プレゼント?


 久々の恋人との逢瀬。

 暫く村雨は護衛の仕事が詰まっていて、恋人の龍麻に寂しい思いをさせてしまった。
 それでも仕事自体は気が抜けないので、ゆっくりと彼の事を考えている余裕もない。
 いままではこれが自分の役目なのだと、これ以上の役職などないと思っていた村雨だったが、大事な姫君であったはずの薫と一緒の時でさえなんと物足りない事か。
 そう思うのは薫にとって失礼極まりないのだが、いかんせん今の村雨にとって龍麻の存在はそれだけ大きい訳で。

 ともあれ、やっと仕事から解放された村雨は、足取りも軽く龍麻宅へ訪れたのだが。



「………せんせ、こりゃ何だ?」

 リビングにある座卓の中央には、如何にも『プレゼントですv』という風にラッピングされた箱が置いてあった。
 無論村雨に、という訳ではないだろう。
 何故なら、ダークレッドのリボンの間に『龍麻へ』と書かれたカードが挟まっていたからだ。
 久し振りに逢った恋人にこんなプレゼントが贈られているのを見ると、非常に気分が悪い。
 自然、村雨の声はトーンが低くなっていた。
「ええ?……ああそれ?何だか知らないけど亜里沙ちゃんがくれたんだ。誕生日じゃないよって言ったんだけど、一人で寂しかったら使えとか何とか…何なんだろうね」
 キッチンに立っている龍麻は、忙しいのか言葉のみを投げて寄越す。
 亜里沙と聞いて村雨の脳裏にはおよそ高校生にそぐわない色気を醸し出す少女が浮かんだ。
 内面のナイーブさより外見の派手さの方が最近の彼女のイメージに合って来ている為、やはり村雨の胸には不安が過る。

 藤咲の姐さんか…何だか嫌な予感がするなぁ…

 見る限りまだ1度も解かれていないであろうラッピングに安堵しつつも、手に取った。
 20cm四方の箱は、その大きさの割に随分と軽い。
 とするとケーキやクッキーという菓子関係ではないだろう。
 振ってみるが、カサカサという小さな音が聞こえるだけだ。
「…気になるなら開けてみていいよ」
 食事を用意しながら、念入りに箱を吟味している村雨を見た龍麻は苦笑した。
 本来なら、たとえどんなものであれプレゼントを貰った本人以外が開けてみるのは失礼というものだ。
 だが内心でしきりに警鐘の鳴る村雨は、生返事で箱をソファに置く。後で龍麻が見ていない時にこっそり開けてみようと思いつつ…。


 だが、そんな事も龍麻と一緒に食事をし、風呂で汗を流してちびちびと酒を酌み交わす頃にはすっかり忘れてしまっていた。
 龍麻本人でさえ忘れてしまっているらしく、一切プレゼントの話題に触れないばかりか村雨とも久し振りに逢うせいでいつもより密着度が高い。
 酒でほんのり上気した頬で可愛らしく『こてっ』と村雨の肩に頭を乗せて来られたりすると、ただでさえ少ない村雨の理性などが持つはずもなく。
 くいっと顎を持ち上げて形の良い唇に振れようとした矢先、思い出したように龍麻が小さく声を上げた。
「何だよ……無粋だな」
「んん…ごめん、熱燗がそのままだったから…ちょっと取って来るね」
 言われてみれば、キッチンから激しく湯の沸く音がする。さすがにそのままにしておく訳にもいかず、不承不承腕の中から龍麻を解放した村雨は、ふとソファに置きっぱなしになっている箱に目が止まった。

