《卒業茶会》

立春を過ぎると、陽射しが冬とまったく違ってくるね〜。
この前、知り合いがあるお茶の会を卒業するんで、そのお茶会に招かれたんだけど、と〜ってもよかったんだ〜。
場所はビルの5階ってとこなんだけど、意外と静かで、あ〜ゆ〜所もいいね、駅からも近いし。

まずはお膳が出てびっくり! 
簡単な点心だと思ってたんで、お酒まで出てうれし〜。
御飯(通常は一口なんだけど、たっぷり気味なんで、ちょっと残して、と)。
汁(これも1杯だけ)をいただいて、お酒が♪
亭主が選んだ狛江の地酒「桜子」。
女性の杜氏なんだって。この吟醸酒、おいしかったよ〜。

「向付け」は鯛のお刺身。で、もう1杯。
「お椀」は若布豆腐。若布も春が旬だもんね。
黒い椀を開けると、ちょっと黒い若布が散ってる白いお豆腐の上に薄いピンクの桜の形の生麩と鮮やかな青菜。
それに木の芽が吸い口に使われてて、季節を先取りしてた。
さっすが〜。柚子を使ったんじゃ冬みたいだもんね。

懐石料理を少しはしょって、
「八寸」は蒲鉾のうに焼きと菜の花のお浸し。
いかにも春だね〜♪ で、また1杯。
焙じ茶で、さっき残しといた御飯をサラサラ。あ〜おいしかったぁ〜。

次の席は濃茶。亭主は卒業する彼。
道具はその会で今迄いろいろ作った自作の茶碗や花入れ。茶杓も自分で削ったやつなんだって。
その時に一緒に作った思い出が蘇ったね〜。
中にはとってもいいのもあって、素人じゃないみたい。

「定年後は焼き物師になれば?」なんて声も。
「アラ? おみやげにいただけるんじゃないの?」って声には、
「お買い上げいただけるのかな?」な〜んて切り返しもしてたよ。
和気あいあいと楽しい濃茶席だったね〜。

代わって薄茶席の軸は「相見呵々笑」。
「あい見て、かかと笑う」って読むんだって。この席の亭主の好きな言葉なんだそーな。いい言葉だよね〜。
それに、香合が載ってる釜敷は、な〜んかよく見かけるのと違うな〜って思ったら、
今日招かれた人達がその会に在籍してた時の書類で、
みんなの名前が書いてある紙を使って作ったんだって。
素晴らしいアイディア!

花は「常葉まんさく」。
いつまでも緑色なんで、“かわらずにいつまでも”ってメッセージかも。
花入れは春らしく釣り船。ビミョーに揺れるところがいかにもだね。
で、卒業なんで、「出船」に飾ったんだって。
なるほどね〜。

この席の茶杓も、自作なんで、銘がないって聞いたら、
お客から、「旅立ち」はいかが?って。
いい銘だよね。

“今日、こうしてお茶を楽しめるのも、今迄に出逢ったいろんな人のおかげ、
その御縁を大切にしたい”っていう亭主の心入れがあちこちに見えて、と〜ってもいいお茶会だった〜。
おいしく、楽しく、なごやかに 「一期一会」を過ごして、おみやげに紅白のお饅頭をいただいて帰りました。


 

 《旅箪笥》

お茶で使う棚にはいろんな種類があるんだけど、これってけっこう好きなやつ。
なんでも、秀吉が小田原征伐の時に、千利休が持って行って、陣中で使ったってイワクインネンがあるんだって。
昔はTVもビデオもないしね〜。お茶を飲みながら戦略をねったり、策を労したりしてたんだろうね〜。
しかし、あの時代の物が現代まで伝わって、しかもそれを使ってるってのがスゴクナイ?

