西谷 史:
渋江さんのこの力作を目にして、最初に頭に浮かんだのは、仏典をもとに描かれた「九相図(くそうず)」だった。絶世の美女である小野小町が亡くなり、その亡骸が朽ち果て、骨になり、やがて灰になるまでを描いた絵が有名だ。
私たちは、瓢箪といえば真ん中がくびれた、つやつやした容器としての瓢箪を思い浮かべる。だが、こんなふうに枯れてしぼんでいく瓢箪があっていい。植物は、美しくなるために果実をつけるわけではなく、子孫を増やすために実を結ぶのだろう。
九相図のように、役割を終えた瓢箪が朽ちていくその一瞬をとらえた渋江さんの絵には、生命の普遍性が宿っている。
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