第3回 グランシャトー(京橋) withともぞう

グランシャトーといえば、「♪京橋はええとこだっせ グランシャトーがおまっせ」で有名なアレである(関西人しかわからんか)。
10月某日、ヒマでヒマで仕方なかったので、前々から京橋探索に行こうといっていたともぞう氏に、「今から京橋行こうや」と無理矢理誘って行くことにした。

午後4時に京橋の駅でともぞう氏と待ち合わせ、前々から行ってみたかったが1人では入る勇気のなかった、麻原彰晃風のオヤジが経営する妖しい古本屋や中古CD屋、危ない雰囲気の漂う裏路地などを堪能した後、午後6時ごろにお目当てのグランシャトーの前に立った。
グランシャトーはパチンコ屋にゲーセン、サウナにカラオケ、中華料理店、グランドキャバレーなど、朝から夜までそのビルの中だけで楽しめる総合レジャービルだ。
しかしそこらのビルとは訳が違う。なんとここのカラオケ屋は単にBGMが流れるだけでなく、生ギターの伴奏もつくのである。
そしてシャト―ビル内のグランドキャバレー「香蘭」は、女の子の平均年齢が優に50歳を超え、75歳の婆さんが現役バリバリで働いているという、そこらの若者向けの軟弱なものでなく、人生の酸いも甘いも知り尽くした大人のためのテーマパーク。
僕のようなケツの青い若造が足を踏み入れることさえ恐れ多い聖域、まさに「大人の遊園地」なのである。
しかしそのような店には金もないしおよそ行ってみたいという気も起こらないので、とりあえず今回はその中の中華料理店、「シャトー飯店」にスポットを当てることにする。

エレベーターで6階に上がると、ちゃちなカウンターなどでなく、いきなり赤じゅうたんで敷き詰められたフロントがある。
行った瞬間自分には場違いな所だと帰りたくなるほど立派な内装だ。
ホテルのフロントマンのような老紳士の案内で席に通されると、チャイナドレスの店員
が注文を取りに来た。
恐る恐るメニュー表に目をやる。
ラーメン300円 餃子300円 焼き飯350円。
意外と良心的な価格設定、というよりめちゃくちゃ安い。
定食でも800円程度だし、王将と同程度、ヘタしたらそれより安い。
僕は天津飯と餃子、ともぞうは焼き飯と餃子を注文した。
味の方は可もなく不可もなくといった感じだが、量は値段の割には明らかに多かった。
注文してから料理が来るまで異様に時間がかかったのは気になったが、それ以外は全く不足はない。
感想としては、「高級感のある王将」という感じで、安いしまた近くに来ることがあったら寄るか、という程度の店だった。
「宝来」にちょっと近いかもしれん。

さて、シャトー飯店を出て、せっかく京橋まで来たのにこのまま帰るのももったいないと思い、近くの立ち飲み屋に入ることにした。
別に酒が飲みたかったわけでも腹が減ってたわけでもなく、単に立ち飲み屋という空間を体験してみたかったのだ。
中はおっちゃん達でひしめきあってて、とても気軽に入れるような雰囲気ではなかったが勇気を出して入ってみた。
ビールと料理を適当にたのみ、それらを味わうというよりはその場にいる人を観察するような感じで店内を見回してみる。
サラリーマン風のおっちゃんもちらほらいるが、大半はどう見てもカタギの職についているようには見えない小汚いおっちゃんばっかりで、明らかに自分達はこの空間で浮いている。
横のおっちゃんは阪神ファンらしく、野村監督の無能さを嘆くような話をしてて、反対側のおっちゃんは黙々と酒と料理を口に運んでいる。
店長らしきおっちゃんは気さくに話しかけてくれるのだが、対応に困るようなダジャレを連発してくるので僕と友人はそのたび引きつった笑みを浮かべていた。
まあでも思ったより普通の店やん、と思った瞬間、いきなり店内に怒鳴り声が響き渡った。
さっきの阪神ファンのおっちゃんが店長にケンカを売りはじめたのである。
普通の店なら店員は客には逆らわないのだろうが、店長も思いっきり言い返す。
隣にいる僕はたまったものではなく、そそくさと店を出た。
でもけっこう飲んで食べて、2人で1800円なら安いだろう。
料理もそんなにまずくなかったし(ともぞう氏は次の日まで腹が痛かったらしいが)。

今回思ったのだが、京橋という土地(まあ今回は妖しい地帯をわざわざ選んで行ったんだけど)は全般的に若者向けではなく、大人、というよりちょっと人生失敗しかかったおっちゃんの集まるところで、なんかみんなその日その日を頑張って生きているような印象を受けた。
そして自分はここで生きていく人にはあまりなりたくないとも思った。
なんか言い方は悪いけど、シャトー飯店で感じた高級感も内からにじみ出るようなものじゃなくて、作り物の、ハリボテのような薄っぺらさを感じたし。
うまく言葉では説明できんけど、退廃的な香りというか、なんか空気がよどんでるような感じがする。
まあ僕の先入観と思いこみのせいなんかもしれんけどさ。
なんか色々ひどいこと書いたような気がするけど、みんな実際に行ってあの雰囲気を肌で感じてください。
きっと僕の言ってることが分かると思うから。


※今回の京橋の写真は近いうちにアップします。

参考文献
コンプレックス哲学2 北野誠・竹内義和著 青心社

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