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 周波数特性
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周波数特性グラフを描いてみよう



周波数特性を測ってみる
アンプを作ったらそのアンプの特性を知りたくなるものです。アンプの特性と言ってもいろいろな特性があります。そのなかでまずは最も一般的な周波数特性を測ることにします。
周波数特性を見ればそのアンプの大体の概要がつかめるような気がします。また、いろいろなものも見えてきます。低域や高域の伸び具合で負帰還の量をきめる判断材料にしたり、安くで買った出力トランスの限界を知ったり、改造後の変化を確認したり・・・といろいろな場面で活用できます。
さあ、それでは周波数特性を測るにはどのようにすればいいのか出来る限り分かりやすく説明してみたいと思います。


どのような測定器が必要か
さて、周波数特性を測るには以下の2つの測定器が必要になります。
(1) 低周波発振器:10Hz〜100kHz程度の正弦波(サイン波)が発生できるもの。
(2) ミリボル:100kHz程度までの交流電圧を正確に測定できる電圧計。
この2つが基本です。
低周波発振器から出る信号をアンプの入力に入れて、スピーカ端子に出てくる出力をミリボルで電圧測定します。その電圧変化をグラフに描くわけです。


低周波発振器
この測定器は低周波発振器の他に「オシレーター」や「周波数ジェネレーター」、「シグナルジェネレーター」、「ファンクションジェネレータ」、「CR発振器」などといろいろな呼び方があります。
正確な信号発生器でアンプの基準信号源として使用します。アンプの周波数特性を測るには10Hz〜100kHz程度の正弦波が出ればOKでしょうが、より幅広く計測したいときは5Hz〜1000kHzぐらいまで出力するものがよいでしょう。また、波形も正弦波(サイン波)のほかに矩形波も切り替えて出力するものが一般的です。
出力は600Ωの出力インピーダンスになっていて出力レベルの調節できるつまみや高級品はアッテネータが付いているものもあります。
これは、信号の基準になるものですから出来るだけ歪の少ないものがいいのですが低歪ほど価格も高くなります。周波数特性の計測にはそう神経質にならなくてもいいのですが、歪率測定ではまともに効いてきます。
オークションなどでは10,000円程度で取引されているようです。私の持っているものはLEADER製のLAG-27と言うものでオークションで落札しました。最大1000kHz(1MHz)まで出力します。


ミリボル
ミリボルは交流電圧計です。昔は中に真空管が入っていてバルボルと言っていました。
交流電圧計と言うとテスターやデジタルテスターなどにも交流電圧が測れるレンジがあります。そのようなテスターでも代用になるかと言うとほとんどのものはだめでしょう。と言うのも周波数が高くなってくると普通のデジタルテスタでは正しい値を示さなくなるからです。通常400Hz程度(良くて1000Hz程度)の周波数しか正しい交流電圧値として測る事は出来ません。
それに対してこのミリボルは1000kHz(1MHz)程度の交流電圧を正確に測定します。また、測定レンジがμVから数100Vまで測定できるようになっています。
アンプの測定には欠かせない測定器です。周波数特性の測定でも入力電圧と出力電圧をこれで測定します。
私の持っているのはNational製でVP-3196Aと言うものでアマチュア無線のハムフェアーで3,000円で入手したものです。オークションでは3,000〜10,000円程度で取引されているようです。


周波数特性測定回路

アンプの周波数特性を計測するには上記のように各測定器とアンプを接続します。
低周波発振器からアンプまでの配線は発振器の出力インピーダンスが600Ωの場合は普通の線材をOUT側とGND側をよって使っても特に問題はありませんが100kHz以上の測定までやろうとするとやはり太めのシールド線がいいでしょう。
スピーカー端子にはスピーカーの代わりに8Ω程度のダミー抵抗をつけます。念のためR側L側両方につけておきます。私の場合は8.2Ω20Wのセメント抵抗をつけています。スピーカー端子からミリボル入力へ結線して測定回路は出来上がりです。


さあ!測定です、その前に
さあ、いよいよ測定です。
その前に周波数特性の理屈を少し話しておきます。
入力に一定周波数の一定電圧の信号を加えます。そのときの出力が何Wかをまずは測定し、次に周波数を変えて入力電圧は先ほどと同じ大きさを入力します。そのときの出力が何Wかを測定します。周波数をいろいろ変えて出力の変化を測定しグラフにしたものが周波数特性グラフです。
一般的に1kHzのときの出力を基準として減衰分をdBで表現しています。
500Hzから5kHzぐらいはあまり変化がないので、200Hz以下や7kHz以上を詳しく測定します。

さて、出力のW(電力)測定ですが、ミリボルは電圧を測定するもので電力は測定できません。そこで以下のような計算で電力を算出します。
P(W)=V(V)×V(V)÷R(Ω)

ミリボルで1.5Vを測定したときの電力は
1.5(V)×1.5(V)÷8(Ω)=0.28(W)

となります。ちなみにダミー抵抗8Ωの場合電力と電圧の関係はこうなります。

電力(W)
スピーカー出力
電圧(V)
ミリボルの電圧値
ダミー抵抗
スピーカーの代わり
0.1W 0.89V
0.5W 2V
1W 2.83V
2W 4V


周波数特性をとる

1Wのときの周波数特性を測ってみます。
まず、低周波発振器を1kHzに合わせます。ミリボルの電圧が2.83Vになるように発振器の出力を上げていきます。2.83Vになったら発振器の出力調整用のダイヤルは以後動かしません。発振器が中古品や性能に自信がないものはこの時点の発振器出力をミリボルで読み取り以後時々確認して同じ出力になるようにします。
そのご、発振器の周波数を10Hzにしそのときのスピーカ端子の電圧を記録します。次の周波数にして順に記録していきます。
細かくデータを取れば詳細なグラフが描けますがケースバイケースでデータ点数を決めます。
ひとつの例として私が取るデータ表を示します。

F V P D
周波数(Hz)
低周波発振器
出力電圧(V)
ミリボル読み取り値
電力(W)
計算値
減衰量(dB)
計算値
10 Hz      
20 Hz      
40 Hz      
70 Hz      
100 Hz      
200 Hz      
400 Hz      
700 Hz      
1 kHz      
7 kHz      
10 kHz      
20 kHz      
40 kHz      
70 kHz      
100 kHz      
200 kHz      
P=V×V÷8
D=20×log(測定周波数のV÷1kHzのV)

これは代表的な例で必要に応じて細かくプロットします。特に高域に乱れがあるような場合は高域部分をもっと細かくとればその乱れ状態が良くわかるようになります。


Excelで周波数特性グラフを描いてみます
せっかくデータを取ったのだからグラフにしたいものです。グラフ用紙にプロットして書くのもいいでしょう。この時片対数のグラフ用紙を用意します。
ここでは、表計算ソフトExcel(エクセル)でグラフを書いてみます。



この続きは→ Excelで周波数特性グラフを描く をご覧ください。

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