『夜空の星が輝く陰で
ワルの笑いが木霊する
星から星に泣く人の
涙背負って宇宙の始末
宇宙船フラヒスNAGAYA号
お呼びとあらば即参上! 』
僕の名前はリアム。
宇宙船フラヒスNAGAYA号のマスコットだニャ。
僕が生まれたのは、N32星雲の『デシカラット』という星だったニャ。
動物から進化した僕らは、『アニマロイド』て言われる半人半獣の姿をしているニャ。
平和な星だったのに・・・銀河連邦に登録する前に、ヒューマノイドに発見されて、仲間達は、ほとんどペット業者に乱獲されたニャ・・・今は僅かに『イボイノシシ』族が残ってるくらいニャ・・。
僕も、『猫耳、萌え〜〜!』て叫ぶ人たちに攫われて、危うくオモチャにされるところニャったのを、ルー様が助けてくれたのニャ。
それからずっと、このNAGAYA号にいるニャ。
僕にしか出来ない仕事もあるし・・・。
ルー様は、NAGAYA号の船長ニャ。
全宇宙を慈愛と正義で包むべく、日夜、頑張っておられるのニャ。
今日も、宇宙のどこかで、助けを求める人がいるのニャ。
NAGAYA号は、そんな人たちのために、いつでもどこでも参上するのニャ〜!!
第1話 『神に代わってお仕置きよv』
「うむ、そろそろ、次の悪を倒す頃かも知れない・・・」
ルー様が呟いたニャ。
ここは、NAGAYA号のコクピットニャ。
NAGAYA号は元々2人乗りなのに、更に、ルー様の席は一段高くしてあるから、コクピットはすっごく狭いのニャ。
今は、もう一つの座席には、フィリスさんが、補助座席にアドルさんが座ってるニャ。
シトラさんは、お休み中ニャ。
他にも、シフィール様がお部屋に、それから船倉にもう一人。
あまりにも狭いので、いつも、船内は無重力状態にしてるニャ。
これなら、空間が『有効活用』出来るニャ。
最初は大変だったニャが、最近では、ペン型空気噴出器の扱いにも慣れて、自由に動けるニャ。
シトラさんやフィリスさんなんか、ひらひらのスカートなのに、他の人に覗かれることなく、空中を漂ってるニャ。
もはや、職人芸ニャ。
でも、ルー様は、もっとスゴイニャ。
無重力なのに、物理法則を無視して、下を優雅に歩くニャ。
さすがは、『大天使さま』なのニャ。
話を元に戻すニャ。
いくらルー様と言えど、この広い宇宙の中で、どんな『悪』が蔓延ってるかは、判らないのニャ。
そこで、船倉にいる、僕の大事な人の出番なのニャ。
「クレイドルの所に、行って来るニャー」
「うむ、リアムよ、頼む」
僕は、マイ毛布を片手に、船倉に向かったニャ。
時間がかかるかも知れないので、お休みの準備も整えて行くニャ。
本当は、ルー様とシフィール様以外は、自分のお部屋はないので、緊急脱出用ポッドで休むのが原則ニャ。
でも、僕は、あれで寝るのはコワイニャ・・。
僕が乗り込むより前にいた人が、寝相が悪くて、つい、脱出用レバーを倒してしまって、船外に飛び出したらしいのニャ・・。
しかも、まだ、見つかってないのニャ。
シトラさんは、
「まったくもう・・新しい脱出用ポッドを買わなきゃならなくなって、とんだ赤字だったよ」
て言ったニャ。
もし、僕がいなくなっても、きっと僕の心配はしてくれないニャ。
だから、僕は、クレイドルと一緒に寝るのニャー。
ちなみに、アドルさんは、寝ないのニャ。
ルー様が起きてるときは、
「ルー様が働いておられるときに、私が休むわけには・・!」
て言って、起きてるし、ルー様が休んでるときは、
「ルー様が休んでおられるときこそ、万全の備えをするのが、私の役目・・!」
て言って、起きてるニャ。
それじゃ、一体、いつ寝るニャ。
『美形はトイレに行かない法則』はあるけど、『正義の従者は寝ない法則』でもあるのかニャ。
不思議だけど、でも、本当に、一回も寝たとこを見たことないニャ。
その代わり、シトラさんとフィリスさんは、『寝不足はお肌の大敵』て言って、二人で交互に寝てるニャ。
シフィール様は寝放しニャ。
ひょっとしたら、船全体で平均を取れば、ちょうど良い睡眠時間かも知れないニャ。
それは、ともかく。
船倉の一番端っこに、クレイドルの『部屋』はあるニャ。
2メートル×1メートルくらいの空間を、厚さ50cmの鉛板で覆ったのが、クレイドルの棲処ニャ。
クレイドルは、『サトリ』の一族ニャ。
