月刊サラブレット 7月号
あの馬主を訪ねよう〜第7弾
零細血統こそおもしろい・・・馬主村雨祇孔氏
こんにちは、競馬ファンの皆さん。
この号が出る頃には、ダービーも終わっている頃でしょう、今年はどの馬が栄冠を勝ち取っていることでしょうか。
本日は、競馬ファンなら一度は耳にしたことがあるという、大馬主、村雨祇孔さんにお話を伺いたいと思います。
記者「こんにちは、いつもお世話になっております」
村雨「はい、こんにちは」
記者「今年のクラシックも『ムラサメタツマ』産駒が活躍してますね」
村雨「あぁ、そうみたいだな。まあ、あいつは芝適応の中距離だから、
母によってはマイルもクラシックもいけるんでね」
記者「その中でも村雨さんの持ち馬は・・・」
村雨「お陰さんで桜花賞と皐月賞は取らせて貰ったぜ」
記者「この分だと、村雨さんの持ち馬だけでクラシック総なめ、
ということになりますか?」
村雨「くくっ、まあ、そううまくは行かないだろうよ。実力では、他馬の
追従を許さねぇとは思ってるがね。何が起こるか分からねぇのが
競馬の醍醐味ってもんだろ?」
記者「頑張って欲しいものですね」
村雨「いや・・あんまり俺がこういうこと言うのも何だけどよ。
他の馬が勝ってくれた方がいいんじゃねぇかと思うんだがねぇ。
色々な血統が延びてこそ、将来的には競馬界も発展するだろう
ってのが俺の持論でね。なんだかんだ言って、俺の牧場は、
プリンスリーギフトとロックフェラとヒムヤー系が主だからな」
記者「丁度よく、村雨さんの持論が出ましたところで、お伺いしたい
のですが、村雨さんはいわゆる零細血統に肩入れされてるん
ですよね?」
村雨「肩入れってぇか・・その方がおもしれぇだろ?」
記者「おもしろい、ですか(笑)」
村雨「俺が最初に馬買った頃にゃ、サンデーサイレンス産駒ばっかり
がクラシックに出ててな。下手すりゃ、出場した半分がSS産駒で
ねぇ。それじゃ如何にもつまんねぇじゃねぇか」
記者「最初に馬を買われた頃と言いますと・・」
村雨「あ、やべ。これオフレコな」
記者「まずいんですか(笑)」
村雨「ま、合法的だけどな。叔父貴の名義で買った馬が
『ドウナイプリンス』だ」
記者「え!?あの、ダートの覇者の!?」
村雨「いや、なかなか活躍してくれたな。あれがあんなに稼いで
くれてなきゃ、俺はこんなことしてねぇよ」
記者「そうだったんですか・・」
村雨「稼がせて貰ったんで、なんか馬に恩返し・・ってぇんでも
ねぇが、俺に何が出来るかって考えた末、日本の先細って
きてる血統や、世界じゃそこそこいるが日本にゃまだ活躍して
ねぇ血統を盛り上げてやろうってぇのが、俺の原点でな」
記者「村雨さんは、肌馬は外国産馬を積極的に輸入されてますよね」
村雨「あぁ・・ま、血ってのは、新しいのを入れてかき混ぜてやらな
きゃな。だが、種牡馬の方は内国産に拘ってんだよ、これでも。
となると必然的に肌馬の方を輸入ってことになるわな」
記者「それも、輸入する肌馬は、実績のない若い馬を輸入されて
ますよね?」
村雨「あぁ。どうせなら若い方がいいじゃねぇか。実績があったって、
残り2,3年しか繁殖できねぇようじゃ、無駄金ってもんだろ?
どうせ、種付けだってギャンブルだ。なら、何もデータがねぇ方が
おもしれぇじゃねぇか」
記者「また、おもしろい、ですか」
村雨「ん?おもしれぇってだけで馬主をやるなってか(笑)?
