その昔、小室哲哉が"dos"という3人組ユニット(KABA.ちゃんがダンサーとして参加していたグループね)をプロデュースした際、「"TLC"を意識しています」と語っていたことを思い出した。小室哲哉にも影響を与えた"TLC"という女性ユニットは、1992年のデビュー以降、世界の音楽シーンを沸き立たせ、R&Bやラップといったアメリカンミュージックの中枢的ジャンルを先頭立ってリードしてきたグループと言い切ってしまっても間違いはないだろうな。
今回、紹介するのは"TLC"の記念すべきデビューアルバム「Ain't 2 Proud 2 Beg (米国リリースタイトルは"Oooooohhh...On The TLC Tip")」です。"TLC"のオリジナルアルバムとしてはこれまで4作品がリリースされていますが、おいらはどれもお気に入り。だけどその中で敢えて1枚を選ぶとしたらコレかな。セールス的には2ndアルバム「Crazy Sexy Cool」が世界的に受け入れられた結果となったようで、おいらも大好きな作品なのですが、個人的に、アルバム全体としての完成度はこちらの方が上かなと感じています。いや、完成度が高いと云うか・・・ん〜上手く表現できないのですが、まだカリスマ的評価を得る前の、彼女たちの荒削りな感じがこのアルバムに収録されている曲に絶妙にマッチしているような・・・結局、全体的に非常にバランスが取れたアルバム・・・そんな風に思うんです。
"TLC"がデビューした頃のアメリカ音楽業界は、3人組ユニットが氾濫していたそうですが、その中で勝ち残ってきた彼女たちは、やはり他の類似品とは違う"何か輝くモノ"を持っていたのかもしれません。以前このコーナーで紹介した大物ミュージシャン"ベイビーフェイス"をはじめとする多くのアーティストが彼女たちのプロデュースを手がけていたということも、"TLC"のブレイクに大きく寄与したことは多分にありますが、 それだけではない彼女たち自身の才能とか魅力があったに違いありません。
このアルバムを構成する曲のラインナップに話を移します。1stシングルとなった#02"Ain’t 2 Proud 2 Beg"は不動の名作として著名ですが、おいらはむしろ、後発カットされた#05"Hat 2 da Back"や#12"Baby-Baby-Baby"の方がお気に入りです。さらに、シングルカットされていない#03"Shock Dat Monkey"や#14"Depend on Myself"もかなりイケる・・・名作ですねコレらは。さらに全体を通して聞くとまたまた良いんですよ〜貴方はどうでしょうか。
全世界が"TLC"の更なる活躍を期待していたんですが、残念ながら2002年にメンバーのひとり、ラップ担当の"レフトアイ"が交通事故で他界。4枚目のアルバム以降(正確に言うと4thアルバムがリリースされる少し前から)、3人としての活動は事実上休止状態となってしまっています。惜しいなぁ。ただ、最近、新メンバーを加えたという情報(!?)もあり、伝説のユニットの復活が期待されるところでありまする。
Copyright(c)LaFace Records and Arista Records
10. 09, 2006
Eternal 松田 聖子
1991年日本
06年7月に発売され話題となった、デビュー26周年企画モノ「Seiko Matsuda」は、CD74枚組みの"正にこれが究極版"と言うに相応しいコンプリートBOXです。まずその価格が10万円(!!)というのが驚愕ですが、さらに驚かせられたのは、その高値BOXがもの凄く売れたという事実。
おいら、さすがにコレに福沢諭吉を10人投入しようとは思いませんでしたが、このBOX、過去にソニーレコードからリリースされた彼女の全てのアルバムが揃っているだけでなく、デジタルリマスタリングが施され、オリジナルのものと比べ音が遥かに良くなっているというところに随分興味を引かれました。松田聖子作品のリマスターは今回初の試みなのだそうで、特に初期にリリースしたアルバム(「SQUALL」とか「North Wind」とかね)などは初めてクリアな音で聴けるということ。
おいら的に、彼女の過去の作品で、リマスターCDを是非手に入れたいアルバムがいくつかあります。今回はそのうちの1枚、1991年にリリースされた「Eternal」をご紹介します。この作品、1990年のワールドリリースアルバム「Seiko」の制作で渡米した彼女が、その滞在中、実際に耳にし口ずさんだお気に入りの楽曲を自らの歌声で綴った洋楽カヴァーアルバムです。松田聖子としては初の企画だったそう。
