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【故・本田宗一郎氏】
渋江喜久夫:
 昔、「東京モーターショー」のホンダコーナーで、車好きな若者達が新車のメカについて討論していた時、通りすがりの“オッサン”が嬉しそうに理路整然と説明してくれ、やがて立ち去った。あまりの詳しさに感心している若者たちに係員が一言、「我が社の会長です!」。その光景が本田宗一郎という人物をよく表している。「日経ビジネス」で使用した作品である。(点描)
西谷 史:
 ぼくの記憶にある本田宗一郎は、世界企業の創始者ではない。はじめて製作した軽自動車が欠陥車と指弾され、ホンダはもうだめだといわれたとき、それを社長車として乗り続け、最後には告発者の尊敬を勝ちえた頑固一徹の技術者だ。頬の深い皺に、あのときの苦しみが刻まれているような気がする。

 

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