「決めた!俺、試してみるよっ!」
思わず立ち上がってそう宣言すると、美里がフフフて楽しそうに笑った。
「ちょっと、ひーちゃん、そんなの駄目だって」
小蒔が俺のこと止めようとする。
「でも、何事も経験でしょう。それに、完璧な愛を求めるなら多少努力しないと」
「葵っ、でも、やばいって」
二人が何やら揉めてる。
でも、もう決めたんだもん。
祇孔以外とエッチなことしてみるって……
早速、相手探そうと俺は小蒔の声を無視して、教室を出た。
廊下に出ると、丁度、醍醐の背中が見えた。
「醍醐っ!」
ターゲット発見!
俺は振り向いた醍醐の胸の中に突進した。
「龍麻、一体、どうした?」
どうしたって言いながらも、俺のこと受け止めてくれた。
うん。やっぱり胸の弾力とか祇孔とちょっと違う。
ペタペタと醍醐の胸を触ると、醍醐は困った顔をした。
「お前は何がしたいんだ?」
「えとね、エッチ!」
率直に言うと、醍醐は茹で蛸みたいに紅くなった。
「たっ、たっ、龍麻っお前は村雨と付き合ってるんだろう」
「うん。だからね、エッチしたいの」
俺の言葉に、醍醐は頭を抱え込んでしまった。
「また、誰かに変な事を吹き込まれたんだな」
醍醐のお説教が始まりそうな予感。
そうだった。こいつは頭が固いし、恋なんてのと縁なさそうだから、こういう奥深い事情は話してもわかってもらえない。
「もう、いいよ。パス!醍醐はパスするもん」
ツンと横向いて、俺は醍醐を押しのけ次へと向かった。
「あっ、おい!龍麻っ!」
無視。無視。
滑りのいい廊下をスキップしながら進むと階段のとこでつんのめった。
「わっ!わわっ!」
階段をダイブすると階下にいた京一が慌てて俺のこと受け止めてくれた。
「ひーちゃんっ!」
「着地成功!」
にっこり笑うと京一は青い顔してた。
「んしょっと」
京一から降りて、俺は早速京一にも言ってみた。
「エッチしよっ!」
「えっ?って、ひーちゃん、お前なぁ、今俺がどんな気持ちだったかわかるか?ひーちゃんが怪我すんじゃねぇかって死ぬ程、怖かったんだぜ」
「しなかったよ。それより、エッチしよう」
「ったく、ひーちゃん、ちょっとは俺の話………今、何て言った?」
おバカな京一は意味がわからないのか、ボケッと俺のこと見つめた。
「だぁかぁらぁ、今、ここで直ぐにエッチなことしてぇ」
京一のおバカな頭に届くように大きな声でゆっくりと言ってやる。
すると、京一の顔が今度は紅く染まった。
おもしろいっ!
キャッキャッて笑ってると、益々、京一の顔が紅くなってく。
「ひーちゃん、お前、俺を揶揄って楽しいか?」
「うん。楽しいよぉ!」
笑顔全開で答えると、京一は項垂れた。
「はいはい、聞いた俺がバカでした」
何だ、京一って自分がおバカだって自覚してたんだ。
今度は尊敬の眼差しで見つめると、京一は俺の髪を撫でた。
「とにかく、階段は気をつけろよ。俺がいつも下にいるとは限らねぇだろ。じゃあな」
とか言って去っていこうとするから、俺は京一の腕を掴んだ。
「何だよ?ん?俺に用でもあんのか?」
「だから、エッチしようって言ったじゃん」
「ひっ、ひーちゃんっ!それマジ?」
大きく頷くと京一はゴクリと唾を飲み込んだ。
「村雨と別れたのか?」
やっぱり、醍醐と同じこと訊く。
もし、美里が男だったら、速攻、エッチしてくれると思うけどな。
「そういうんじゃなくてぇ」
「じゃあ、浮気ってやつ?」
「そうでもなくてぇ」
「はっきりしねぇな。でも、エッチさせてくれるんなら、どっちでもいいか」
どっちでも?どういう意味?
「んじゃ、俺ん家来る?」
「ここでいいよ」
「学校はまずいだろう」
「でもぉ……」
「我慢できねぇのか?」
京一の息が荒い。
どうしちゃったのかな?
