《クリスタルきのこ》

渋江喜久夫:
信州育ちの私の特技といえば、春はワラビ採り、秋はキノコ狩りで、亡き母も日頃「この子は勉強はいまひとつですが、キノコ狩りだけは誰にも負けないんですよ」と、私の天才ぶりを保証してくれていた。(なんだか複雑だが・・・)
話かわって、ある時不注意で水をこぼしてしまった。飛び散った水滴が偶然キノコの形に見え、それが面白く、アレンジしてできたのがこの作品である。
キノコに見えれば幸いなのだが・・・。(鉛筆画)

西谷 史:

 渋江さんほど自在に光を操る画家は珍しい。たとえば左側のキノコは、傘にも柄にも均等に光を当てて描かれている。一方右側のキノコは、柄には正面からスポットライトを当て、傘には右後方からスポットライトを当てて陰影を際立たせている。これによって、絵を鑑賞する人の目は自然とキャンパスの中心に向けられる。肖像画ではこの技法は目立たないが、こうして光沢のある対象を描くと、その光の当て方のうまさが際立つのである。

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