(ちなみに第1弾は公衆電話ボックス)
涙樹さま〜!ありがとうございました〜!
変な場所第3弾も考えておきますので、よろしく〜!(笑)