こちら、宇宙の何でも屋
フラヒスジェネラルカンパニー
ルー様、社長で大天使
今日も乗り込む、NAGAYA号
流れよ我が涙、と大天使は言った
僕が、その朝、コントロール室に行くと。
ルー様が翼を、部屋いっぱいに拡げてたニャ。
はらり、と落ちた羽を、シトラさんが、こっそり拾ってるニャー。
シトラさんは、その羽を水で固めて、「幸福の大天使のお守り」って言って、売りさばいてるニャ。
マメな努力をする人ニャ。
それにしても、どうしたのかニャー・・
ルー様、NAGAYA号が狭いの知ってるから、最近、あんまり羽を広げてニャかったのに・・。
心なしか、顔色も悪いニャ。
「シフィールが、いなくなったのだ」
ルー様は、僕の顔を見て、ぽつりと言ったニャ。
あぁ、シフィール様がニャ。
シフィール様のこととなると、確かにルー様が落ち込んでても無理無いニャ。
・・・って、大変ニャ!!
いなくなったって、どこへニャ!!
アドルさんが深刻な顔で入ってきたニャ。
「やはり、強襲型揚陸艇『アンヌンタイガー』が、無くなっています・・」
正直言って、僕には、二人乗りのNAGAYA号に、強襲型揚陸艇が付属している必要性が、さっぱりわかんないニャ。
まあ、良いけどニャ。
「あぁ、シフィール、どこへ行ってしまったのか・・・」
ルー様は沈痛な面もちで、羽をバサバサさせているニャ。
その足下では、シトラさんがひたすら、舞っている羽を拾い集めてるニャ。
・・・心配してないんだろうニャ〜・・。
「ルー様、何か思い当たることは、無いのかニャ?」
「うむ・・・」
ルー様は、苦悩に満ちたお顔で、額を押さえたニャ。
「夕べは、シフィールは、マグロの角煮が食べたいと言ったのに、我はサンマの蒲焼きを出したのだ・・それがいけなかっただろうか・・・」
「も、申し訳ございません!わたくしが、不注意なばっかりに!!」
アドルさんが、すごい勢いで平伏したニャ。
まあ、そうだニャ。
ルー様は、ご自分で夕食作ったりしないニャ。
きっとまた、アドルさんが用意したニャ。
でも仕方ないニャー。
サンマの蒲焼き(の缶詰)は安いし、長保ちするからニャー。
僕らだって、夕べはサンマの蒲焼きだったニャ。
僕なんか、サンマは一欠片で、ほとんど味付きまんまだったニャ。
まあ、それは、ともかく、ニャ。
「それとも、シフィールは火曜サスペ○ス劇場が見たいと言ったのに、我が『銀河なるほどマルハッチ』をかけたのがいけなかったのだろうか・・」
・・意外とどっちも庶民的なもの見るニャー。
その点、僕のクレイドルなんか、「ナスダック株式市場」を欠かさず見てるニャ。
まあ・・・「いいぞ・・そこだ・・・いけ・・・」とか「くっくっくっ、俺の思った通りだ・・」とか呟くのは、ちょっぴり怖いけどニャ。
それにしても、チャンネル権争いくらいで出て行ってたら、シフィール様、身体が保たないニャ。
「それとも・・夕べ、シフィールは早く寝たいと言ったのに、我はその気になっていたので、ベッドに拘束した挙げ句に、催○剤を打って、したのは良いが、我は一回で納得したので、シフィールを放っておいて先に寝たのがいけなかっただろうか・・・」
・・・・・・・・・
誰も突っ込まないニャ。
突っ込めないけどニャ。
はぁ・・・仕方ないニャ・・クレイドルに、頼んで、シフィール様の思考を追って貰うニャ。
僕は、コントロール室から出て行きかけたけど、一応これだけは言っとくニャ。
「ルー様は・・・」
「我は、受けだ」
・・・・・・。
本当に、これだけ態度の大きい受けは珍しいと思うのニャ・・・。
クレイドルのところに行ったら、もう、何か呟いてたニャ。
「いあーぐたんたとつぐてぃーよぐなこぶはーふんぐるいはすとぅーるふたぐん・・・」
「這い寄る混沌に耳を傾けちゃダメニャーーっ!!」
ふぅ・・危なかったニャ。
