黄龍妖魔學園紀  歌姫編





 放課後、取手は音楽室に行く途中で皆守に会った。皆守の方も取手に気づいて軽く手を挙げる。
 「よぉ。九ちゃん見なかったか?」
 「え…うぅん、知らないけど」
 「ちっ、もうじき下校時刻だってのに、何やってやがるんだか」
 火の点いていないアロマをくわえて、ぶつぶつとこぼす皆守に、取手は少し歩調を緩める。
 皆守は、変わったな、と思う。
 元々、口ではドライに言ってはいても案外世話焼きな男であったが、葉佩が相手だとほとんど『過保護』と言って良いほどに一々口を出している。
 たぶん、そう言うと本人は否定するだろうけど。
 「僕は…音楽室に行こうとしてるんだけどね」
 ぼそぼそと言い訳がましく呟けば、皆守は気の無い様子で相づちを打った。
 そして、階段のところで別れようとして、またくるりと向き直る。
 「ひょっとして、音楽室ってこともあるかもな」
 「そうかな…」
 昼休みなどには、よく音楽室に来て取手のピアノを聞いたりしているが、放課後には探索に備えてさっさと腹ごしらえする事が多く、あまり音楽室に来ることは無い。
 まあ、絶対無いと言い切るほど、葉佩の行動パターンを把握している訳ではないが。
 むしろ、葉佩の行動は意表を突くものの方が多くて、見当も付かない。あっちにいたかと思うと、今度はそっち、といった具合である。
 「メールしてみれば?」
 「あの野郎、最近は返事しないことが多いんだよ」
 苦々しく言われた言葉に、取手は少しばかり首を傾げる。取手自身はあまりメールを送ることは無いのだが、その数少ないメールには、ちゃんと返信が戻ってくるのだ。
 まあ、ひょっとしたら皆守のメールは多すぎて返事をするのが面倒だ、とか、どうせすぐ直接会うからいいや、とか考えているのかも知れないが。
 あるいは、皆守なら、返事しなくても分かってくれると思っているのか。
 そう考えると、葉佩が皆守を手放しで信頼しているようで、取手の胸がちくりと痛んだ。
 皆守は良い男だと思う。四六時中何かに鼻を突っ込んでいるハツカネズミのような葉佩の面倒を逐一見ていて、うまくフォローしている。
 葉佩の方も皆守皆守とすっかり懐いて、たいていは一緒に行動している。
 <転校生>である葉佩に仲の良い友達がいることは喜ばしいことだと思うし、何にであれ興味のない態度を取っていた皆守が大声を出したり散々世話を焼いたりしているのは良い傾向だと思う。
 けれど、何となく落ち着かない気分になるのも確かだ。
 これは、たぶん他愛のない独占欲なのだろう。
 取手にとって葉佩は唯一の友達だが、葉佩にとって取手は大勢いる友達の一人でしか無い。
 だから葉佩が皆守と一緒にいるのは当然なのだろうが、本当は自分と一緒にいて欲しいのだ。
 そこまで考えて、取手はゆっくりと首を振った。
 独占欲、というものは綺麗な感情では無い。
 向けられる方にとっては、たまったものでは無いだろう。
 それに、取手自身、皆守のことも嫌いでは無いのだ。
 だからせめて、皆守といない時くらい、二番目でいいから葉佩と一緒にいられると良いと思う。
 そうして音楽室に近づいていくと、取手の耳には小さな旋律が聞こえてきた。
 ピアノの音と、誰かの歌声。
 左腕に着けた腕時計を見る。
 この時間帯には、誰もいないはずなのだが。
 近づくにつれ、その音ははっきりしてきて、男声であることも分かった。
 「ひょっとして…はっちゃん?」
 呟くと、皆守が怪訝そうに小さな声を漏らしたが、取手は振り返ることなく足を早めた。
 音楽室の扉を軽くノックして、返事を待たずに開ける。
 途端に、異国の言葉が体を包み、皆守が扉を閉じたことで、また音楽室に音が籠もる。
 彼らが入ってきても、音は止まらなかった。
 そのピアノは、取手のような技術は無く、無造作にぽとりぽとりと押さえられているだけのようであったけれど、物憂げな歌声と絡み合い、洗練された弾き方よりもむしろこれでしかない、と思わせる音だった。
 いつも元気一杯な葉佩が、半分目を閉じたような気怠げな顔で、囁くように歌いながら鍵盤を押さえている姿は、まるで別人のようであった。