首を傾げると、京一は俺のこと急に抱き上げた。
「いいよ。じゃあ、屋上行こうぜ」
「うん。行くっ!」
もの凄い勢いで京一は階段を駆け上った。
それは、イケてるお姉ちゃんを見つけた時のような勢いで……
京一、溜まってるのかな?
等と考えてると、アッという間に屋上についた。
京一はそっと俺のこと横たえると、俺の服を脱がせに掛かる。
「ひーちゃん…マジ、いいんだよな」
興奮気味の掠れた声にちょっとドキッとした。
初めて見た京一の男の顔。
下から見るからか、ちょっとだけ怖くなった。
汗ばんだ手が開いた俺のシャツの間から入ってきて、胸を撫でる。
「ん…あっ…」
なんか、気持ち悪い。
「ひーちゃん…ひーちゃん」
俺の名を呼びながら、京一は俺の唇を狙ってくる。
「あっ!駄目っ…キスは嫌ぁ」
「何だよ。いいじゃん。キスさせろよ」
顔を背けると、京一の唇が容赦なく俺の顔に押し当てられる。
「やだっ!やだっ!」
暴れると、京一は本気で俺のこと押さえ込む。
「今さら、やめるなんて言うなよ」
目がいってる。これって、ひょっとしてやばい?
京一は嫌がる俺にキスしてきた。
唇は祇孔の物なのに……
おまけにグイグイと俺の股間に堅くなった自分のそれを押しつけてくる。
祇孔にされたら気持ちいい行為も、やっぱり京一じゃ駄目だ。
「んっ…京一のバカッ!」
思い切り京一を突き飛ばし、俺は逃げるようにして、屋上を後にした。
京一の声が追い掛けてきたけど、無視して走った。
実証は終わり。
やっぱり、好きな人じゃないと勃たないや。
う〜〜ん、また一歩、究極の愛に近づいたかな?
いや、待てよ。
京一は下手くそだ。だから、駄目だったのかもしれない。
俺は、歩きながら考えて、考えて、誰かにぶつかった。
「いっ…痛いっ」
文句を言おうと思ったら止まってる車だった。
どおりで低いと思った。
ちょっと恥ずかしくなってキョロキョロ見回すけど、誰もいなかった。
「……龍麻、どうしたんだい?」
ホッとしたのも束の間、いつの間に背後を取られたのか、壬生が声を掛けてきた。
「おわっ!お前、いつからそこにいた」
「え…さっきからいたけど…」
ゾワワって背筋が凍った。
こいつ、ストーカーだ。
うん、きっとそうなんだ。
だって、気配も感じなかったもん。
きっと、いつも息を殺して俺の後つけてたりするんだ。
「あ、龍麻、どこへ行くの?」
無視して歩くけど、壬生は何故かついてくる。
立ち止まると壬生も止まる。
また歩き出すと壬生も歩き出す。
振り向くと、壬生はにっこり笑った。
「……壬生、俺に何か用?」
「用っていうか……その…お茶でも一緒にどうだい」
だったら、早くそう言えばいいのに、よくわからない奴だな。
「ケーキもつく?」
「ああ、いいよ。ケーキも食べさせてあげるよ」
「じゃ、行くぅ」
言った途端に壬生の手が腰に回された。
「じゃあ、行こうか」
恋人でもないのに、腰に手を回されるのは嫌かもぉ。
ペチッと手を叩いてどけようとしたけど、壬生は手を離してくれなかった。
「壬生っ!この手は何?」
「醍醐さんや蓬莱寺はよくて、僕は駄目なの?」
さっきのこと言ってるのかな?
え?もしかして……見てた?
