【成田屋十八番「暫」故 市川團十郎氏】

渋江喜久夫:
いやはや緊張した。個展出品の件で歌舞伎座の楽屋に伺った。團十郎さんは昼食もとらずに待っていてくれた。今迄の作品を一点一点、穴の開く程丁寧に見てくれた。出品許可が欲しい私は焦っていた。やがてゆっくりと端正な顔を上げ、「私に否やは御座いません!」と言ってくれた。さすが江戸歌舞伎の第一人者。カッコ良すぎる。その後、約一年かけて描いた。感謝感激。「イヨッ!成田屋〜!」(点描)

西谷 史:
渋江さんの絵のディテイルの細かさや、大胆な光の使い方には浮世絵に通じるものがある。日本を代表する絵師である三代目豊国が描いた團十郎とこの絵を比べてみると、役者の魅力を引き出す技法には普遍性があることがよくわかる。もっと渋江さんの役者絵を見たいと思うのは、ぼくだけではあるまい。

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