どんな種族にも現れる突然変異種ニャので、外見的特徴は無いニャ。
『サトリ』の特徴は、思念波を、無作為に全部受信してしまうことニャ。
だから、たいてい、精神病院に入れられるか、ノイローゼになるか、世を儚んで自殺する人が多くて、平均寿命は10歳前後だそうニャ。
だけど、クレイドルは、20歳もとっくに越えた青年ニャ。
スゴイのニャ。
何がスゴイのかは、敢えて突っ込まないニャ。
でもさすがに、思念波をずっと浴びているのは苦しいらしくて、鉛で遮断しているニャ。
全部、遮断できるわけニャ無いけどニャ。
しかも、思念波だけで、神経がささくれ立ちそうなのに、これ以上の、入力情報はいらん、て言って、視覚も聴覚も遮断してるニャ。
だから、クレイドルの部屋は、真っ暗闇で、静かなのニャ。
「クレイドル、リアムなのニャ」
「・・・入れ」
きっと、声に出して言わなくても、僕が近くに来てることは、クレイドルには判ってるニャ。
ひょっとしたら、用件も。
でも、一応、挨拶して入るのが礼儀なのニャー。
中は、真っ暗闇ニャけど、僕には暗視能力があるから、平気なのニャ。
「クレイドル、ルー様が・・」
「・・わかっている・・」
クレイドルは、面倒くさそうに、髪をかき上げたニャ・・カッコイイニャ〜〜!
暗いところで、白金の髪がぱらぱらして、すっごい綺麗ニャーーっ!
あぁ、飛びかかってじゃれつきたいニャーっ!
「・・少し『黙れ』」
ごめんなさいニャ・・僕の頭の中が、うるさかったニャ・・
でも、クレイドルの顔は、ちょっぴり赤くなってるのニャ。
「『黙れ』と言っている」
ごめんなさいなのニャ。
もう、考えないニャ。
しばらく、僕は、ぽけーっとしたニャ。
僕は半分獣だから、思念が動物の本能に近くて、近くにいてもあまり気にならないんだそうだニャ。
だから、クレイドルの所に遊びに来られるのは、僕だけニャ。
クレイドルの言うことが判るのも、僕だけニャ。
クレイドルが、目を閉じたまま、呟いたニャ。
「宇宙の・・危機が・・早く・・急いで・・」
「それ、赤色矮星帝国ニャ。NAGAYA号じゃ太刀打ち出来ないニャ」
「・・・駄目だ・・あれは、憎しみの光なんだ・・・」
「ソーラレイは、もう今から行っても間に合わないニャ」
「レイ・・レイ・・」
「福音戦士かニャー。3人目ニャら、知らないニャ」
「レイ・・V−MAX発動・・」
「・・・・・・フェイントだったニャ」
こんな風に、クレイドルは、宇宙中に飛び交ってる思念波を受信するニャ。
でも、どれが、悪に困って、助けを求めてる思念かは、判らないニャ。
それは、僕が判断するニャ。
ちなみにシトラさんからは、『金になりそうなのをね』って注文が出てるニャ。
難しーのニャー・・。
段々、クレイドルの顔色が悪くなってきたニャ。
元々青白いけど、今じゃ土気色だニャ。
「もう、止めるニャー。いったん、気分を変えるニャ」
流れ込む思念波を全部受け止めるのは、大変な作業ニャ。
陰鬱な気分や、殺人鬼の思念も、何もかもお構いなしに流れ込んでくるらしいのニャ。
楽しいのや、Hな思念もあるらしいけどニャ。
でも、『悪』を探すために、マイナス思考の思念を、主に集中して『聞いて』るニャ。
精神に良い影響を及ぼすはずが無いのニャ。
アタリが無いときは、ぱーっと、何も考えない方がイイのニャ。
本能のみで頭真っ白にしたら、また、別の思念波を感じるかも知れないニャ。
というわけで、本能の赴くままに行動するニャ。
「・・・それは、お前だ・・・」
ニャ・・・クレイドルは、その気は無いのかニャー・・・
んー、でも、僕は、したいニャ。
だから、舐めるニャ。
クレイドルのほっぺは、さらさらしてて、気持ち良いニャ。
ニャニャニャ・・・他の所も、舐めるニャ。
足の方から潜り込むニャ。
ニャー・・・見つけたニャー。早速舐めるニャ。
「・・・しょうがない猫だな・・・」
僕に言わせれば、ヒューマノイドの方が、よっぽど『しょうがない』ニャ。
気持ち良いことは、我慢しない方がイイのニャ。
ニャハハハハ。
アイキャッチ
『うふふ・・・いけない人・・』
〜 CM 〜
『東京魔人学園剣風帖絵巻』
剣風帖と朧がついて4800円。
お買い得なので、買うがよろしかろう・・。
(ホンマにCMやん・・・)
アイキャッチ
