【 N O ! 面 】
渋江 喜久夫:
昔女房が習っていたこともあり、家には能に関する本が何冊かある。それを眺めていると、能面の表情には喜怒哀楽のあるものと無いものの2種類がある様だ。表情の無い顔を能面に例えるが、私もその「中間表情」といわれる一見無表情な面の方が好きだ。その様な「日本の伝統美」に対し、ちょっとしたイタズラをしてしまいました。どうも“小面”なさい。(点描画)
西谷 史:
渋江さんの絵で、一番好きな絵の一つである。この絵は能面の小面(こおもて)に、外国人女性の目をはめこんだものなのだが、どう見ても実在する女性の顔にしか見えない。能面の特徴は目にあり、それ以外の部分は人間の骨格をリアルに再現しているのだということを教えてくれる絵である。 また、そのリアリティーは、この面がシンメトリックではなく、右半面と、左半面がほどよく、微妙に違っていることによって、もたらされているようにも見える。この違いが面の作者によるものなのか、それとも渋江さんの技巧によるものなのかを、想像するのも楽しい。

 

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