 おっと…そういやこんなモノがあったな…

 酒に酔った頭でぼんやりとしながら、何気なくそれを手にして『龍麻のモノは俺のモノ』と言わんばかりに躊躇いもせずリボンを解く。
 予想以上に徳利が熱くなっているのか中々キッチンから龍麻が戻らないのを良い事にその箱を開けた村雨は、中に入っているものを目にした途端、一気に酔いが冷めた。
「あちち…お待たせー」
 龍麻の声に飛びあがりつつも、咄嗟に箱を後ろ手に隠す。幸い、盆に気を取られている龍麻には気付かれなかったようだ。
 冷や汗を拭いつつも龍麻の持ってきた熱燗を煽るが、やはりどうしても酔えそうにない。

 龍麻がその場で開けてなくて本当に良かった…

 思わず神に感謝する村雨だった。
 箱の中になにが入っていたのか。
 勿論きちんと確かめた訳ではないのではっきりした事は言えないが、中にはプラスチックのようなモノで出来た楕円状の物体──いわゆる『ローター』が入っていたのだ。
 藤咲の言っていた『一人で寂しかったら』という意味が漸く分かった。
 しかしなぜそれでローターなのか不思議なのだが、公表していないとは言え村雨と龍麻は仲間内では公認のカップル(一部認めていない輩は居るが)だ。体格の良い村雨相手の龍麻がどんな役割か、自然と分かろうというものである。
 だが、暫く酒を煽って落ちついてみるとやはり気分が悪い。