何だか怖くなって、俺は壬生から逃げようと暴れた。
だけど、気づいたのが遅くて……
俺は、壬生にハンカチで口を覆われた。
かと思うと、頭がクラッとして、俺はそのまま意識をなくした。
「うん…んっ…」
ほんの少し、身体がだるい。
頭もボーっとしたけど、俺の意識は戻ってきた。
ゆっくりと目を開くと、鏡が見えた。
映ってるのは裸の俺と……
「あっ!壬生ぅ…やだぁ」
「嫌?ここは嫌だって言ってないよ」
「あんっ…あっ…そんなぁ」
びっくりなことに、俺のあそこはビンビンに反り返ってた。
先っちょからは、ヌルヌルの雫が溢れてる。
「ほら、喜んでこんなにカウパーで濡れ濡れだよ」
いやらしい言葉で嬲られて、俺は自分が恥ずかしいのと、情けないのとで涙が出てきた。
「嫌っ!やめてぇ…俺ぇ、違うっ!」
「何が違うの?」
「俺は祇孔にしか感じないもんっ!」
そうだよ。京一で実証済みだもん。
「でも、こんなに感じてるじゃないか」
「ああんっ」
指で大事なとこを弾かれて、ビクンと身体が震えた。
嘘っ…すごく感じてる……
やだっ!俺、身体が祇孔を裏切ってる。
「絶交だぁ…壬生なんか、もう大嫌いっ」
「龍麻……君、村雨さんへの愛を確かめたかったんじゃないのかい?」
そうだよ。
祇孔が言ったもん。
俺はお前にしか勃たないって……
美里に話したら、俺も当然そうだろうって……
でも、試した方がいいかもって美里が提案してくれたから、京一で試して……壬生で勃っちゃった?
「ううっ…俺ぇ、淫乱なのかなぁ?」
「そうかもね。でも、僕はそんな龍麻が好きだよ。でも、村雨さんはどうかな?」
祇孔は……きっと、淫乱な俺は嫌いかもぉ
考えたら、悲しくて悲しくて……
「ねえ、龍麻、きっと僕とならうまくいくよ」
壬生が俺にのし掛かってきて、唇にキスしてきた。
「んっ…んんっ…」
やだっ!祇孔のキスじゃなきゃ、やっぱり嫌っ!
俺は、思うように動かない手を頑張って持ち上げた。
そのまま、壬生を引き離そうと試みる。
でも、難なく押さえ込まれて、更に深くキスされた。
「んっ……んぁ…」
やられちゃう〜〜っ!
このままじゃ駄目ぇ!って思った時、クマのプーさんの着メロが部屋に響き渡った。
祇孔っ!祇孔からの電話だっ!
「嫌〜〜〜っっ!」
俺はありったけの力を込めて、壬生を突き飛ばした。
直ぐにまた手を伸ばしてきた壬生を睨み付け、俺は慌ててベッドから降り、携帯を探した。
携帯に出ようとした直後、壬生に捕らえられた。
「嫌っ!俺に触れたら、許さないっ!」
「龍麻、勘違いしてるよ。無理矢理どうこうなんて思ってない」
嘘だ。壬生は何だか怪しい目つきをしてる。
「そのままじゃ、辛いだろう。気持ちよくしてあげるよ」
俺は首を振った。
「祇孔じゃなきゃ、嫌だもんっ!」
「でも、試してみたかったんだろう?」
ううっ……それは、絶対に祇孔以外に感じないって思ってたから……
なのに、俺はこんなに感じてる?
「龍麻、欲望に忠実になってもいいんだよ」
壬生が優しい微笑みを浮かべ、俺のこと見てる。
壬生は俺が好きだから、抱きたいのかな?
好きって想ってくれてる人だから、俺はこんなに感じさせられた?
「ああっ!でもでも……」
「龍麻…好きだよ…」
「俺は…ごめん…祇孔がいいのぉ」
「じゃあ、忘れさせてあげるよ」
壬生がそんな事言って、俺を抱き寄せた。
抵抗するけど、またベッドに押し倒されてしまう。
今度こそ駄目なの?
でも、せめて、最後まで抵抗しようとするけど、掛かる吐息の熱さにまで、興奮してる自分がいる。
「祇孔っ…祇孔っ…」
何度も名前を呼んでると、不意に部屋の扉が勢い良く開いた。
「龍麻っ!」
この声はっ!
「祇孔っ!助けて〜〜っ!」
呼ぶと祇孔は本当に助けに来てくれた。
「村雨さん……どうして?」
祇孔は答えず、いきなり壬生のこと殴った。
でも、壬生は僅かに身を交わし、祇孔の拳は壬生の頬を掠っただけだった。
直ぐに、祇孔は二度目の攻撃に移る。
俺はと言えば、手も口も出せずに二人がやり合うのを見てた。
「龍麻、僕は君を諦めないよ」
壬生は祇孔に殴られ、よろよろになりながら、服を抱えて出ていった。
「……祇孔ぉ」
助けてくれたものの祇孔はちょっと怒ってるみたいだった。
「龍麻、これはどういうことだ」
「……それより、どうしてここに?」
話題を逸らすと、祇孔は床に転がってた俺の携帯を拾って俺にくれた。
「あ、繋がってたんだ」
だけど、それだけで助けに来てくれるなんて、祇孔て凄いや。
これも愛の成せる技なのかな?
