「お帰りなさい、しーちゃん!」 ドアを開けるなりパタパタと駆け寄ってきた龍麻が飛びついた。それをしっかりと抱き留めながら、村雨が笑う。 「遅くなって悪かったな」 「ううん。そんなこと無いよ。ね、しーちゃん。今日が何の日かわかる?」 「クリスマスだろ?プレゼントは明日好きなの買ってやるよ」 龍麻の柔らかい黒髪を梳きながら言えば、龍麻が村雨に強くしがみついた。そして心底嬉しそうに笑う。 「ありがと、しーちゃんv僕からのプレゼントはケーキ食べてからね?葵ちゃんとくーちゃんに手伝ってもらって作ったの!」 「くーちゃん?…ああ、壬生のことか。あいつ、料理も出来るのか?」 手芸部だと言うことは噂に聞いてはいたが、まさか料理まで出来るとは思ってもいなかった。きっと、立派な主夫になるだろうな…などと妙なことを考えていたら、龍麻が不意に手を引いた。 「くーちゃんのご飯は美味しいよ?…ねぇ、それよりも早く行こうよ」 早く早くと急かす龍麻に苦笑しつつ村雨が従い、リビングのドアを開けた。リビングはいつもと全く様子を変えていて、驚く村雨を迎え入れる。 「…すげぇな…」 呆然とつぶやく村雨の気持ちが良くわかるほど、綺麗で幻想的な光景。 閉め切られたカーテンの上にはキラキラ光るモールや、アルミ箔で作られた星が煌めき。その下には小さいながらも立派なツリーがたてられ、壁には手作りと思われるリースがかかっている。 ナイトランプに照らされたテーブルの上には生クリームたっぷりのクリスマスケーキに色とりどりの果物。クリスマス用に飾られたシャンパンに何故かある高級ワイン。そして、美味しそうな香りのする香草焼き。付け合わせにしては豪華なサラダは村雨の好みで。 「えへへ。飾り付けとケーキは手伝ってもらったけど、他のは僕が作ったんだv」 龍麻は照れくさそうに笑い、村雨の腕を掴むと、自分の隣へと座らせる。 「お腹空いちゃった。早く食べよ?」 「そうだな。先生が腕を奮ってくれた手料理だ。冷めないうちに食わなきゃな」 いただきますと行儀良く手を合わせてから、2人は料理に手をつけた。料理はどれも絶品で、龍麻の愛情を感じさせるものばかりだ。 ようやく空腹の満たされた村雨は上等なワインに舌鼓をうち、龍麻はせっせとケーキを口に運ぶ。 「しーちゃんはケーキ食べないの?」 「甘いんだろ?」 フォークに刺したままのケーキを口へ運ぶ途中で止め、龍麻が訊く。その無邪気な様子に苦笑しながら村雨が言えば、龍麻がむくれつつ言葉を紡いだ。 「むー。美味しいのに…」 村雨が甘いものが苦手なのは知っているが、それでも丹誠こめて作ったものだ。一口で良いから食べて欲しい。 「じゃあさ、しーちゃん。どうしたら食べてくれる?」 「どうしたらって…」 どうと言われても困る。別に龍麻が作ったケーキだから食べないんじゃなくて、基本的に甘いもの全般は食べたくないからだ。 「僕が食べさせてあげたら食べてくれる?」 「……………」 じっと自分を見つめる龍麻にどう答えようかと迷っていると、龍麻が唇を尖らせた。どうやら煮え切らない村雨にしびれを切らしたらしい。 「もういいもん。ケーキの代わりに、別なの食べてもらうから」 「先生?」 食べかけのケーキを残したままどこかへ行く龍麻に、村雨が声を上げた。だが龍麻が戻る気配はなく、そのまま隣の部屋へ消えた。 