【片倉館】
渋江喜久夫:
この建物は、大正から昭和初期にシルク王と呼ばれ、絹で財をなした片倉財閥の二代目・片倉兼太郎氏が欧米を視察した際、諸外国の文化福祉施設に感銘を受け、帰国後、諏訪地方の厚生・社交の場として作った温泉リゾートである。 この館に面した旅館で生まれ育った友人H氏のたっての依頼で描いたものだが、生家が近くの私にとっても、共に彼等と遊んだ思い出深い場所である 。館の内部には、大理石造りの千人風呂を有し、現在でも市の観光スポットになっている。(点描画)
西谷 史:
はじめてこの絵を見たとき、夢の中の風景のようだと思った。写真のように精密に描かれているけれど、ふっと見るといくつかの片倉館が重なって、この絵になっているような錯覚を覚える。もし、50年間性能の衰えないフィルムがあって、同じ場所に固定されてずっと片倉館を写しつづけ、50年後に現像したとしたら、このようになるのではないか。それができるのは、名人・渋江さんただ一人だ。

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