「ゴルゴの家のYAMADAのバイク」

私が僕からオレになった頃、さすがに小学生ではない。
オレは単車に乗ることが出来た。

「ゴルゴ3世」
オレの幼馴染みの一人である。
ゴルゴ13にカブレている。が、かなり無理がある。
オレから言わせるとルパン3世とゴルゴ13の孫と言ったところだ。
それでもお世辞である。

ゴルゴ3世と呼んだことはない。オレがそう思っているだけだ。
呼んだら、きっと怒るぞ。
親友なのだ。


3世の家には立派な車庫があった。
ちゃんと動く、乗ってないバイクがあったのだ。
YAMAHA?HONDA?
90cc〜125cc?2スト?
駄目だ。忘れてしまった。特に古くはなかった。
まぁいい。とにかくクラッチのあるヤツだ。

ソレをオレ達が見逃すハズはない。放っておく手はないのだ。
それでも、3世も自分一人では悪さをする度胸はない。
ある日、共犯者A君を巻き込んで、3人で車庫から引き出した。

桃畑、奥は葡萄園。3世の屋敷の敷地である。
思ったより簡単にエンジンはかかった。
A君が最初だ。彼は初めてではない。いくらかは乗れた。
A君の乗り方を参考にして乗るのだ。A君はその為に共犯にしたのだ。
屋敷を1周して戻ってくる。コケないで走れる程度だ。

オレの番がきた。
またがる。ちゃんと足が着くのはオレだけだ。
スロットルを回す。調子良さそうだ、十分暖まっている。
なんだぁ。親父のと同じだ。暖機を手伝ったことを思い出した。

クラッチを切り1速に入れる。見様見マネだ。
フカシながらクラッチを離すと、とっとととぅ・・・・!
!?
「ハイヨ〜!!」と言ったかどうか知らない。
とにかく突進した。!!!!
桃の木が!!よけた。止まらない〜。BoWAAaaaan〜〜!!

ぶわサッ!?

たまたま積んであったワラの山に突撃した。
崩れたワラの間から頭が出た。コケテはいない、突き刺さっている。
どこも痛くはない。
ノーヘルだ。ソノ程度の幸運には恵まれているようだ。
たい肥の山や肥溜めなんぞでなかったのもよい。

3世とA君が駆け寄って来る。
心配顔が・・・ややあって爆笑に変わった。

ぶっ・わははあぁは・・・・

3世は腹を抱えている。
そんなに笑うなッ!!面白くねぇ野郎どもだ!!

結局はオレも笑って誤魔化した。へッ。


そう言えば、自転車のときは親父の目の前で川に落ちた。
自転車を買ってもらって2日目の事だ。
「乗るから、見ててね!」と言って、そのまま用水にダイブした。
ノーブレーキである。
オレを引っ張り上げた親父は苦笑いしていたっけ。

そのときから、ブレーキレバーとは相性が悪い。


オレ達は、その後もしばらく犯行を重ねた。
3世のお袋さんは知っているようだったが、特に止めはしなかった。
イイ時代だ。

結構乗りまわせるようになった頃。STOPがかかった。
3世の親父が事故を心配したのだ。
心配される程度に走れるようになっていたのかも知れない。
キーを隠されてしまった。
説教もなにもされたわけではない。


3世は神主の孫、跡取りだ。
オレの母親は坊さんの娘だ。
おかしな取り合わせである。

もう10年以上も3世と会っていない。
電話したのはいつだったか?
会話はいつも同じ言葉で始まる。

オレ:「おい、オンナできたか?」
3世:「・・なんか他に話すことないのか、オマエは。」

多分まだ、独りなんだろうナ。