『正義の心で悪を討つ!!正義の従者アドル参上!!』
ウニュニュ。
満足ニャー。
手で顔を撫でるニャ。
ニャニャニャ。
クレイドルが、シャツ一枚だけを、面倒くさそうに羽織ったニャ。
「・・・オモシロイ思考が入ったぞ」
ニャ〜・・。
それは、ありがたいんだけど・・僕としてる時に、別のこと考えてたニャー・・。
ちょっと、悲しいニャ〜・・。
「いや・・『聞こえた』のは、つい先程だ」
ニャ。聞こえちゃったニャ。
でも、フォローしてくれるクレイドルは優しいニャ。
・・とか、考えてると、クレイドルはすぐ照れるニャ。
何でかニャー・・本当に、格好良くて優しいのに、そう言われると、嫌がるのニャ。
だから、言わないニャ。聞こえるけどニャ。
「・・・ふん・・・ルーが好みそうな思考だったぞ」
話を逸らしてるニャ。
「自分の手には負えないから、神頼み・・といったところか。・・・くだらん考えだ」
「どこか分かるニャ?」
「・・・少し待て」
言って、クレイドルは眼を閉じたニャ。
ふーわふーわと頭が前後に揺れてるニャ。
「・・・れ、れんしゅーしたのに・・・」
「黒い三連星ニャ!・・もっと絞り込めるかニャ?」
「・・・あの太陽を撃て・・・」
「バラン星ニャ!!分かったニャー!」
青白い顔でクレイドルは、物憂げに壁にもたれたニャ。
・・・・ニャ〜〜・・・
「切羽詰まった思考だったニャ?」
「・・・いや・・・」
「だったら・・・」
ニャ。僕は舌なめずりしたニャ。
「もう一回するニャ」
「・・・まったく・・・しょうのない猫だな・・・」
そして、ルー様に報告して、僕らはバラン星に向かったニャ。
到着するまでに、クレイドルが、もっと詳しい思念を拾ったニャ。
なんでも、バラン星は、自然の豊かな星だったのに、開発業者が入って、人工太陽を打ち上げようとしてるらしいのニャ。
それを反対している地元の勢力の誰かが、ジーア様にお祈りしたのが、思念として届いたニャ。
ルー様は、御顔を曇らせて、
「何と言うことだ・・ジーア様のお創りになった世界を改造しようとは・・」
アドルさんも、開発業者に対する怒りで、正義の炎が燃えてるニャ。
ただ・・・
シトラさんだけが
「開発業者の方の『地上げしてください』って頼みなら、金になるんだけどねぇ・・。
反対側じゃ、大した儲けにゃならないだろうねぇ・・」
って、ちょっぴり残念そうだニャ。
このNAGAYA号のエネルギーは、ルー様の御力ニャ。
だから、現金が無くても、動いてはいけるのニャけど・・・
食べ物だっているし、もっと広い船が欲しいのニャ〜!
2人乗りに7人は、やっぱり狭いのニャー!!
だから、シトラさんは貯金に励んでるニャ。
時々、シトラさんのアクセサリーになったり、ルー様シフィール様の御馳走になったりするから、なかなか貯まらないけどニャ。
僕も御馳走は好きだけどニャ。
クレイドルの誘導で、バラン星の、お願い人の近くに、NAGAYA号は降りたニャ。
下に向いた植物の森の中から、穏やかそうなお爺さんが現れたニャ。
「おぉ・・なんと、大天使様がお姿をお見せになるとは・・・長生きはするもんじゃ、うんうん」
・・・よく、一目で、ルー様の正体が分かったニャ。
「わしは、この星の神官をしておるでのぅ・・古文書の通りのお姿じゃ・・・」
・・・いつの時代の書物ニャ。
ルー様、若作りにもほどがあるニャ・・・。
そんなことは全く気にしてない様子で、ルー様は優雅に歩み寄ったニャ。
「事情は判っておるぞ。我がこの星に降りたのも、ジーア様のお導き・・・」
平伏する神官さんには見えなかっただろうけど、シトラさんが後ろでこっそり舌打ちしたニャ。
「・・・まずいねぇ・・ただ働きになりそうだよ・・・」
その時、気怠げな声がかかったニャ。
「マクイール・・・」
その名でルー様を呼ぶのは、一人だけニャ。
ルー様は、輝く笑顔で、振り返ったニャ。
「おぉ、シフィール・・珍しいこともあるものだ。この星が余程気に入ったか?」
確かに、シフィール様が、NAGAYA号から自主的に降りるのは珍しいニャ。
いつも寝てるからニャ〜。
「あぁ・・この星の大気は悪くない・・マクイール、少し、歩かないか?」
「うむ、喜んで」
神官さんが頭も上げないうちに、ルー様は、シフィール様と、森にお散歩に出かけて行ったニャ。
・・・・?