あんなものに関わってたら、正気度チェックが必要になるニャ。
「リアムか・・・ふん、シフィールのことだろう?」
「そうニャー」
「・・・・・・これが、座標だ」
クレイドルはそう言って、メモを渡してくれたニャ。
早いニャー・・
そんなにシフィール様が心配だったのかニャ・・・。
「・・・早く見つけないと、ルーが大音量で考えていて、煩わしいことこの上ない」
あぁ、なるほどニャ。
納得ニャ。
・・・それにしても、この船で、シフィール様自身をホントに心配してる人いるのかニャ・・・。
「知りたいか?」
「・・・・・・いいニャ」
聞くのは、何となく怖いニャー。
僕は、メモを持って、コントロール室に戻ったニャ。
「では、早速、この座標に向かって、航行を開始いたします!」
「うむ・・・」
いちいち形式張った言い方ニャ。
アドルさん、銀河連邦軍上がりだからニャー。
こんな二人乗りのNAGAYA号には、ちょっぴり似合わないやり方だと思うのニャーけど・・ルー様は、厳かに受け入れちゃってるからニャ〜。
善きに計らえ、って感じニャ。
その座標の近くまで来ると、アンヌンタイガーのビーコンが拾えたニャ。
アンヌンタイガーは動力も切って、ひっそり潜んでるつもりのようニャ。
でも、無駄なのニャ。
NAGAYA号は、すぐ近くまで、進んだニャ。
ルー様がおもむろに、通信機器をいじりだしたニャ。
「シフィール、聞こえるか?シフィール・・・」
ぶぉん、て音を立てて、メインパネルが点ったニャ。
「・・・・・・マクイールか・・・・・・」
シフィール様は、無表情にこっちを見たニャ。
「シフィール、我が悪かった・・・」
ルー様が、マイクを持ったまま、両手を広げたニャ。
『さあ、我の胸へ!』のポーズニャ。
・・・頭、下げる気は無いようなのニャ・・・。
「戻ってきてくれたなら・・・」
ルー様は、にっこりと、慈愛に満ちた笑顔を浮かべたニャ。
「・・・晩酌のお銚子は、1本半に、増量しようではないか!」
・・・うにゃ〜・・・所帯じみた説得ニャ〜・・・。
「・・・いつまで、増量なのかねぇ・・・そんなに大量にお酒は積んでないよ、まったく・・・」
シトラさんが、扇の陰でこっそり呟いてるニャ。
「酒となると、クレイドルも浴びるほど飲むんだから・・・あぁもう、金がかかるったらありゃしないよ」
・・・仕方ないのニャ〜・・クレイドルには色々と苦労があるんニャ〜・・・。
シフィール様は、無表情のまま、ぽつん、と答えた。
「シトラとフィリスの酌付きなら・・・」
・・・シフィール様・・・それはマズイニャー!!
ルー様の目の前で、浮気宣言ニャ!?
シトラさんと、いつの間にか来ていたフィリスさんも、固唾を飲んで、ルー様の方を見やったニャ。
ルー様は、それはもう、柔らかく微笑んだニャ。
「・・・我が、手ずから酌をして遣わそう・・・」
・・・・・・・・・
シフィール様も、固まってるニャ・・・
こ、これは、返答次第では、恐ろしいことになりそうニャ・・・
僕が怯えている横で、フィリスさんが、にっこりと笑いながら、時計を確認したニャ。
「シフィール様、長考に入りました。残り時間、28分です」
・・相変わらずの大物ぶりニャ〜・・・。
緊迫した雰囲気のまま、時間だけが過ぎていくニャ〜。
フィリスさんが、相変わらず、透き通るような綺麗な声で、読み上げてるニャ。
「シフィール様、残り時間3分を切りました。10秒・・20秒・・・」
うーん・・・『銀河N○K囲碁の時間』みたいニャ。
シフィール様の唇が、ようやく動いたニャ。
「・・・・・・・・・・・・・・・分かった。戻ろう・・・・・・・・・・・・・・」
・・・の多さが、苦悩を物語ってるニャ。
でも、仕方ないのニャ。
そういうルー様を選んだのは、シフィール様ニャ。
ルー様のお酌で我慢するニャ。
「・・・リアム」
あぁっっ!我慢てのは嘘ニャ〜〜!!