ちゃんと背負う時にヒモがかけられるような横木もついてて、
材質は桐でできてるから軽いんだよ。
それに、カギが付けられるようになってるんだ。
そこを開けて中の道具をつかってお茶をたてるんだ。
毒とか入れられないように、しっかりガードしてるんだね。考えとるワ〜。

薄茶も濃茶もできるんだけど、
特に面白いのが芝だて。
水指しの上にはめてある薄板をはずして、芝の上に置いて、そこに道具をのせるんだよ。
アウトドアでやるわけだ。青空の下で飲むお茶もおいしいんだ〜。

春4月頃によく使われるけど、他にも秋の紅葉のころにもいいね〜。
なんたって、“旅”ダンスだもの。
それに、“旅立ち”って言葉もあるから、卒業シーズンとかにも使えるね〜。

《扉が閉ってるとこ》真ん中の上にある黒いのが錠。

《扉が開いたところ》2枚ある棚の下の板をはずして、 芝の上に出して使うんだって


 

 《家元と和》

家元の講演会があった。
「お茶を通して世界平和を」って、長いこと世界中を飛び回ってる方なんだけど、
どうしてその情熱が続くのかというお話だった。
そんな事言っちゃちょっとナンだけど、
ホントは眠くならなきゃいいなぐらいに思って行ったんだ。

家元が21.2才の頃、海軍の特攻隊員だったんだって。
そして、明日はもう出撃だっていう友達に、ヤカンで沸かしたお湯でお茶をたてたそうな。
そしたら友達が「おい、千。帰って来たらまたお前のお茶を飲みたいなぁ〜」って言ったんだって。
特攻だもの、帰ってこれないに決まってるのに! 
そしてやっぱり帰って来なかったんだ。

通信してる声(音)が聞こえるんだって。
「目標確認!」みたいな言葉が無線で聞こえて、
その後暫くしてプツッと無線が切れた時がその友達が敵の戦艦につっこんで自爆した時なんだって。

もう今日が最後かもしれないっていう時に、
家元は最後にやっぱりお母さんに一目会いたいって思って、
故郷の方角に向って「おかあさ〜ん、おかあさ〜ん」って叫んだって。
そしたら友達みんなもそれぞれに故郷の方を向いて、口々に「おかあさ〜ん、おかあさ〜ん」って…………。
そうして亡くなった友達の為にも、
自分が平和を訴え続けようって強く思ったんだって。

お茶のキーワードの一番初めにあるのは“和”だものね。
「和・敬・清・寂」ってね?


 

 《音》

よく、西洋じゃ〜食事の時とか音をたてるのはお行儀が悪いって習ったけど、
お茶じゃその音を合図にいろんなことをするんだ。
だから、たてるべき時に音をたてないと、
タイミングが狂っちゃうことがあるんだよ。

今日(9/6)は“中置き”(畳のまん中に茶釜を置くヤツ)
季節が涼しくなったから、お客さまのほうにすこ〜し火が近付くんだ。
「茶通箱」ってお手前を習ったんだけど、
これもけっこう音でタイミングをとるんだよね。

種類の違う濃茶を二服たてるんだけど、
最初の一服をいただいた後、
次のお茶がはいってる茶入れを拭く時に、亭主が袱紗を塵打ちするんだ。
これってけっこう気に入ってるんだぁ〜♪
うまくいった時は、タンッ!ってと〜ってもいい音するんだよ〜♪
で、その音を合図に、客は茶碗を返すんだ。

それから、最後の頃に道具を拝見しはじめるのは、
茶碗を茶筅ですすぐ時にコツンって小さな音がするんだけど、
それを合図に拝見開始! 
そうすると、すべてのタイミングがピッタンコ〜!
合った時はいい気持ち〜! 
( でも、なかなかこれが難しいんだけどね)

その他にもいろんだところでサインになってるんだ。
茶室の外座敷を羽で掃く音で、
客は「あ、御亭主が入って来るな」と察知したり、
懐石料理をいただいて、ごちそうさまのかわりみたいに、
皆いっせいにお箸を落すんだけど
その音で亭主は食事が終わった事を知るってワケ。
だから、もう終わりそうかな?って時は、亭主は部屋の外で気配をうかがってるんだって。

いつかTVの料理番組で、
今は故人になった辻留の辻 嘉一さんが、
「懐石の時は席中の気配を感じて、次のお料理を出しますので、気をつかいます。
だから、私の頭はこんなになりました」って面白く話しながら、光る頭をなでてたのを思い出しちゃった。

 


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