シフィール様が、こっそり後ろ手で人差し指を振ってるニャ。
僕が悩んでる横で、シトラさんの目が、きらーんって音を立てたニャ。
「さて、神官さん?」
・・・すごい、猫なで声ニャ。
「こっちもねぇ、なかなかに慈善事業ってわけにゃあいかなくてねぇ・・・」
それ、悪役のセリフニャ。
「何を言うか!!正義の行いには・・」
ほら、アドルさんが激昂したニャ。
「まだ、こいつがいたかい・・・」
「よいか、正義と慈愛をこの宇宙にしらしむべく、我々は・・・うぎゃっ!!」
「あぁ、どうしたのですか?アドル・・・」
倒れかかるアドルさんを、フィリスさんが慌てて支えたニャ。
・・・でも、見えたニャ。
フィリスさんが、アドルさんにローキックをかまして、上体が崩れた隙に、胸板にソバットが入ったニャ。
僕の、半分獣の眼をもってしても、辛うじて残像が映る程度の早さだったニャ。
さすがは、『人蹴りソバット斎』の異名を持つフィリスさんニャ。
フィリスさんは、かつて、政府の特殊暗殺部隊に身を置いていたそうなのニャ〜。
その頃のことを聞くと、とても哀しそうなのニャ。
・・・でも、ちょっぴり、そんな自分に酔ってる気も・・・
あぁっ!嘘なのニャ!!ソバットは勘弁して欲しいニャ〜〜!!
自分がフィリスさんにされたことを、全然気が付かなかったのか、アドルさんは、頭を振りながら立ち上がったニャ。
「あぁ、すまない、フィリス・・・」
「いいえ、アドル・・・具合が悪いのでしたら、船で休んでは?」
「いや!!ルー様の名代として、この私が・・・・・・くわっ!!!」
・・・・・・・今度は、延髄切りから、後頭部にかかと落としニャ。
正面に立ってたのに、さすがニャ。
地面にめり込んでいるアドルさんを引きずって、フィリスさんはNAGAYA号に戻ったニャ。
「シトラ?後はお願いね」
て、言葉を残して。
・・・この二人を敵に回したくは無いニャ〜・・・。
ルー様が、この場に戻ってきたときには、すでにシトラさんと神官さんの間で、交渉がまとまっていたニャ。
「アドルはどうした?」
「船で休んでますよ」
「そうか・・・では、後ほど、開発業者の元に向かうとしよう。正義と慈愛の鉄槌が下すとしよう・・・」
・・・正義はともかく、『慈愛の鉄槌』って、なんだか、矛盾してるニャ〜。
ところで、シフィール様はどうしたのかニャ〜。
もう、NAGAYA号に戻ったかニャ?