どうせ綿密なデータに基づいて掛け合わせたって、凡馬が出る
確率の方が高ぇんだ。なら、何も考えずにちゃっちゃと種付けた
って同じだろ?」
記者「では、村雨さんは、適当に掛け合わせている、と?」
村雨「ん〜・・そうだねぇ・・出来るだけアウトブリードってぇのは
あるな。身体が強くてなんぼだろ?無事是名馬ってやつだ。
あと、ちょい前までは、ムラサメタツマを新しい血統にするって
夢があったからねぇ。なるたけ相性がいいって言われてる
血統を増やしてきたつもりだが・・最近は、また、ちっと
ムラサメタツマが伸び過ぎじゃねぇかと思ってんだ」
記者「バランスよく、ですか」
村雨「そういうこった」
記者「さて、よろしければ、プライベートなことをお伺いしたいんです
が・・・」
村雨「プライベート?3サイズってか?・・くくっ、冗談だ」
記者「村雨さんは、馬主としても成功、また、最近、ご自分の設立
された民間サルベージ会社が、日本近海で金塊を引き上げる
のに成功され、お金は呻るほどお持ちなんですが・・・」
村雨「あぁ・・あれか。ま、ありゃあちょっとした手慰みだ。
ギャンブルの一種にゃ違いねぇしな。どっちかってぇと、政府関係
と所有権を争う駆け引きの方を楽しませて貰ってるぜ」
記者「そうなると、女性は選り取りみどりな訳ですが・・」
村雨「ん?あぁ、そういうプライベートか。・・ん〜あんまりおもしれぇ
ネタはねぇな、すまねぇが」
記者「結婚はされてないんですよね?」
村雨「ギャンブル好きの旦那なんて、持つもんじゃねぇだろ?
そうは思わないかい?」
記者「え?わ、私なら、ギャンブル好きでも、それで成功する人
なら・・」
村雨「ギャンブルで、今度は素寒貧になる可能性もあるんだぜ
(笑)?」
記者「そ、それは・・・はっ、誤魔化さないでください。それでは、
村雨さんは、現在フリー、ということですか?」
村雨「・・そう言い切っちまうと、何かとややこしいことになりそうだな。
・・・これだけ教えてやるよ。英国のアスコット競馬場。ありゃあ、
上流階級の社交の場でもあるから、普通はファーストレディ同行
で行くもんでな。俺ぁ、クイーンズサーフ(編注:村雨氏の持ち
馬。英ダービー・KJ&QE杯制覇)が英ダービーに出たときに、
馬主として行ったんだが・・・同行したのが男だったんでな。
ちっとばかし視線が痛かったぜ(笑)。ま、そんとき行った奴は、
そういう事情を知らねぇもんだから、何で自分が衆目を集めて
んのか分かってなかったがな」
記者「え、えっと・・・その、つまり、ひょっとして村雨さんは・・・」
村雨「あ、同性愛者だっつってんじゃねぇぜ?」
記者「はは・・・そ、そうですよね、失礼を・・・」
村雨「両刀だ」
記者「・・・・・・・・」
記者「さて、それでは、そろそろお時間ですが、村雨さんの今後の
抱負など、お聞かせ願えますか?」
村雨「抱負、ねぇ・・・最近、野望が出来てね」
記者「野望?それは、是非・・・」
村雨「白馬でクラシック制覇。種牡馬になるってぇんだ」
記者「白馬で!?芦毛じゃなく?」
村雨「芦毛でクラシック、なんて、叶うじゃねぇか。滅多に産まれねぇ
白馬、それでかつ活躍するのを産ませられねぇか、と思って、
最近、芦毛を集めだしたんだ。・・・ま、数十年はかかるだろう
がな。
ちっと想像してみろよ。白馬、なんて、競馬場でお目にかかる
ことすら難しい馬だろ?それがクラシックを制覇して、種牡馬に
なって・・数年後にゃ、その仔の白馬たちが活躍し出すんだ。
・・どうだい、壮大なロマンだろ?」
記者「それは、実現したなら凄い夢ですね!」
村雨「あぁ・・・だが、実現してこその夢だ。まぁ、見てなって」
大馬主村雨祇孔氏。
自分の競馬理論を「おもしろい」の一言で片づけてしまう彼ですが、本当は、競馬界の未来を憂い、新しい風を吹き込もうとする挑戦者でもあり、求道者でもあります。
今年も、来年も、そのまた次の年も、彼の馬たちは活躍し続けることでしょう。
さて、次号は、やはり大馬主ですが、村雨氏とは違い、一つの血統に拘り続けた方が登場します。
それでは、来月もお楽しみに!