何か、突発的に書いてみたくなった「愛らしいもの」 主人公:蒼晶智勇でお送りいたします。 名前・・いや、龍麻さんと区別しようと思って。 いつも馬ゲーで馬主につける「蒼晶千由」の男版。 読み方は「そうしょうちゆ」・・・創傷治癒。ま、職業柄・・(笑) 村雨祇孔は、歌舞伎町裏通りにて、イベントに参加していた。 「パンツ男が蓬莱寺京一、そっちのでかいのが醍醐雄矢、姐さん方が・・」 言いつつ、何か、足りない様な気がする。 「で、蒼晶智勇・・・・・・・・・?」 いない。 いや、<氣>は、5人分感じられるのだが。 怪訝そうな表情で、『4人』を見つめる。 そうしたら、醍醐の背後から、ひょこっと茶色い物が覗いた。 サーチしていた視点より、20cmは下だ。 目が合う。 また隠れた。 なんだか、全身から『いじめる?いじめる?』オーラを放っている『ちっこいの』に、村雨は、こっそり溜息をついた。 (なんだ、こりゃ・・・) 「智勇、出てきて、きちんと挨拶した方が良いぞ」 「大丈夫だよ、ちーちゃん。この人、人間ぽいから」 「そうよ、智勇、頑張って」 「ちーちゃん、俺が付いてるっ!ファイトだっ!」 4人に励まされて、その『ちっこいの』が姿を現した。 醍醐の制服の裾をしっかり掴んで、ぴょこんと、頭を下げる。 「あの・・・蒼晶智勇です。こんばんは」 「はい、こんばんは」 思わず、返事をしつつ、村雨は、マサキに『蒼晶さん達には、手を出さないように』と、くぎを刺されていたことを思い出す。 (しかし、こいつは、どう見ても・・・<東京の命運を握る男>とやらには見えねぇぜ・・・) 何に見えるかというと・・・中学生?下手したら、小学生だ。 淡い茶色の前髪を透かして見える目は、警戒と怯えを浮かべていて、睫毛がふるふるしている様は、まるっきり仔ウサギ。 (いや、マサキ、お前を疑うわけじゃあねぇが、こいつは、確かめといた方が良いだろ) というわけで、戦闘開始。 村雨は、最後方に陣取って、銜えタバコで様子を見る。 「あっちいけ〜!!」 「こわいよぉ〜!」 「もう、ヤダ〜!おうち、帰る〜!!」 ・・・・・・・う〜ん。 すごい掛け声だ。 その合間に、 「ちーちゃん、頑張れ!後で、ラーメン奢ってやるから!な!な!」 「そうだわ、智勇、明日、ケーキバイキングに行きましょうねっ!」 「智勇、偉いぞ!」 「ちーちゃん、もう少しだからね!」 などと、真神4人衆の激励が入る。 激励、というより、宥めすかし、か。 しかし、歩く擬音は「てけてけ」、殴る擬音は「ぽかぽか」の割には・・・一人で、手下どもをさんざんっぱらやっつけている。 (古武術の腕は、本物か・・・にしても・・・あの掛け声だけでも何とかならねぇのか・・・) 術を使う気にもなれなくて、タバコを持ったまま、近くまで来た智勇を、じっと見てやった。 目が合った智勇は、恐怖の色も最大限に浮かべたまま、 「うわああああぁぁぁぁん!!!」 秘拳・黄龍。 辛うじて、かわす。 内心、冷や汗が、どっと吹き出すが、村雨祇孔、ここは意地でも平然とした顔をとる。 ほとんど泣き出しそうになりながら、2発目の構えを取った智勇に、 「はい、降参」 と、手を挙げた。 「ふぇ?」 小首を傾げて、まだ、警戒しつつ、口から出たのは。 「噛まない?ねぇ、噛まない?」 「・・・・・・あ?」 後ろから、真神の連中が駆け寄ってきた。 小蒔が、手を合わせながら、村雨に言う。 「ごめんね、村雨クン。ちーちゃん、前に、鬼に変身したヤツに、腕の肉、噛み切られちゃって。 それが、トラウマってるみたいなんだ」 ほのぼのした語り口調だが、内容は、結構、えげつない。 あ〜、と村雨は納得する。 ま、普通の高校生(?←まだ納得できない)は、目の前で鬼に変身するような敵と、何度も戦ったからって、慣れるものでもないか。 また、半身を醍醐の影に隠している智勇に、面白がって、がう、と歯を見せてみた。 「ヤダ〜!噛まれるの、ヤダ〜!!」 縋り付く智勇の背を、醍醐は、ぽんぽんあやしている。 「イカサマ!てめぇ、ちーちゃんを、苛めるな!!」 いや、そんなことを木刀向けつつ絶叫されても。 「大丈夫だ、智勇。ただの、タチの悪い冗談だ」 「ほら、智勇、見て。変身してないでしょう?村雨さんは、普通の人間よ。大丈夫」 「・・・アオちゃん、ホント?村雨さん、噛まない?」 そーっと伺ってくる、智勇に、ふと思いついて、制服の内ポケットを探った。 武器でも取り出すのか、と警戒した智勇が、葵と小蒔を庇う。 (一応、男、なんだねぇ) 変なところで感心しつつ、村雨が取り出したのは、チョコレート。 「パチンコの端数で貰ったヤツなんだが・・・食うか?」 あ、と智勇の目が輝いた。 やっぱり。 