 姐さん…、俺に慣れてる先生があんなモンで満足する訳がねぇだろう。

 ……何処か、ズレている村雨だった。
 そしてズレたまま、それを証明してみようという悪戯心が湧く。
 落ちついたお蔭で酔いも気持ち良いほどに回り、それ以上に酔いの回っている龍麻を抱き上げて膝に乗せ見詰めると、引き寄せられるように唇を合わせて来た。
 普段の龍麻は全てを村雨に任せて受身に回るが、本日はさすがに積極的である。
 貪欲に村雨へ舌を絡め、無意識だろうが腰を押し付けてくる。
「ん…ふぅ……」
 長いキスの後名残惜しげに唇を離すと、龍麻は村雨の額にこつんと自分の額を合わせ、言いにくそうに小さい声で呟いた。
「お仕事だって…分かってるけど……寂しかった」
 可愛い事を言う。
「俺も寂しかったぜ…」
 囁くように返し、村雨は龍麻をソファに横たわらせた。感覚に浸るように目を閉じた龍麻へ啄むようなキスを繰り返し、シャツの中に手を忍ばせる。
「俺の感触は忘れてないだろうな…?」
「………ばか……あっ……」
 小さな胸の飾りを指で転がし、小さく身を捩った龍麻の服を手際良く脱がして行く。
 慣れるほど触れているとはいえやはり極上の手触りに、思わず笑みが浮かぶ村雨だった。
「…ぁっ…!」
 雫を滴らせてひくついているそこを掠め、村雨の指が奥まった場所を撫でると、衝撃を予想してか龍麻の身体が強張った。
 間が空くと強くお互いを求める反面、こういう所で躊躇いが出る。
 苦笑しながらも愛しさが込み上げ、村雨は胸の突起を啄んでいた唇をそこへ移動させた。
「っ……ひ……ぁあっ……くぅ…ん…」
 舌を挿し入れると待っていたように襞が絡みついてくる。秘部が一番良く見えるように足を折り曲げ、わざと音を立てて舐め回した。
「あ……しこぅ……も……ああんっ……もぉ……」
 鼻に掛かった声で腰を揺らめかせて強請られ、村雨は内襞を引っ掻くように舌を抜きながら、こっそりとソファの脇へ手を伸ばす。
「ちゃんと俺のを覚えているかな…?」
 言いながら手に取ったモノ──藤咲からのプレゼント──の先端を潜り込ませた。
「……ぇ…っ…な……やあんっ!!」
 直ぐに押し当てられたモノの異変に気付いた龍麻が半身を起こすと同時に、ローターがずぶりと中へ押し込まれる。
 小さく滑りのよい形をしている為、殆ど抵抗もなく全て飲み込まれたのを確認し、村雨は困惑の表情を浮かべている龍麻へキスをしながら、再びソファへ押し倒した。
「ねぇ…祇孔…何?……何を…」
「ん?…あんたが俺を忘れていないか試してみたのさ。…やっぱり忘れる訳はねぇけどな、せっかくだから…」
 異物感に幾分理性を取り戻した龍麻を眺めながら、村雨は手に持っていたローターのスイッチを入れる。
「っひゃ…ぁあああっ!!…な、やあぁっ……なん……ああぁぁああっ……!」
 指や村雨のように、中を掻き回すように出し入れされる感覚ではなく、止む事のない振動が身体の内で繰り出される未知の感覚。
 漸く龍麻は自分が何をされたのか悟った。
「ああっ……祇孔ぉ……ぬ…ぁんっ……抜いてっ……いや…そんなのっ……あああっ…」
 しきりに首を振って抗議するが、熱を持った身体は意志とは関係なく高みを目指す。
 少ーし可哀想に思いながらも、村雨は恋人の恥態に生唾を飲み込んだ。
 身を起こして再び龍麻の足を抱え上げる。
 今にもはちきれそうにひくついて雫を流す龍麻自身と、そこから溢れた蜜で濡れ光る秘部。
 収縮を繰り返すそこからコードが伸びている様が何とも言えず卑猥であった。
「へぇ……そんなのでも感じるもんなんだな」
 村雨の言葉に、龍麻がびくりと反応する。恋人のものでなく、いやらしい機械によってそうなってしまった自分が恥ずかしいのか、泣きそうな顔で首を振った。
「ちが…こんな……やぁ……やだあっ……ぅんんっ…」
「何で?……気持ちイイんだろ」
 俺じゃなくてもな、と村雨はローターの出力を最大まで上げる。
 途端、喉の奥で声を引き攣らせ、龍麻は欲望を解き放った。だが、体内の異物はまだ振動を続けたままで。
「……ふ……ぅあ…も……ゆるして……祇孔ぉ……」
 まるで虐められているような仕打ちに、とうとう龍麻が泣き出した。
 最初の目的をとうに見失っている村雨は、しゃくりあげる龍麻を抱き起こすと優しくキスを贈る。
「虐めてるんじゃねぇよ…そうだな、許して欲しかったら、まず俺を宥めてやってくれねぇか?」
 向かい合っている龍麻の足を割って身体をその下へ滑り込ませ、村雨はゆっくりとソファに寝そべった。
 中のモノによってまたも息が上がってきた龍麻は、言われるままに村雨の足元へ身体を移動させる。
「それじゃキツイだろ、そうじゃねぇよ……足をこっちに向けてみな」
 躊躇いながらも恥ずかしい部分を晒す格好で、龍麻は猛る村雨へ舌を這わせた。
 ただただ早く解放されたくて、無心で村雨へ奉仕する。
「良い子だ…随分上手くなったじゃねぇか」
 龍麻の腰を引き寄せ、目の前で揺れる龍麻自身に息を吹きかけるように呟くと、コードを飲み込んだそこがきゅっと締まる。
 それを眺めながら、村雨も龍麻を口に含んだ。
「んっ……んっ……ふ……んくっ……んっ…んんっ……」
 口一杯に村雨を頬張りつつ喘ぎを漏らすものだから、視覚的作用も相まって村雨は急速に上り詰める。
 達する瞬間、口の中の龍麻を強く吸うと、そっちもあっけなく弾けた。
「うっ……けほっ……ご…ごめ…」
 タマッていたせいか、勢い良く迸ったモノで龍麻は咽返ってしまい、潤んだ瞳で縋るように村雨を見る。
 残骸がこびり付いた悩ましげな表情で見詰められ、節操も無く元気を取り戻す自身に苦笑しながらも、
「……どうして欲しい?」
 村雨は敢えて龍麻に決断を委ねる。
 ……答えは決まっているだろうに。
 唇を噛んで、龍麻は自ら足を開き、再度村雨へ懇願した。
「これ…取って……ぃや…だよぉ……こんなの……祇孔じゃないの……いや……」
「俺が良いか?」
「祇孔がいい…ッ」
 村雨とてそろそろ限界である。
「ひゃあんっ…」
 粘質の卑猥な音を立ててローターを引き抜くと、龍麻の身体がぶるっと震えた。
 そのまま口を開けているそこへ自身を咥え込ませる。
 待ち望んでいた刺激に、内襞はうねって絡みつき、引き込むように締め上げた。
 一旦全てを埋め込んだ後、絡みつく内襞に逆らうように限界まで引き抜き、再び最奥目掛けて突き上げる。
「あっ……あ……ぁあっ……ん…ああっ……あぁああっ…」
 激しい律動に、今までとは明らかに違う恍惚とした表情を浮べる龍麻。
 それに満足しつつ、村雨は今だスイッチの入ったままになっているローターを、龍麻自身と一緒に握り込んだ。
「ひゃっ……あああんっ……だめっ……ああっ…」
 一番イイところを抉りつつ、龍麻の裏筋から先端の窪みにかけてローターを押しつける。
 村雨の首に手を回し、衝撃に耐えながら龍麻は尚も貪欲に彼を飲み込んだ。