何も言わずに言ってしまった龍麻を見送りながら、村雨は溜息をついてワインを飲みほすのだった。 「しーちゃん、お待たせ」 「!!??」 十分ほどして戻ってきた龍麻の姿に、村雨は思いきりワインにむせる。身を折って苦しそうに咳き込む村雨に、龍麻が焦って走り寄った。 「しーちゃん大丈夫!?」 村雨の背中を一生懸命さすると、ようやく落ち着いたのか村雨がわずかに掠れた声で問う。 「先生、その格好…」 村雨がむせる原因となった龍麻の格好は、別に変な格好だったわけではない。少なくとも、龍麻は極普通の態度だ。 「これ?亜里沙ちゃんがくれたの」 龍麻が来ているのは真っ赤なツーピース。胸元とスカートの裾にふわふわのファー が施してある、いわゆる「サンタクロース」の服だ。 「可愛い?」 にっこりと笑って無邪気に尋ねる龍麻になんと答えればいいのだろう。 結果だけを言えば似合いすぎるほど似合っているのだ。白いナマ足がまぶしいミニのふわふわスカートも、肩とへそが見える真っ赤な上着も。本当に男なのか?と疑いたくなるような愛らしさ。けれどここで肯定すれば間違いなく龍麻は抱きついてくる だろう。その時、村雨は理性を押さえられる自信がなかった。 「しーちゃん?」 「…あー……なぁ、先生。何で着替えてきたんだ?」 微妙に話題を逸らすと、龍麻がきょとんとした顔で首を傾げる。そして何でもないような口調でさらりと言った。 「うん?しーちゃんがケーキ食べてくれないから、別なの食べてって言ったでしょ?」 その別なのって言うのは、もしかして…? 嬉しいような困ったような顔で龍麻を見れば、龍麻がにっこりと笑う。そのまま村雨の膝の上にまたがり、村雨の首に手を回した。 「だからぁ」 きわどいラインを見せつける白い太股に視線がいきそうになり、慌ててそらすと、龍麻の顔が何故か急接近している。ほんのわずかにのけぞると、それを許さないとでも言うように龍麻がぎゅっと村雨を引き寄せた。 「ぷれぜんと。…食べてくれる?」 村雨の耳元で可愛らしい声でささやく龍麻。恋人にそこまで言われて理性の崩れない男はいないだろう。その例に漏れず、村雨の理性も砂と化し、勢いにまかせて龍麻に口付けた。 「ん…ぁ…」 後頭部に片手を添え、思うままに甘い蜜を味わう村雨。そのキスに酔っている龍麻の上着に手を差し入れ、まだ存在の希薄な飾りに指をかけた。 「あッ…んっ!」 龍麻の胸の飾りを転がしたりつねったりすれば敢えなく息が上がる。その上気した頬を舐めながら、耳朶を食んだ。 「気持ちイイか?」 「あぁっ!ン、い、いッ」 耳の中に舌を差し入れ嬲れば、甘やかな声が絶え間なくこぼれ落ちる。その声に村雨がすっと目を細め、胸をいじっていた指を離した。 「やっ!」 かすめるようにして離された指におもわず龍麻が声を上げる。その不満の声に村雨がニヤリと笑い、真っ赤になった龍麻にささやいた。 「指と口、どっちがいい?」 「そんなことッ……きか…な、でぇ」 耳元にかかると息がくすぐったいのか龍麻が首をすくめ、何かをこらえるような顔で言う。だが村雨は耳朶を嬲るばかりで龍麻が欲しているところには触れようとはしなかった。 「言わなきゃこのままだぜ?」 「やぁだぁ…ッ!…しーちゃ、…んっ!……両、方が、いい…」 とうとう観念したのか龍麻が赤い顔をさらに赤く染めて求める。その答えに満足したのか、村雨は最後の仕上げとばかりに龍麻の首筋に赤い花を咲かせ、膝の上に座る龍麻をソファに押し倒した。