ルー様のお酌なんて、この広い大宇宙でシフィール様しか享受できない有り難き光栄なんだから、シフィール様は喜んでしかるべきなのニャ〜〜!!!
〜アイキャッチ〜
「うるさいねぇ、ばれなきゃあ、いいのさ」
〜CM〜
「東京魔人学園外法帖」好評発売中。
公式HPで攻略が分かるという太っ腹。時々、監督自らの書き込みさえありますぜ。
・・18禁OK掲示板は、今動いてないけどな・・
〜アイキャッチ〜
「・・・・・・眠い」
それから、僕らは、繁華星系として有名な星に向かったニャ。
勿論、晩酌用のお酒を仕入れるためニャ。
・・・貧乏、貧乏って言ってる割には、こういうこととなると、即断即決なんだからニャ〜・・・。
カジノに近い空港は、騒がしい上に治安が良くないようなので、僕らは郊外の静かな空港に降り立ったニャ。
どうでもいいけど、正義の味方が「治安が良くない」ところを避けるのもどうかと思うけどニャ〜。
まあ、いいニャ。
僕が、正義の味方する訳じゃないから、あまり大きなことは言えないニャ。
ルー様たちは、商店街に出かけていったので、僕は、近くの公園をお散歩することにしたニャ。
緑は多いし、小綺麗な池はあるし、結構いい感じの整備ぶりニャ。
ふぅ・・これでクレイドルが一緒に歩いてくれたら、もっと楽しいのにニャ〜・・・。
しょうがないのニャ。
クレイドルは、あの鉛の防護壁から出るのは、すっごい苦痛なのニャ。
代わりに、何か楽しそうなものをお土産に持って帰るニャー。
うろうろしている僕の目の前に、突然、変な生き物が飛び出してきたニャ。
その姿はまるで・・ローストチキンのロースト前って言うか・・
ぴぎゃーって、怯えたような鳴き声を発したニャ。
オモシロイのニャ。
こういうわきわき走り回ってる生き物を捕まえたくなるのは、猫のサガなのニャ〜〜!!!
ニャハハハハ!
そっちかニャ、そっちに逃げるのかニャ!
もっと頭を使うのニャ!
ほら、捕まえるのニャ・・・ゲームオーバーニャ、ローストチキン(未満)。
ぴぎゃぴぎゃ言ってるそれの首に噛みついてると、声がかけられたニャ。
「まあ、鳥さんを虐めるなんて・・・リアム、いけない子・・・」
フィリスさんニャ。
だって、これは、猫のサガ・・・・・・・ニャニャ?
フィリスさん、その両手に抱えてるのは、何ニャ?
「うふふ・・・これはね、その子が、私にくれたの・・・」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
そうは見えないけどニャ。
フィリスさんは、羽毛を両手一杯に抱えてたニャ。
どう見ても、このローストチキン未満の羽をむしり取ったものニャー。
でも、フィリスさんが「くれたもの」て言うなら、そうなのニャ。
「ぴぎゃぎゃーーっ!」
抗議しても無駄なのニャ。
長生きしたかったら、黙ってる方が利口ニャ。
それにしても、どうするつもりなのかニャ・・
羽毛布団でも作るのかニャ?
確かに、羽毛布団は水鳥の羽で出来てるらしいけど・・・何羽が犠牲になるのかニャ〜。
「おや、手に入れたかい」
「あら、シトラ。・・うふふ、ほら、こんなに」
シトラさんとフィリスさんが微笑み合って並んで立っている姿は、そりゃあ、麗しいニャ。
舞い散る羽毛が、また、幻想的な雰囲気を醸し出してるニャ。
・・・けどニャ〜・・・。
「これは、ね。リアム。『幸福の大天使のお守り』の材料さ」
ニャ〜〜?
