最強無敵の主人公

 

   LIAM  SIDE

 いつから好きだったか、なんて聞かれたら
 そんなことは、わからないって答えるだろうけど
 でも、多分、きっと、最初から好き

 天使さんや悪魔さん達に初めて会った日
 なんだか凄いことを言われたようで、パニックになっていた
 やっと、皆さんいなくなって、緊張が解けた瞬間に、あなたが声をかけた
 (そういうのって、ずるいと思う)
 だから、最初から、あなたが一番印象的

 皆さんが自己紹介をしてくれた日
 僕は、ひたすらにこにこ笑って「頑張ります」って言ってたのに
 夕方に来たあなただけが、不愉快そうな顔をした
 なんだか、見透かされたようで、ぎょっとした
 (そういうのって、ずるいと思う)
 だから、2日目も、あなたが一番印象的

 あなたって、会えば会うほど、訳が分からない
 僕は、あなたからいろいろな話を聞いてみたいのに
 「うるさい子供は嫌いだ」って、とりつく島もない
 僕は、あなたに笑って欲しいのに
 あなたと来たら、睨み付けるばかり
 (本当にあなたにグラウメリーの魅惑って作用してるの?)
 メーラの葉とウィルの葉ばかり調合してたら
 意味が分かってるのかって怒られちゃった
 どうしたら、あなたに笑ってもらえるのかなぁ

 あなたって、本当に、訳が分からない
 笑ってくれたかと思うと、バカにされてるんだったり
 睨み付けられたと思ったら、ゴキゲンだったり
 あなたのことが不思議だから、考えてるのはあなたのことばかり
 もう知らないよ、どうなっても
 瓶の中身は、半分以上がメーラとウィルの葉だからね
 「グラウメリーの魅惑が俺に向いている」?
 (当たり前だよ、そうしてるんだから)
 笑ってくれない、あなたのせいだからね

 あなたって、早朝の光が似合わないよね
 あなたって、早朝の光が嫌いだよね
 なのに、何故、朝一番に来てくれるのかなぁ
 朝一番に、目が覚めるでしょ
 それで、まず考えるのは、もうすぐ会えるあなたのこと
 あなたが帰っちゃうでしょ
 それで、次に考えるのは、翌日あなたが来てくれること
 (僕ってやっぱり、妙な子供?)
 ・・おかしいな、僕は、ただ
 あなたに笑って欲しいだけだったのに
 あなたに笑って欲しいだけだったはずなのに

 あなたの笑顔以外もいろいろ見たい
 あなたに睨まれるのも楽しいなんて
 自分でもなんだか、信じられない
 (僕ってやっぱり、妙な子供?)
 「俺以外の奴に気をつけろ」って言われたとき
 「皆さん、よくしてくれますよ」って答えてみたら
 もの凄い目で見られちゃった
 だって、それって、なんだか嬉しい
 僕のことを心配してくれてるんでしょ?
 
 あなたが好き
 多分、きっと、最初から好き
 今の僕の、たった一つの望みは
 あなたと一緒にいること
 あなたとずっと一緒にいられたらいいのに
 願ってるのが、一つだけなんだから
 叶えられなきゃ、嘘だよね
 (お願いです、ジーア様)
 あなたと一緒にいられたら
 多分、きっと、僕は、最強無敵
 絶対、幸せになる自信があるんだけど
 力ずくでも、幸せになってみせるんだけど

    

   CLAYDLE  SIDE

 いつから好きだったかと聞かれたら
 馬鹿なことを聞くと、一笑に伏すだろう
 (そもそも、俺は、あの子供が「好き」なのだろうか?)

 くだらない魅惑の呪術がかかった香水瓶
 この子供の祖父母、そのまた祖父母より遙か前の世代より
 醸造されたはずのグラウメリー
 つまらない物だが、天使も悪魔も、手に入れようと躍起になった
 (ふん・・くだらん)
 何の力もない、ちっぽけな存在が手に入れたと知って
 多少、興味が湧いてくる

 戦いに臨めば、血管が収縮し、血が流れにくくなる
 姿を見るだけで、心が高揚するのは
 それと同じ、ただのカガクハンノウ
 妖精風情が作った魅惑の呪術など、その程度の物
 (この俺が、そんなものに惑わされるものか)
 その作用を見極めることが出来るのだから
 そんなものが、俺に効くはずがない

 まず、容姿が好みじゃない
 (晴れた空の色の瞳?陽光のような髪の色?)
 年齢が好みじゃない
 (こんな子供に振り回されてたまるものか)
 かしましく、話しかけてくる子供は好みじゃない
 (「好奇心、猫を殺す」と言う言葉を知らないのか?)
 表情も気に入らない
 (目まぐるしいほどに表情の変わる奴だ)
 いくら魅惑を纏っていても、お前如きに惹かれる訳がない

 お前は、俺が訪れると、嬉しそうに招き入れる
 話が弾むと、目を丸くして続きをせがむ
 去るときには、名残惜しそうにする
 いつからだろうか
 それが心地よいと感じ始めたのは
 いつからだろうか
 俺一人に向けられたものではないことに気付いたのは
 書き込まれたノートのページは、8人分の話題
 他の誰とでも、話は弾んでいる
 他の誰にでも、お前は名残を惜しんでいる
 早朝にお前を訪れるようにしたのは
 お前が、他の誰かに言う「また、来て下さいね」を聞きたくないから
 (我ながら、くだらない)

 お前が笑う
 (俺に。それは、とても快い)
 お前が笑う
 (他の誰かに。それは、とても腹立たしい)

 俺は、お前が好きなわけではない
 俺はただ、お前が他の男の物になるのは
 気に入らないだけ
 お前は、俺だけを見ていればいい
 お前は、俺だけに笑いかければいい
 お前は、俺の物だ
 ただ、それだけ 
 ただ、それだけのこと
 

         




  あとがき
 
 言いたいことは、山ほどあろうが、代表して、一言
 「リアムよ、それは小学生の「好き」だ」
 「クレイドル様、それは、「好き」ということです」
 ・・というわけで、うちのクレ×リアムの基本姿勢は、「「好き」というのを誤解しているカップル」のようです。しくしく・・ごめんよ・・。
 一応「夜、来たる」のプロローグに当たります。
 なお、設定上は、リアムは天使・悪魔と大体まんべんなく仲良く(2枚目イベントまで)、クレイドル様のみ3枚目までで一歩リードという状況です。日数は約50日目。ま、私の一番最初のプレイって事なんですけどね。2番手はアドル、3番手ナデュー、シトラあたりで、後はごっちゃ。クレイドル様1本狙いでしたから(笑)。


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