 もっと…もっと俺を求めろ…

 いくら触れても飽き足らない身体は、どこまで自分を縛り付けるのだろう。
 いくら与えられても物足りない愛情を、どこまで欲したら良いのだろう…。

 お互いにいらぬ杞憂を抱えながら、恋人達の夜は更けて行く。


* * * * *


 翌日。
 目を覚ました龍麻は、枕元に綺麗になったローターが透明の箱にきちんと収められて置いてあるのを見て真っ赤になった。
 いつもながら村雨は既に起きており、彼がそれを片付けたのは一目瞭然である。
 夕べの恥態を思い出し、龍麻は思わずシャツを引っ掛けて寝室を出た。手にはローターの箱を持って。
「お早う先生、…おい、どうした?」
 龍麻が起きて来たのを察知した村雨がキッチンから顔を出すが龍麻は返事も返さず、ダストシュートへ向かう。
「おいおい、捨てる気か?」
 躊躇いもなく放り込もうとする龍麻の腕を掴み、村雨は後ろから抱き竦めた。
「お前…っ、こんなの、二度と使うなッ!抹消してやる!」
「藤咲の姐さんがくれたモンだぜ」
 激しく抵抗していた龍麻がその一言で大人しくなる。
「亜里沙ちゃん…?」
 暫し考えていたようだったが、それが昨日のプレゼントだという結論に達するまでにさほど時間は掛からなかったようだ。
「うっ……でも、これは……」
「まぁな、一人で寂しいとはいえ、これが俺の代わりになるとは思えねぇがな」
 夕べの感触を思い出してにやつく村雨の腹に肘をめり込ませる。
 村雨は、龍麻が贈り物に対しては大事にする事を知っているのだ。

「しかしまぁ…何だな、俺が居ない夜にそれで自分を慰めていると考えたら、また萌えるモンだな」

「だっ……誰がそんな事するかあああっっ!!」
 だが、続く言葉に龍麻は本気で鉄拳をめり込ませたのだった。







ジーダの謝辞
朱麗さまのサイト『雲蒸竜変』13000を踏んで、頂いた『お道具』です!
アダルティなものしか思い浮かばなかった、と仰ってましたが、
リクする方も、当然、それを念頭に置いてますとも!!(笑)
わざわざ(男性向け)アダルトサイトにまで出かけてお勉強された成果がこれです!!
皆様、目を皿にして拝みましょう!
朱麗さま、ありがとう御座いました〜!!
次回は、是非とも、これを使った龍麻辞意(誤字)を!!


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