 けれど、これも葉佩の一面なのだろう。取手は、掠れたようなテノールとピアノの音を聞きながらそう思った。
 溜息のような声が空気に溶けていって、葉佩が指を離す。
 そうして、くるりと振り向いた顔は、いつも通りの明るい笑みを浮かべていた。
 「よーっす!なに?どしたの、二人お揃いでっ!」
 取手は拍手をしながら、答える。
 「僕は…いつも通り音楽室に来ただけだよ。皆守くんは…」
 「俺は単に取手に付いてきただけだ」
 皆守がぶっきらぼうに取手の言葉を遮った。それは嘘では無いが、真実の側面でしか無い。
 だが、どうやら葉佩を探していたとは言いたくないらしい。
 葉佩がひょこっとイスから飛び降りる。
 「うわっとぉ!そっか、かっちゃんピアノ弾きに来たんだっ!悪ぃ、俺、邪魔しちゃった!?」
 「え…うぅん、はっちゃんの歌が聴けて嬉しいよ。ピアノ、弾けたんだね」
 「こーゆーの、弾けるって言うのかなぁ?」
 苦笑して、葉佩は立ったままピアノをぽろぽろと弾いた。音の強弱も無い、人差し指で押す子供のような弾き方だったが、取手は熱を込めて頷いた。
 「うん、凄いよ。クラシックの弾き方じゃないけど、何て言うか…」
 何となく頭に思い浮かんだ光景を、どう言えばいいだろうか、と取手が悩んでいる間に、葉佩が、あはは、と笑って答えを言った。
 「酒場のピアノっしょ」
 頭の後ろに手を組んで、ぺろりと舌を出す様子は悪戯っ子のようだ。
 酒場、という単語に、もやもやした情景が不意に焦点を合わせる。
 薄暗いオレンジ色の間接照明、隅に置かれたピアノ、紫煙の渦巻く空気にアルコールの匂い。そんな中で気怠げに歌われるのに相応しい音だった。
 「ロゼッタで研修受けてる間にさー、よく連れられて行ってたバーのお姉さんに教えて貰ったんだよねー。そのお姉さんの一八番だったんだ、この曲」
 葉佩は年上の女性にもてる。もてると言うか、弟(あるいは息子)扱いされて可愛がられると言うか。きっとその歌姫にも子供に対するように教えられたのだろう。
 まあ、葉佩の場合、かなり年上の女性も全て『お姉さん』であるため、相手の年齢はいまいち不明だが。
 「ロゼッタって…エジプトだったっけ?えっとアラビア語?」
 少なくとも日本語でも英語でも無い言葉だったのは分かったのだが。
 葉佩は首を傾げてから、目を煌めかせた。またろくでもないこと…本人には楽しいことを思いついたのだろう。
 「当ててみて。さっき、俺が歌っていたのは、どんな内容の歌でしょう?」
 全てを聞いたわけでも無いし、歌詞がさっぱり分からないのに、当ててみろ、と言う。まあ、歌詞が理解できたら、そもそも問題にもならないだろうが。
 ちらりと隣を見ると、皆守が苦虫を噛み潰したような顔でアロマをくわえていた。
 音楽に興味のない皆守にとってみれば、そんなことより早くメシでも食いに行こう、と言いたいところだろう。
 けれど、取手はもっと葉佩と一緒にいたかった。
 もっと葉佩の歌を聞いていたい。
 だから、皆守が「くだらないこと言ってないで、さっさと行くぞ」と言い出さないうちに、口を開いた。
 「えっと…僕は…」
 「ストーーップ!」
 わたわたっと駆け寄ってきて、葉佩が両手で取手の口を押さえた。逆に言えば、葉佩の手のひらにキスする形となった取手は、顔を真っ赤にする。
 「駄目!先に甲ちゃんに答えさすの!」
 「んあ?…んなくだらねぇことを…」
 「ほほー。…やっぱ、分からないんだなぁ。そうだよなぁ、甲ちゃん、音楽苦手だもんなー、ま、無理だとは思ったけどさー」
 ふっふーん、とわざとらしく嘲笑った葉佩に、皆守の眉がぴくりと上がる。
 「やーーーーっっぱり!音楽と言えば、かっちゃんだよねーっ!」
 取手の口から手を離し、そのまま取手の手を握った葉佩は、手をぶんぶんと振った。
 皆守の眉が更に角度を上げる。
 手を握られたまま、取手は皆守を窺う。皆守という男は、実のところ取手以上に独占欲の塊である。こんな目の前で取手を持ち上げられて、そのままスルーするはずがない。