そのまま上着をぐいっと引き上げれば、真っ赤に熟した果実が見える。 「せっかく先生が作ってくれたケーキだしな。食わなきゃバチが当たるか…」 とろんとした眼差しで自分を見る龍麻にニヤリと笑いかけ、生クリームをたっぷりと指にすくい取った。そのまま擦りあげるように突起に塗りたくれば、龍麻の身体がびくりと震える。 「んぅ…っ…あぁんんッ…しーちゃ…あぁっ!」 ピチャピチャとわざと音をたてて生クリームごと突起を舐める村雨。その頭を抱え込むようにして龍麻が甘く啼き、村雨の手は執拗にソコを這いまわった。 「アァッ!ね、ソコばっかじゃ…ん、ゃぁ…」 「それじゃあどこにナニをして欲しいんだ?言わなきゃわかんねぇぜ?」 「ン、しーちゃんの…ふっ、じわるぅ…」 龍麻がいやいやするように頭を振り、さらに強く村雨の頭を抱え込む。その甘えるような行為に村雨が喉の奥で笑えば、微かな振動に龍麻がのけぞった。 「龍麻?」 「……あのね、んっ、ココ、触って…」 とうとう乳首への愛撫も止めてしまった村雨に龍麻が泣きながら訴える。そんな龍麻に村雨が至極嬉しそうに笑い、すっと手を移動させた。 「ココか?」 するりとスカートの中に手を入れれば、ソコにはすでに高ぶったモノ。そんな浅ましい自分に身体ごと赤く染め、龍麻が微かに首を振る。 「……ところで先生。1つ訊きたいんだが。…なんで下着はいてねぇんだ?」 「え…?…亜里沙、ちゃんが…はくなって…。そっちのが…しーちゃんが喜ぶか ら…って…」 小休憩に入った村雨の愛撫に息をつきながら、龍麻が答えた。その答えに村雨が苦笑を浮かべ、龍麻が急に不安そうな顔になる。 「しーちゃん…怒った…?」 今にも泣き出しそうな顔で龍麻が言えば、村雨がニヤリと笑う。 「そんなことねぇよ。むしろ、藤崎の姐さんに感謝してぇくらいだな」 アンタの可愛い顔が見れて、な わざわざ耳元でささやきを落とす村雨に龍麻が前進を赤く染め、ぷいっと顔をそらした。そんな龍麻に笑いを漏らし、唐突に手を動かす村雨。 「やあああああっ!ふ、んッ…ああん、ふ、ぁぁっ」 精一杯目を見開いた瞳から快楽の涙をこぼしながら龍麻の嬌声が響いた。それに目を細めつつ、村雨が意地悪く問いかける。 「イキてぇか、先生?」 「はっアアッ!…んぅも…やぁッ」 龍麻がいやいやと首を振り、許してくれと懇願する。だが村雨は一向に龍麻をイカせようとする気配は見えず、逆にその根本を戒めた。 「ッしーちゃんっ!?」 なんでと戸惑いの色を見せる龍麻に村雨はニヤリと笑い、シャンパンを飾り立てていたリボンを手に取った。それをするりと龍麻自身に結びつければ、龍麻の顔がクシャリと歪む。 「もっと乱れるよ」 吐息を耳の中に吹き込みながら、村雨は生クリームをすくい取った。そして、大きく割り開いた龍麻の足の奥に指を差し入れる。 「あああああああっ!ん、ふッやぁぁッ!」 「アンタ、ホントに甘いものが好きだな。ココももっとくれってはなさねぇぜ」 「やぁだっ!…んっ、しーちゃ、んッも、はずしてぇ…ッふっ、ヘンにな、るぅ…」 いやいやと首を振りながら震える指でソコを探る龍麻。だが村雨はその手を頭上で軽くひとまとめにし、さらに龍麻の奥を探る。 「そんなに我慢できねぇのか?」 「ンンっあ、やぁ……ふ、ッ」 村雨の問いかけにすら答えられないほど龍麻は崩れ、ただただ意味のない喘ぎ声を漏らすばかり。