だって、あのお守りは、ルー様の羽を使ってるからこそ、霊験あらたかで・・・。
シトラさんは、妖艶に笑ったニャ。
「お聞き。確かに、アレはそりゃあ効力が高いさ。でもね、本当に持ってるだけで幸福になるアイテムなんてものが世の中にあっちゃあいけないんだよ」
分かるような気もするけど・・・でも、とっくにあのお守りは出回ってるニャ。
「そうね・・あのお守りは、本当に効果があるって評判で・・・オークションででも高値がついてるの。・・幸福をお金で買うなんて・・・悲しいことね」
うーん・・・やっぱり、分かるような気もするけど、納得出来ないのは、今までの二人のやり方を知ってるからなのかニャー。
だいたい、そうやって、沈痛な顔でいるけど、結局、そのローストチキン未満の羽はどう使うつもりニャ。
「こりゃあね。これも『幸福の大天使のお守り』として卸すのさ。そうすりゃ、たまーに、本物が混じってて、本当に幸福になる奴も出てくるし、外れる奴も出てくるさ。それが、お守りってやつじゃないかい?」
「ふふ・・中には、外れてても、ちょっとした幸せを、お守りのおかげだと思う人もいると思うの・・本来、お守りって、そういうものでしょう?」
・・・言いくるめられそうニャけど・・・
要するに、本物を先に売ってその効果を確かめさせて、高値をつけても買い取られるようにしといてから、偽物を水増しして卸すってことニャ〜・・。
「それにしても、どうしたもんかねぇ。半々・・じゃ、まだ多いかねぇ」
「そうね・・・1/3が本物・・・あぁ、でも、やっぱり、幸福の確率からいくと・・・」
「あんまり、いきなり効かなくなったって評判がたつのも困るしねぇ」
二人が、相談を始めたニャ。
・・・僕の知らない世界ニャ・・・て言うか、知りたくなかった世界ニャ。
もう、NAGAYA号に帰るニャ・・・。
ローストチキン未満、放してやるニャ。
僕の興味が長続きしたら、贄・・もとい、食べ物にしてやるニャ。
NAGAYA号に戻ると、クレイドルが出迎えてくれたニャ!
「どうしたのニャ!外に出るのニャ!?」
クレイドルは、真っ黒いゴーグルみたいなのをつけてるニャ。
それで視界は遮断できるかもしれないけど・・あぁ、耳も覆ってるけど・・・思念は遮断出来ないニャ。
こんなカジノなんて欲望渦巻く場所で、外に出るなんて、自殺行為ニャ〜〜!!
「・・・うるさい、黙れ。・・お前の『大声』の方が、よほど響く・・・」
ニャ・・・うにゃ〜〜〜・・・・。
僕、うるさいのかニャ・・・・。
迷惑だったニャ・・・・・・。
「うるさい、行くぞ」
ニャ?
「カジノだ。たまには、俺も、うまいものを食したい」
・・・カジノは、レストランじゃないニャ。
「付いてくるのか、来ないのか?」
ニャ〜〜!!
行くニャ〜〜〜〜!!!!
僕は、慌てて、クレイドルにくっついて行ったニャ。
一緒に行くニャ〜。クレイドルとお出かけニャ〜♪
カジノは、すっごい光と音がきんきらで目が回りそうだニャ。
クレイドルは、その中をすたすたと歩いてるニャ。
・・意外と図太いニャ。
「・・・置いていくぞ」
ニャ〜!ごめんなさいニャ〜〜!!
クレイドルは、カジノの中でも、人間がディーラーをしているブラックジャックの席についたニャ。
入り口で、テレパスは弾かれてるみたいニャけど、サトリは、周波数が別なのかニャ〜。
クレイドルの黒いゴーグルは、怪しげニャけど、そのくらい怪しげな人は一杯いたニャ。
だから、クレイドルは、 ノーマークで入れたニャ。
僕には、賭のことはよく分からないニャ。
でも、コンピュータじゃなく、人間相手なら、クレイドルの敵じゃないニャ。
だって、クレイドルには、相手の持ってる札も、どうしようとしてるかも、全部「聞こえる」ニャから。
クレイドルの膝に乗っかって、机の上にキラキラ積まれていくコインで遊ぶのも、飽きたニャ。
僕も少し遊んでくるニャ。
僕にも出来そうなのは・・・スロットとかかニャー・・。
・・スロットの周りに人だかりが出来てるニャ。
君子危うきに近寄らずニャ・・・って・・・聞き覚えのある声がするニャ・・・
「おぉ、見よ、アドル。また、ジャックポットだ」
「さすがは、ルー様!お見事です!!」
ニャ〜・・・
そりゃまあニャ〜・・・
『幸福の大天使のお守り』の総元締めニャから・・・
これだけ当たりが出たら、目をつけられそうニャものだけど、コンピュータ相手ニャから、少なくともイカサマの疑いはかけられないニャ。
それにしても・・・
「おぉ、まただ。・・我の運もなかなかのものだな・・」
「全ては、ルー様の人徳の賜物です」
床に一杯コインをばらまいてるニャ〜・・。
危なっかしい人たちだニャー。
結局、僕は、ルーレットで、10枚のコインを12960枚にしただけで終わったニャ。
まだまだニャ〜・・。
「帰るぞ」
クレイドルがお迎えに来てくれたニャ。
帰るニャ〜帰るニャ〜♪
僕は、もう疲れたニャ。
「そうか。・・食事でも、と思ったが・・・」
ニャ〜〜〜!!!
