2003年度秋公演

霧の向こうには、雨の全く降らない、完璧な世界があった。

 

「さ、行くわよ。もう来た道わからないもの」

「あ〜、なんで俺までここに〜」

「うるさい! 男のくせに」

 

「この街には晴れしかない。

お前もわかっているだろう?」

 

「私達は、こんなことで捕まったりしない」

 

「助かったぁ……」

「お前たち、雨の街から来たんだろう?」

 

「あ、サントリー……」

「俺はサントリーじゃない! ボスと呼べ!」

「あ、すいません、ボス!」

 

「あ〜、楽しかった」

「まさか決戦前夜に騒ぐとはね」

 

『侵入者だー!!』

「あとはまかせたぞ!」

 

「いくわよ、凛ちゃん必殺!!」

 

「ここどこ?」

「わからない。でも、こっちでいいんじゃない?」

「そうだ。こっちでいいんだよ」

 

「何か、大切なことを忘れている気がするんだ」

 

「あ、お名前聞いてもよろしいですか?」

「……タクヒ。じゃあ、また」

 

完璧な世界なんてない。

きっと、現実を受け止めて、それを自分で納得できるまでにしたのが、

完璧な世界に近い現実だ。

 

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