唯一のオリジナル曲 #09"Totally In Love With You"を除けば、すべての収録曲が大ヒットを記録した著名作ばかりなので、それだけでアルバムとしての出来が良くなるのは当然のことかも知れませんが、中には"オリジナル曲よりも良い"とさえ感じるものもあったりして、カヴァーでありながら全般的な完成度が高いという印象を受けます。選曲や構成もなかなか良い具合です。#01"Hold On"と#10"Crazy For You"の2曲こそオリジナルの英語歌詞での収録ですが、それ以外は日本語訳詞で歌われているため、メロディに込められたメッセージがダイレクトに伝わってきます。逆に、英語歌詞もオリジナルの作風を損なわせないためか必要以上に削らないよう配慮していたりもします。この辺のバランスが実に巧みで、聞いていて違和感を覚えないんですよね。
アルバムを構成する各曲目ですが、個人的に好きなのは、#04"Eternal Flame"、#07"How Am I Supposed To Live Without You"でしょうか、オリジナルではそれぞれバングルス、マイケル・ボルトンが歌い上げた名曲ですね。あと、#09のオリジナル曲も結構お気に入りだったりします・・・とは言いつつ、このアルバムでは、特に良い曲をピックアップする必要もないのかも。それだけ全体的なパフォーマンスが高い作品なのです。是非、ハイクオリティなサウンドで聴いてみたいなぁ。
Copyright(c)Sony Music Entertainment Inc.
08. 08, 2006
From Me To You YUI
2006年日本
アップル・コンピュータ社の”iPod”の爆発的ヒットも記憶に新しいところですが、ここ数年でポータブル音楽プレイヤーが一気に普及していきましたね。ハードウェアに火がつけば、ソフトウェアがそれに追随するのはごく自然なことのようで、今日では、WEB上から音楽を簡単にダウンロードできるまでになりました。
”新しいものが大好き人間”なおいらですから、このサービスはもう随分前から利用していますが、ここ最近、ダウンロード用楽曲がぐっと充実してきたように感じます。嬉しいのは、レコードやCDで既に廃盤となっている曲でも入手できるものがあるということ。また聴いてみたいな〜と思っていたあの懐かしい曲に再び巡り会えることが大きな利点です。曲によってはデジタル・リマスターにより高音質になってリリースされる場合も有り、これからが本当に楽しみなメディアです。
今回紹介するアーティスト、YUIにおいらが初めて出会ったのも音楽ダウンロードサイトでした。前情報が全く無い中、偶然目に留まった彼女の作品。何の拘りも興味もなく、本当に何気ない気持ちでダウンロードしたその曲は”Feel My Soul(#02)”、そう彼女のデビューシングルだったのでした。後から知ったことでしたが、この曲はCX系ドラマ「不機嫌なジーン」の主題歌として起用されていたらしい(最近、テレビドラマっつ〜ものを観ないから全然分かんないや)。この曲、そもそもノリの良いキャッチーな楽曲ですから、すぐにそのメロディを口ずさみたくなります。ただ、最近のJ-POPSって、結局それだけで終わってしまうものも少なくないです。だけど、この曲の魅力はそれだけじゃなかった。同世代のみならず、幅広い年齢層からも支持される、歌に乗せられたひたむきなメッセージがファンを魅了して止みません。荒削りなのに繊細。エネルギッシュでいてどこか優しい。そんな不思議な魅力をこのアーティスト自身が兼ね備えています。それは、元々、彼女が持って生まれてきたものなのかも知れません。
さて、彼女の1stアルバム「From Me To You」には、そのデビュー曲のほかにも珠玉のナンバーがギッシリ。3rdシングル”Life(#05)”はおいらの大好きな曲ですが、それ以外のシングル曲”Tomorrow's Way(#10)”や”Tokyo(#12)”もそれぞれいい味出してますよね。加えて、ミディアムテンポの雰囲気の良い楽曲”Blue Wind(#06)”、上質な感性で歌い上げた”I Know(#11)”など、そのレベルの高さが際立ちます。まだまだ二十歳前の若さ、彼女のこれからの活躍に期待したいものです。
そういえば、彼女って福岡出身。新宮の海が好きなんだって。新宮海岸に集う六尺褌兄貴や全裸オヤジたちが好きってことは万にひとつも無いだろうが、きっとそういうダークな部分(男たちの花園)が新宮に存在していることすら知らないんだろな〜(そんなの当たり前だろっ!!)。