【小野
しだれっ栗】
渋江喜久夫:
私の故郷・諏訪からほど近い所に辰野という町があり、そこの小野地区に国の天然記念物「枝垂れ栗」(シダレグリ)の自生地がある。普通の柴栗が、火山活動の影響により突然変異したもので、山一面に大小
1,000本以上の栗の木が群生し、奇観を見せている。言い伝えでは、その昔、栗を採る子供達のために天狗が枝を垂らしてくれたと言われており、一帯は天狗原とも呼ばれている。我々は、親しみを込めて「しだれっ栗」と呼んでいる。(点描画)
  西谷 史:
渋江さんの絵は、面の凹凸を巧みにとらえ対象の本質に迫ることが多い。でもこの絵は、『冬のしだれっ栗』でしか見ることのできない無数の線からなりたっている。複雑に屈曲する線は集まって一本の冬枯れた樹木になり、その枝の端々から生命力をほとばしらせて春を待っている。「ああっ」とため息の出る傑作だ。

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