疲れてないニャ〜〜〜〜!!!
食べるニャ!クレイドルと食べるニャ!!
「・・・くくっ・・・」
クレイドルが、珍しくご機嫌ニャ。
嬉しいニャ〜。クレイドルが笑ってると、僕も、ホントに嬉しいのニャー。
幸せだニャーって思うのニャ。
クレイドルに高級レストランでご馳走してもらって、僕は、おなかぽんぽんでNAGAYA号に帰ってきたニャ。
ふえ〜・・幸せニャ〜・・・。
クレイドルのお膝の上でごろごろと喉を鳴らしてると、ルー様たちが帰ってきたニャ。
すっごい上機嫌ニャ。きっとルー様もがっぽり儲けたニャ。
クレイドルが、ふん、と皮肉っぽく片頬を歪めたニャ。
「いいのか?あのカジノ・・・勝ちすぎた客には、イカサマを仕掛けて、回収しているようだが?」
ニャ?クレイドルも、儲けてたようニャけど、イカサマされたニャ?
「俺は、平気だ・・。相手が疑い出したら、引き上げるようにしたからな」
ニャるほどニャ〜。
疑われてることも、イカサマしようかって考えてることも「聞こえる」ニャから・・無敵ニャ。
クレイドルは、凄いニャ。かっこいいニャ。
ルー様は、にっこり笑って、
「そうか、それはよかった」
て言ったニャ。
・・・クレイドルの心配したニャ?
「そうではなく、イカサマを見逃す気か?と問うている」
あぁ、そうニャ〜。
イカサマは悪いことニャ。
正義の味方は、見逃しちゃダメニャー。
でも・・・クレイドルは、答えが分かってるって顔だニャ。
「クレイドル。そう、イカサマは、正義では無い。だが、それによって泣くものがいたなら、我も天罰を下すが、そうでないなら、それは店の裁量範囲内ではないだろうか。・・店のものにも、利益を得るという信念があろうからな」
「さすがは、ルー様!なんと、懐の深いお言葉・・・!このアドル、つくづくと感服いたしましてございます」
ニャ〜・・・そう言われると、そうかニャーって気もしてくるけど・・・
なんか、違うような・・・
一緒に、いつもの船倉に戻ると、クレイドルが、あの皮肉っぽい表情で、唇を吊り上げたニャ。
「いいか、リアム。
今ので、分かっただろう・・・。
あの男の言う『正義』とやらが、如何に根拠のない代物か。
くくっ・・・仮に、あの男が、店のものにいちゃもんをつけられて、金を巻き上げられていたなら、また違った反応をするに違いない。
ふん・・・所詮は、自分を中心にした正義に過ぎないということだ」
僕には、難しいニャー・・・。
「・・・お前も、たまには、自分の頭で考えるということをしろ・・・。
お前は、他人の言うことを、鵜呑みにしすぎだ。
疑え。・・・俺の言うことも、な・・・」
難しいニャー・・ホントに難しいニャー・・・。
僕の頭で分かるのは、あーゆー店があるから、僕らはお金を儲けられて、おいしいものを食べられたってことだけニャ。
シトラさんとフィリスさんがやってることも、イカサマの一種とは思うニャけど、僕は、二人が好きニャから、それでいいと思うのニャ。
うーん、ニャ・・・うーん、ニャ・・・
うん、やっぱり、そうなのニャ。
僕は、『本物の』正義の集団じゃニャくても、NAGAYA号のみんなが好きなのニャ。
それで、イイのニャ。