くー兄ちゃんと鎌治さん
千馗「ねぇ、くー兄ちゃん。くー兄ちゃんと取手さんって、高校の時出会ったんだよね。
どんな出会いだったの?」
九龍「あぁん?出会いっつーか…アレは俺が潜った遺跡の墓守しててなぁ。本業のついでに
解放してやったら恩人扱いでさ。色々と便利だったのよ。遺跡とは別に蝶の迷宮っつって
変わった場所があってな。精神と時の間っつーか、潜っても現実の時間は経たないのに、
手に入れたアイテムはきっちり現実になるっつーすっげ便利な迷宮でよ。
俺、入り浸ってたんだけどな。そん時に、誰連れてくかって考えたとき、アレが一番
使い勝手が良かったんだよ」
千馗「つ、使い勝手って…えーと、まさか、一番強かった、とか便利な能力してたとか、そういう
現実的なチョイスなわけ?」
九龍「いやな、バディん中には裏切り者もいたしな、裏切るってほどでもなくても自分の
大事なものがあったり、好奇心が旺盛すぎて俺の言うこと聞かずに突っ走ったりするような
奴も多くてさ。泊まりがけで命がけの迷宮挑むのに、そーゆーの連れてくの面倒じゃん。
その点、鎌治は俺至上主義だったし、俺が2時間寝るからお前は見張りしてろっつったら幾ら
自分が疲れててもホントに真面目に見張ってるような奴だったんだわ」
千馗「そ…それは本当に…使い勝手…」
九龍「まー、良く言えば、俺が安心して任せて寝られんのがアレだけだったんだけどな。絶対俺の
不利になるようなことはしない、と自信持てるってーか。…まー、裏切られたけどなー」
千馗「え…裏切ったの!?取手さんが!?」
九龍「おー。寝込み襲われた」
千馗「…その、寝込みを襲われたと言いますのは、やっぱり…」
九龍「さすがにちょーっと油断し過ぎたかなー。試しすぎたっつーか。ま、餌ぶら下げたのは
こっちだけど。っつー感じで、俺と鎌治の馴れ初めってーとそんな感じだが。参考になったか?」
千馗「……いえ、全く」
義王「アンタ、アイツと同じ高校だったんだろ?高校の時からやってりゃそりゃ慣れもするだろうよ」
鎌治「え…違うよ。高校は3ヶ月だけ同じだったけど…僕達が付き合い始めたのは、
卒業してからだから…」
義王「ホォ?ってこたァアイツが仕事終わってからも会いに来たってことか?」
鎌治「えーとね…彼が任務終了して出て行ったのが高三の年末だったんだけどね。
最後に別れの挨拶に来てくれた時に、告白したんだ」
義王「ほー。それで約束して別れたっつー…」
鎌治「ううん、思いっきり振られたんだけどね」
義王「…シャベェ」
鎌治「そりゃもう手酷く振られてね…それで、しっかり勉強して音大に合格してから、エジプトまで
会いに行ったんだ。やっぱり振られたけど。それから時間を作っては彼の任地に
飛んでいってね…」
義王「…そりゃストーカーってんじゃねェのか…」
鎌治「4年くらい振られ続けたかなぁ」
義王「長ェな!諦めろよ!」
鎌治「僕、執念深いのには自信があるんだ。…それで、あれは忘れもしない112回目の
プロポーズの夜だった。…ちょっと精気吸って身動き取れなくしてから僕のものに
なって貰ったんだ」
義王「いや、それはなって貰った、じゃなくて強姦した、とか言わねェか?」
鎌治「その時、動画と写真を撮っておいて…世界中に発信されたくなければ僕の恋人になってねって
告白したら、ようやく彼は受け入れてくれたんだ…」
義王「そんなうっとり幸せそうに言われても困る…っつーか恐ェ」
鎌治「そう?…手順はちょっと問題あったかもしれないけど、彼が僕の恋人になったことに
変わりはないし」
義王「いや、問題だらけだろ!何でオレ様がここまでツッコミに困らねェとならねェんだ!」
鎌治「…でもね、本当に、彼が本気で僕を拒んでいたら、今頃僕なんて屍になってるよ…。
はっちゃんは凄く照れ屋さんだからね…こうやって何か強力な理由がないと僕の恋人になる
なんて絶対認めてくれなかった。…良いんだ、きっかけは何であれ。…今、彼が僕の恋人である
ことだけが重要なんだよ」
義王「…イイ話風にまとめんな!やっぱおかしいから!」
義王「千馗…テメェは、テメェの恋人がオレ様であることに感謝しろ」
千馗「はい?何、突然。そりゃ、いつでも感謝してるけど…俺が好きになったの義王で良かったって
いつも思ってるよ?」
義王「オウ。オレ様も、テメェで良かった、としみじみ思った…分かり辛ェ殺伐としたデレとかいらねェ。
素直に表してくれんのが一番だぜ全く…」