村雨は仕方がないとばかりに微苦笑を漏らし、勢いよく指を引き抜いた。 「ぃやあああぁっ!」 本当なら指を引き抜く衝撃だけでイッてしまそうなところをリボンに阻まれ、龍麻は掠れた声で啼く。その甘い声に触発されたかのように村雨は性急にズボンの前をくつろげると、これ以上ないと言うほど龍麻の足を広げた。龍麻の先走りと生クリームでべとべとになってるソコに熱くなったモノを押し当て、一気に貫いた。 「──────ッ!!」 猛った村雨が押し入ってくる感覚に声なき声をあげ、龍麻が背をのけぞらせる。それを支えながら村雨が腰を使えば、龍麻の口から間断なく甘い声が漏れた。 「ッああ…んぅ……はぁ、ンッ」 「イイか…?」 「んんっイ、イッ!…あ、ねぇ…ッもぅ…あぁぁっ」 かくかくと人形のように揺れる龍麻の白い脚。それをかすんだ意識の中で見ながら、龍麻は村雨に抱きついた。村雨も龍麻をしっかりと抱きしめ返し、その耳元にささやく。 「愛してる。アンタだけを…」 「んっあぁっ、しーちゃ、んっす、きぃ…」 無意識に村雨の愛の告白に答えれば、村雨が心底嬉しそうな顔で笑った。そして白い密で汚れたリボンに手をかけ、すっと引き抜く。 「ああああああっ!」 リボンが外されると同時に龍麻が達し、村雨も龍麻の最奥で情欲を放った。そのままずるりと音をたてて村雨が抜け出る頃には、龍麻の意識は完全にブラックアウトしていて。 「…ヤリすぎたか…?」 クリームと村雨のモノと龍麻自身のモノでべとべとになった恋人。けれど、その天使のようなあどけない表情に、村雨はまた躯の奥が熱くなるのを感じるのであった。 翌日。昨夜の後遺症で結局動けなくなった龍麻は、クリスマスプレゼントを買ってきてもらうように村雨に頼んだ。けれど、そのプレゼントの内容に顔を引きつらせた 村雨が、なだめるように言う。 「明日、一緒に買いに行かねぇか…?」 「だめー。だってしーちゃん、どうせ今夜も僕にエッチなコトするんでしょう?」 「…………」 さりげなく鋭い龍麻に何も言えず、村雨は渋々承諾した。そして、すぐに帰ってくると言い残し、コートを羽織っただけの軽装で家を出る。 果たして、1時間後に帰ってきた村雨が持っていたものは…。 「わぁっ!僕ね、これずーーーっと欲しかったのっvしーちゃん、ありがとうv」 ぎゅっと龍麻が抱きしめるのは村雨ではなく、かなりの大きさのテディ・ベア。その愛らしい瞳が、今は恨めしい村雨である。 「……そりゃ、よかった…」 素直に喜べないのはつい先ほどの出来事を思い出してのことか。 想像してみては如何か。いかにも女の子達が喜びそうなファンシーショップで、黒いコートを羽織った年齢不詳の男が、よりにもよって可愛らしい大きなテディ・ベアのぬいぐるみを買っている図を。かなりの怪しさである。 「……やっぱり先生といった方が良かったか…」 ぼそりとつぶやいた村雨の言葉は、幸か不幸か龍麻には聞こえなかったのであった…。 |
謝辞 綾月さまのサイト『星月夜』にて1001(1000のニアピン)を踏んで、頂いた「生クリームネタ」です。 元はと言えば、私のヘボい綾月さま誕生日祝いの絵が生クリームネタだったと言う・・。 それが、こんなに可愛いエロい物になって帰ってきて、よくぞここまで育って帰ってきたね、というか、棚ぼたラッキーというか。 綾月様、ありがとう御座いましたvv |