「リターン」

バイクを「降りた」とか「止めた」とか思ったことはない。

まして「卒業?」などという言葉で表現するのは最近知った。

まぁ、確かに学校を卒業したときから乗ってはいない。

田舎ではバイクは日常の足だった、中型免許も取れば取れたと思う。

免許取得の費用も、何とかなったかも知れない。

しかし、デカイヤツは安くなかった。バイク自体に手が出なかったのだ。

金を作っている時間も。正直なところなかった。

それで、原付のポンコツに3年間乗った。ごく当たり前のことだ。

「要普通免許」。就職内定の条件だった。

4輪免許も取るつもりはなかったが、是非もない。

なんとか普通免許は取ったが車はしばらく持てなかった。

それでも、なぜかバイクには乗らなかった。

就職のため上京したが、東京近郊は電車が便利だったからかも知れない。

実は15年程前に、スクーターをもらった。

「サリアン」と記憶している。結構マトモだった。

だが結局ほとんど乗らないまま、知人に譲ることになってしまう。

「おお、これは快適だ。ノークラでも結構速いなぁ。」

「こりゃぁ。加速はミッション付きよりイイな。」

登戸から当時住んでいた品川の大井町まで、ご機嫌で運転して帰った、が。

次の朝、社宅の2輪置き場でいきなり不愉快になった。

前日面白かっただけに、「ぬぅおおおおぅ・・」と唸りたいほど頭に来た。

たった一晩で、もうミラーを盗られてしまったのである。

右ミラーは逆ネジが切ってある。純正部品は高価だ。油断も隙もあったものではない。

もらったバイクなのに、年中部品を買っていたりしたらバカバカしい。

盗ったヤツが愉快にバイクを転がしているかと思うと余計腹が立つ。

クダラナイ連中に部品を提供してやるつもりはなかった。

丸ごと盗られる前に譲ってしまった。ミラーを付けてからだ。

前後して自転車を2台盗られるような目にも会ったこともある。

バイクを保管できるような環境がなかったせいもあったのだ。

それきりバイクを持とうと思うことはなかった。

数年後、世の中は空前の好景気、「バイクブーム」に突入していった、らしい。

 

それで今、なんでバイクに興味が出たのか、よく覚えていない。

雑誌か何かで見たのか、読んだのか・・・。キッカケといえる程のことか?

家の近所の交通渋滞に呆れてしまい、4輪で出掛けるのが億劫だった。それくらいか?

ある日、バイク屋の前を通りかかった。中古が並んでいた。

自転車を停めて、バイクを見てみる気持ちがあったということは確かだ。

赤いモンキーがあった。300km走行、新古車同然だ。

気持ちがかなり動いた。コイツなら車庫に置ける。

なにやらミレニアムモデルだというソイツを「商談中」にしてもらい、家に帰った。

とりあえず筋を通そうと思い、カミサンに話した。

「・・・くだらない。」あっさりと言われた・・・。

なんだとぉ、クダラナイだとぉぉ〜。一瞬にして頭に血が上った。悪い性分だ。

うちのカミサンは良く出来た女で、私には過ぎた相方だ。

バイク自体がクダラナイとか言っているのではなかった。

とり立てて強く反対している様子もなかった。軽い受け答えだった。

要は、また私の道楽が始まったことを直感して釘を差しただけだった。のであるが。

例えば「危ない」とか「金がない」とか言われれば、少しは私も考えた。かもしれない。

「くだらない」である。

上等だ。徹底的にやってやる。やれるとこまでヤルぞ。

意地が顔を出した。こうなったら始末に終えない。情けないがそういう人間だ、私は。

翌日、例のバイク屋に電話してモンキーはキャンセルした。

バイクを諦めたのではない、逆だ。

数日考えてスクーターを購入し、同時に教習所に通うことにした。

免許は取れた。

結局、いくらも乗らずにスクーターを下取りしてもらい250ccのヤツを買った。

そのあたりから、何に意地を張っていたのか忘れていた。

というよりも、意地を張った自分がバカバカしくなったのだ。

イイではないか、私には「クダラなくない」のだから。軽くそう思うようになった。

 

バイクと生活を比べた事はない。バイクは生活のほんの一部分だ。

経済的な問題が出たりすれば、家族の衣食住優先が当たり前だ。バイクは乗れなくなる。

生活していられるから、趣味としてバイクに乗れるのだと思う。

ましてカミサンとバイクを比べることなんて、私には意味不明だ。

カミサンも「家族とバイク、どっちが大事・・云々」などと考えたことも、ないはずだ。

ところで。

GW直前からカミサンが体調を崩していた。

結局近くの病院に入院することとなってしまった。そういうことも起こる。

急遽9連休にし、家事と4歳になる息子の面倒に追われることとなった。

昨日からは仕事にも出ている。当たり前のことだ。が、結構疲れる。

今は、バイクには乗れない。それもどうということはない。また乗ればよい。

また乗ればよい。それだけのことだ。

PS

ということで、引き続き「おかあさん」をやっている。参った。

カミサンは偉大だ。