JOHN ZORN
♪ジャンル一口メモ♪
ジャズ (アルトサックス+パンク+ジャズ+ロック+ハードコア+高い演奏力+ユダヤの血+究極のDIY精神=ジョン・ゾーン)
ジョン・ゾーン 「ネイキッド・シティ」
※愛聴度:★★★★ ※購入価格:900円 ※中古予想価格:1200円くらい(ユニオンはこうい
うジャンル強いので低価格かと。)
あふりらんぽのレビューでも触れたTZADIKというレーベルを主宰するジョン・ゾーンの代表作と名高い90年
の作品。
HMVのサイトでたまたまセールで安くなってたのも手伝って、彼が手掛けた映画音楽集「フィルム・ワークス」を
試聴
してみたところ、そのエキゾチックな雰囲気にすっかり嵌ってしまい、とりあえず代表作をと手に取ってみたのが始
まりです。
通常、レビューはその人自身の人となりやキャリアに触れることからはじめるべきなのでしょうが、30年もの音楽
家人生を
持つ彼の歴史や足跡を事細かに説明できるほどの知識は残念ながら僕にはないし、彼と共演、共作したり、関わった
人間が
どれくらい偉大かも良く分からないレベルです。知ったようなつもりの文章書くためにウェブで調べるだけでも膨大
な時間がかかる
のは間違いないほどの人物なので、そういう類の話は専門家の方や、精通なさってる方に託すとして、スムーズに内
容に
ついての言及に移ろうかと(苦笑) あ、彼の生き様は参考になること間違いなしなので興味ある方は是非どうぞ。
精神論も含めて。
で、まず目を引くのはそのジャケット。男性の死体と彼を死に至らしめたと思しきリボルバー。ジョン・ゾーンの場合、
各種プロジェクト
作品のアートワークはグロいものも多いです。なぜか学校の図書室にある死体だけをまとめた写真集を怖いもの見た
さで開いた時と、
その後の重い気分をまさか大人になってからも味わうとは・・・といった感じです(苦笑) CDを開けるとこれま
たグロい漫画が。。。
丸尾末広さんという方の書いた絵のようですね。漫画喫茶で興味本位に読んだホラー漫画を思い出します。でも、彼
が音楽に
求めるものだったり、打ち出すイメージとはこういうものなんでしょう。確かにヴァイオレンスを感じる演奏を聴か
せてくれます。
同時にいまだ知られていない日本の文化をもっと世界に発信すべきという姿勢には脱帽です。また話が逸れ気味なの
で(苦笑)
手っ取り早く内容を説明すると、世に言うフリー・ジャズ、アヴァンギャルド・ジャズ、ハードコア・ジャズに当て
はまるのかな。
でも、聴いていただくと分かると思いますが、時に自慰行為とも取れるその手の即興演奏の脈絡のなさは感じないど
ころか、
メロディの骨格はむしろしっかりしてます。しかも全ての楽器がスタンドプレーしているようでいて、不快な触れ幅
を感じないのは
その実、計算し尽くされているという事ですし、それぞれが一人歩きすることなく統率が取れてる恐ろしいクオリ
ティ。ジャズとは
複雑なコード進行や理論が示しているように知性の音楽とも言えますし、演奏するのも曲を書くのも難儀であるのは
想像に
難くないのですが、今作はロック・バンドの形で体現するのが目的だけあって、僕のようなリスナーにも門戸が広
く、馴染み深くも
新鮮であるという強烈なインパクトを与えてくれます。個人的な感想としては中盤の山塚アイ(ヴォアダムス)のス
クリーミング・
シャウトはいらないと思ってしまいますが(これが入ることで、グッとアングラっぽくなってしまう。といっても8
曲4分程で終りますが・・・。)
特に前半と後半のスリリングさ。そしてほぼ全曲にいえる性急で圧倒される急展開。ハードコアからお洒落なバーが
似合いそうな
モダン・ジャズに突如変貌するところなどは聴いていてゾクゾクします。ソリッドなギターサウンド、超技巧ながら
もパワフルなドラム、
時おり絡むニューウェーブにも通じるシンセ・サウンドやオルガン、そしてジョン自身のサックスも含めて、ジェー
ムズ・チャンスや
ノーウェイブ周辺、昨今のポスト・パンク、ポップグループなんかを聴く人には抵抗ないと思います。個人的に阿部
薫で一度は挫折を
思い知ったサックスですがこうやって徐々に耳を慣らしていければなと思います。また超有名なジェームス・ボンド
のテーマや、
バットマンのカバーといった馴染み深いものが入っていたり、小泉首相の大好きな(笑)エンリオモリコーネの曲が
絡んできたり、
その他多種多様なジャンルの音楽が見え隠れします。それもそのはず彼のプロジェクトは多岐に渡っていて、中近東
の音階を
用いたり(僕が買ったフィルム・ワークスはこの色が濃い)、トラディッショナル(この辺りが好きな方は
MASADAをどうぞ。ユダヤ音楽です。)
または中国の音階や日本の純邦楽を思わせる曲、クロード・チアリが弾きそうな曲まであります(笑) なんでも最
近はクラシックの
素材集めに没頭されてるようで・・・。彼の中に根付く「ハードボイルド」、または「エロ・グロ・ナンセンス」と
も取られかねない過激な
感性と、あの教養の固まりとも言えるクラシックがどんな形で融合するのか。物凄く興味が湧きますが、それこそ彼
の創作意欲に
呼応するように湯水の如く作品を発表しているので、とても追いつく事や全ての把握は出来ません(苦笑) 徐々に
造詣を
深めていけたらと思います。ちなみに、彼はユダヤ人で人種の坩堝であるNYで育ったらしく、それがこれだけ多岐
の音楽を
吸収する礎になったとインタビューで語っています。そんな中で日本にも興味を持ったと。この「ネイキッド・シ
ティ」制作時も、NYと
日本を行ったり来たりの生活をしていたようで、スティーヴン・セガールやセイン・カミュのように日本を愛してく
れる外国人が大好きな
お国柄なんですからもっとクローズ・アップされてもいいと思います。といってもご本人は「外人扱い」されるのを
嫌ってるようですが。
あ、でもフジ・ロック03に出演したようで
すね。一度は生で見てみたいです!最後になりますが、余談としてマイク・パットン率いる
「Mr.Bungle」というグループがいまして、1stがとんでもない奇天烈ミクスチャー音楽で僕も気に入っ
て聴いていたのですが、
プロデューサーが何と「ジョン・ゾーン」だと最近知り
ました(笑) 納得過ぎて、すっごい笑いました(笑) 自分の聴く音楽はやっぱり
知らない間にどこかで繋がってるんだ
なぁ・・・と痛感しましたが、未だに狭い檻の中からすら出ていないじゃないかなぁ・・・と
改めて「井の中の蛙大海を知らず」の意味を思い知りまし
た。