それなのに俺の恥ずかしい部分は祇孔のこと裏切っちゃった。
「で、お前はどうしてこんな所にいるんだ?」
こんな所?ここはどこだろう?
「ここどこぉ?」
「ラブホだ。壬生に騙されてついて来たのか?」
問われて俺は首を振った。
瞬間、祇孔の眉間に皺が寄る。
「何か、ハンカチ口に当てられて気がついたらここだったのぉ」
正直に答えると祇孔は俺のこと抱き締めてくれた。
「龍麻、あんまり心配かけさせるな」
俺は頷いて、祇孔の背中に手を回した。
「んっ…ごめんねぇ。俺、祇孔への愛を確かめたかったのに……」
「また、何か変なことでも吹き込まれたか?」
俺は美里に言われた事と、壬生にされたことを話した。
「で、結果がこれか?」
言って、祇孔は俺のあそこを撫でた。
「あんっ…やぁっ…ごめんねぇ…俺、祇孔じゃなきゃ駄目なはずなのにぃ」
泣きながら訴えると、祇孔は優しくキスして言ってくれた。
「心は裏切ってねぇなら、今回だけは許してやる」
「祇孔ぉ」
モジモジしながら、俺は祇孔に縋りつく。
祇孔が許してくれて嬉しい。
で、ホッとしたら、あそこの熱に意識が戻った。
「しょうがねぇな。本当に淫乱だな。お前は」
「あっ…ごめんなさぁい。龍麻は好きで淫乱になったんじゃないもん。わかんないけど、あそこが疼くのぉ」
祇孔にして欲しくて自分から身体を開く。
「俺以外の男にこんなにされるなんてな」
祇孔の言葉が俺の胸に突き刺さる。
悲しいのに、祇孔に触れてる部分は熱くなってく。
俺は、何度も謝って……
普段はしないような格好で祇孔を満足させるまで、何度も何度も彼に奉仕した。
結局、俺は身体も裏切ってなかったことを知った。
壬生が俺に媚薬を盛ったから、俺の身体が変だったんだって、散々狂うようなセックスされた後に、祇孔に聞かされた。
「怒るなよ。気持ち良かっただろう」
「ううっ…悲しかったもん」
拗ねる俺に祇孔は甘いキスをしてくる。
「んっ…んんっ…」
「龍麻、他で試したりしなくても、俺として気持ちいいなら、それでいいだろう」
でも……それじゃあ、究極の愛にならないんじゃ?
「人がどう言おうと、関係ねぇだろ。それとも、お前の愛はそんな不確かな物なのか?」
祇孔の巧みな言葉に俺は自分が間違ってたと気づく。
「違うよ。俺、祇孔のことすごく愛してるもん」
「俺も愛してるぜ」
祇孔が俺に優しいキスの雨を降らす。
いっぱいキスされて、幸せ気分。
やっぱり祇孔のキスでないと駄目。
こんなに幸せな気持ちにさせてくれるのは祇孔のキスだけ……
でも、ちょっとだけ気になる。
祇孔も本当に、俺にしか勃たないのかな?
でも……祇孔が他の人と試すなんて、考えただけで胸が苦しい。
あっ!もしかして、祇孔もこんなに胸が痛かった?
ちょっと反省して、俺は祇孔のことギュッて抱き締めてあげた。
……もう絶対に祇孔以外の人に触らせないよ……
俺は、祇孔だけのものだから……
終わり
当サイト一周年記念に、春日野夢さまから頂いたブツです!!
残念ながら、エッチは自主規制とのことですが・・・ちっ(笑)。
ちょっぴり京一が可哀想で、龍麻さん罰が当たってんじゃ・・と思わなくもないですが、
何やってんだ、壬生紅葉。
しかし、何ですな。本当に美里(男)なら、究極の総攻めなような気がします・・。
夢さま、素敵なラブイチャSS、ありがとう御座いました〜!