トラウマがどうこうじゃなく、幼児並の反応だ。 「智勇、貰ったら、ちゃんと、ありがとうするのよ?」 「うん、アオちゃん」 母と子の会話か。 ちょーだい?と両手を出してくる愛らしさに、いやいや、俺は、ロリショタの趣味はねぇ、と己に言い聞かせつつ、チョコを渡しかけ・・・ほいっと、手を上げた。 「届かない・・・」 智勇は、飛び跳ねつつ、手をばたばたさせる。 チンパンジーでも、道具を使って取るというのに。 「ゆーちゃん、取ってぇ〜」 『智勇は、<道具>を使った!』 でっかい道具=醍醐は、困ったように、村雨を見た。 「あ〜、すまんが、智勇に、チョコをやってくれんか?」 ここには、父もいたか。 別段、逆らう気もない村雨は、素直に、チョコを渡した。 「ありがとうっ!」 満面の笑みは、路地裏を照らす太陽のようだ(笑)。 「よかったね、ちーちゃん!」 「ちーちゃん、俺にもくれよ」 「いーよ。はい、きょーちゃん、一口あげる」 早速、チョコを剥いてる智勇を横目で見ながら、村雨は、翌日のアポイントを醍醐&葵に取る。 「じゃあ、また、明日ね!今日は、かいさ〜ん!」 一応リーダーの智勇の一声で、今日はおしまいとあいなった。 ぞろぞろと真神5人衆・・・智勇と愉快な家族達は、帰途につく。 ぽてぽて歩く智勇は、コンパスの長さも違う上に、チョコに熱中していたので、4人から、少し離れた。 「あ〜、そう言えば、まだまだ、チョコがあったっけなぁ・・・」 村雨の呟きに、智勇の見えない長い耳が、ピンと立った。 「俺は甘いモン、苦手だからなぁ・・・パチンコで景品貰うのはいいが、溜まる一方なんだよなぁ・・・」 まだ、呟いてます。 直接語りかけずに、あくまで独り言なのがミソ。 「あぁ、あのチョコだのクッキーだのは、このまま俺の部屋で、腐っていく運命なのか・・・菓子として、無念だろうなぁ・・・」 ついに、智勇の歩みがぴたりと止まった。 くるりと振り向く。 「村雨さん、困ってるの?」 「いや、俺としては、捨てちまっても良いんだけどよ。菓子の立場としては、どうせなら、うまいと言ってくれるヤツに食われたいだろうなぁ」 うーうーと、鼻にしわを寄せて、智勇は考えこんでいる。 「アンタが、食ってくれるんなら、菓子も本望だろうぜ」 いつの間にやら、肩に手など置いて、村雨は囁いた。 「俺の部屋は、この近くだ。これから、来るか?なに、手間は取らせねぇぜ?」 明日、持ってきて。 そう言うだけの頭は、智勇には備わっていなかった。 翌日(笑) 日比谷公園にて。 「あぁ!智勇!心配したのよ!?学校、休んだりして・・・」 村雨と二人で公園に現れた智勇は、真神の4人を認めた途端、涙をこぼした。 「うわ〜〜ん!アオちゃんの嘘つき〜〜!! しーちゃん、噛まないって言ったのに〜〜!」 ロリショタの気はねぇと言っておきながら、とりあえず、食ったらしい。 しかし、呼び方が『しーちゃん』に好意度レベルアップしているあたりが、さすがだ、村雨祇孔。 「てめぇ、イカサマ!ちーちゃんに、ナニした!?」 村雨は、ゆっくりとタバコの煙を吐き出しながら、言った。 「反応が幼児並なのがいまいちだが、言ったことは素直に従うところと、好奇心が旺盛なところは、評価できる。 これからの成長に期待して、70点。ぎりぎり合格ラインだな」 『オニ』か、あんたは。 おもむろに、タバコを靴でじゃりっと踏みつぶす。 「ご馳走様でした」 手を合わせる村雨に、4人の奥義が炸裂した。 その後の浜離宮では。 陰陽師・東の束が、 「その人、噛む?ねぇ、噛む?」 に続いて、 「その人、乗っかる?ねぇ、乗っかる?」 と言われ、大変、困惑したという。 |
あとがき 何か、発作的に書きたくなって、3時間で書き上げてしまった代物。 当初の目的の「愛らしい物」をクリアーしたのかどうかもよく分からない(苦笑)。 龍麻「うわ〜、俺、こういう、頭、弱そうなヤツ、イライラする〜!」 智勇「俺、頭、弱くないもん!学年で10番以内だもん!」 龍麻「チョコに釣られたヤツが、何を言うか!」 智勇「チョコに釣られたんじゃないもん! しーちゃんが困ってたから、手伝ってあげようと思ったんだ!」 龍麻「・・・チョコ、旨かったか?」 智勇「うん♪旨かった♪・・・しーちゃんも、旨かったよ♪あ、巧かった、かv」 龍麻「!(い、意外と、イイ性格をしているのかっ)」 龍麻対応村雨「(智勇を見ながら)・・・・・思いっきり、ロリい・・・犯罪くせぇ・・・」 智勇対応村雨「まあ、そう言うなよ、俺。あの顔で、銜えるんだぜ? ・・・それだけで、全てが、許せるってもんじゃねぇか♪」 龍麻対応村雨「俺が突っ込むのもナンだが。・・・お前が許してどうするよ!」 |