せっかく二人きりだったのに、こんなに早く別行動なんて、ルー様、可哀相かニャ〜・・・
・・・・あ。
ルー様、つやつや、ほこほこしてるニャ・・・・
前言撤回ニャ。
シフィール様も、大変ニャ。
身体を張って、ルー様を連れだしてくれたニャ〜。
おかげで、ちょっぴり贅沢、トップブリーダーも推薦の『ぷちぐりーちゃむ』が食べられるくらいには、礼金が入りそうなのニャ。
ニャハハハ、楽しみニャ〜〜。
さて、開発業者は、この星の衛星軌道上にいたニャ。
たぶん人工太陽になるんだろう、その衛星に、無理矢理ドッキングしたニャ。
そして、ルー様を先頭に、乗り込んだニャ。
コントロール室までに、何人かの人がいたけど、戦闘能力一般ぴーぽーな方々は僕らの敵じゃ無いのニャ。
「この辺りね」
フィリスさんの神速の蹴りが、配電盤の入った壁を壊したニャ。
すかさずシトラさんが水をぶっかけて、完璧にスパークさせたニャ。
アドルさんが、人力で、コントロール室の扉を開いたニャ。
「な、なんなのよ〜、あんた達!!」
「いけませんねぇ、これは、不法侵入ですよ?」
気の強そうな女の子と、生意気な口を叩く男の子が、こっちを向いたニャ。
ふっと、ルー様が慈愛の笑みを浮かべたニャ。
「天呼ぶ、地呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと我を呼ぶ!・・・大天使ルー、まかり通る!!」
アドルさんもその後ろから、ずいっと胸を反らせたニャ。
「恐れず、怯まず、退かず!勇気だ、闘志だ、友情だ!!・・正義の従者アドル参上!!」
あぁあ。
もう、この会社は終わりニャ。
「どうしましょう、どうしましょう」
おろおろする女の子が、扉に向かってくるのを、僕は押しとどめたニャ。
「大丈夫ニャ〜。ルー様、暴力は振るわないニャ〜。・・・頑張って、耐えるニャ」
「・・・耐える?」
そのコントロール室に、衛星にいた全員が集められたニャ。
おもむろに、ルー様が口を開いたニャ。
「良いか?そもそも、この宇宙をお創りになったジーア様は・・・」
はぁ・・・これが始まると長いニャ。
アドルさんは、部屋から脱走する人がいないように、眼を光らせてるニャ。
シトラさんとフィリスさんは、うまいこと逃げたニャ。
しょうがないから僕は、体育座りをして、ルー様のありがたーいお話を聞いたニャ。
・・・・・・いつの間にか、寝てたニャ。
時計を見ると、もう、15時間が経過していたニャ。
「・・・かくして、ジーア様の御心は、この世界に満ち満ちて・・・」
まだ、序盤だったニャ。
それから、3日が経過したニャ。
NAGAYA号でごろごろしてたら、ルー様とアドルさんが戻ってきたニャ。
「うむ・・・力など使わずとも、道理を説き進めれば、人は心を改める・・・愛しき存在だな・・・」
「これも、ルー様の御心があってこそです!!」
にっこり笑って、ルー様は、僕らを見回したニャ。
「あの者達は、ジーア様の御心に沿い、この星の開発を断念した。善哉善哉」
「そりゃあ、ようござんした」
シトラさんが、優雅に羽扇をはためかせたニャ。
顔半分は隠してるけど、苦笑いしてるのは、僕の角度からは丸見えニャ〜。
気持ちは分かるニャ。
僕だって、ルー様奥義『説教地獄』にあったら、何でも受け入れそうニャ。
「それじゃあ、行くとしますかねぇ」
そう言って、シトラさんは、NAGAYA号の行き先をアドルさんに告げた。
どこか、行く当てがあるのニャ?
「ちょいと、野暮用があってねぇ」
その何とか言う星に着いて、数日後。
銀河TVで、『フェアリー建設』本社ビルが、何者かによって破壊されたってニュースが流れたニャ。
ビルは、完膚無きまでに灰燼と化し、ついでに、水浸しになって、データも全部いかれちゃっととか。
『フェアリー建設』は、各地で強引な地上げや環境破壊をしていたため、それに対して恨みを持っていた者か、過激な環境保護グループの仕業ではないかと、当局は見ている、とか。
アドルさんは、
「この『フェアリー建設』は、先日、ルー様のご光臨を拝した者達の会社ではないか?・・・うむ、悪とは、やはり栄えることは無いのだな・・」
て、納得してたけど、ルー様は、
「アドル・・・『悪』と決めつけてはならない。彼らは少しばかり、ジーア様の御心を忘れてしまっただけなのだから。我らは、そのような者達に、ジーア様の御心を思い出させるべくこの宇宙を駆けているのではないか?」
て窘めたニャ。
アドルさんは、床にひれ伏して、感涙にむせんでいるニャ。
この二人は、置いといて。
僕は、テラスでお茶を飲んでる二人に、焼き菓子を持っていったニャ。
「ご苦労様なのニャ〜」
「何のことだい?リアム・・・」
「そうね、何のことだか、判らないわね・・・リアム、そのマフィンを頂戴」
二人が、わかんないって言うなら、それで良いニャ。
いかにも応接室に飾ってそうな、壺や絵画を、二人が売りさばいていたように見えたのも、気のせいニャ。
僕は、シトラさんの入れてくれたお茶を飲みながら、『ぷちぐりーちゃむ』に舌鼓を打ったニャ。
ルー様とアドルさんは、正義を実行し、僕らは、ちょっぴりその代金をジーア様から頂いたニャ。
これで、良いのニャ。