 「…ちっ、しょうがねぇ。九ちゃんに付き合ってやる」
 ふん、と皆守は鼻息を荒くして、それから口のアロマを指に持ち替え、びしぃっと葉佩を指した。
 「あの鬱陶しげな音と歌。死人向け…つまり葬式用、えー、いわゆる鎮魂歌ってやつだ」
 取手は内心で頭を押さえた。皆守が葉佩に良いように扱われている。皆守を気の毒に思う気持ちと…葉佩が皆守の操縦法を心得ていることに対するもやもやとした気持ちが胸の奥に沈澱していく。
 葉佩は、皆守の言葉には答えずに、取手を見上げた。
 「かっちゃんはー?かっちゃんは、どう思った?」
 「え…えと、僕は…」
 葉佩の目を見ても、皆守の答えをどう思っているのかは分からない。ただ悪戯っぽくキラキラ輝いているだけだ。
 「僕は…恋の歌だと思ったけど…」
 はぁ!?と皆守が目を剥くのが見えて、取手は俯いた。
 そう、普通に考えれば、あの悲しげな旋律と、溜息のような歌が『恋の歌』であるはずがない。
 葉佩も意表を突かれたように、目を丸くしている。
 「え…何で、そんな風に思ったんだ?」
 「あ…そ、その…何となく…」
 ますます俯いて、取手は溜息を吐く。
 せっかく、音楽なら取手、と思ってくれているのに、見当違いのことを言ってしまっただろうか。頼みの音楽ですら当てにならないと思われたらどうしよう。
 だが、次の瞬間、取手は葉佩に抱きつかれていた。
 「すっげーっっ!かっちゃん、すっげぇぇ!!」
 首にぶら下がるようにしがみついてきた葉佩の腰を反射的に抱いて、皆守の殺気にまた手を離す。
 葉佩は気にした様子もなく、興奮した調子で早口で言った。
 「いやー、マジ、すっげぇよ!何であれで分かるの!?俺、絶対当てられないって思ったもん!」
 「あ…当たったんだ…」
 ぼんやりと呟く取手に、葉佩がキラキラした目を向ける。憧憬と尊敬が露になった瞳に居たたまれなくてもじもじする。
 その様子をイライラと見ていた皆守が、アロマパイプをがちりと噛んだ。
 「ま、まあ、悲恋と言われれば、そんな気もするけどな」
 「悲恋…かな」
 取手はもう一度脳裏に葉佩の歌声とピアノを思い浮かべた。
 「たぶん…他の人から見たら悲恋なんだろうけど…本人は満足してるんじゃないかなぁ…」
 ぼそりと呟いた取手に、首に手を回したままの葉佩がきょとんとした目を向けた。
 「そなの?」
 「え…い、いや、僕がそう感じた…だけだから。ごめん、変なこと言って」
 「いや、ちっとも変じゃないけどさー」
 んー、と首を傾げて、葉佩はピアノに向かった。
 ぽろりぽろりと弾きながら、気怠げな歌を口ずさむ。
 そして、両腕を組んで難しい顔で唸った。
 「どうなんだろ。これ教えてくれたお姉さんは、その辺は教えてくれなかったからなー。俺にはまだ早いっつって」
 くるりとピアノに背を向けて、足をぶらぶらさせる。
 「歌詞の内容としてはさー、確かに悲恋なんだよねー。すっごい愛してた男が帰ってこない、皆が私を狂ってるという、でも、私は待つのって感じ?」
 葉佩の目がどこか遠くを見ているような視線になる。たぶん、そのバーの光景を思い浮かべているのだろう。
 「そっかー。満足してるのかー」
 「い、いや、その、僕がそう感じただけだから…」
 慌てて長い腕を振ると、葉佩が白い歯を見せて笑った。
 「かっちゃんがそう感じたんなら、それで正解だと思うな」
 そんなに手放しで信頼されても…と赤くなってから、ふと少し前の自分の思考を思い出す。
 皆守を手放しで信頼していることに嫉妬したのだが、取手だって信頼されているではないか。それがたとえ音楽のことだけだとしても、それは幸せなことではないか。
 「そのお姉さんはさー、よく言ってたんだよねー。『愛は増えるけど、恋は減るの』って」
 両手でイスを掴んで足をぶらぶらさせている様子はまるで子供なため、それがしかつめらしく『愛』だの『恋』だの言ってる様子は、子供が大人の真似をしているような愛らしさがあった。
 「愛ってのはさ、何つーの?まず両親が好き、兄ちゃん姉ちゃんが好き、小学校の先生が好き…とかいって、どんどん増えていくんだよ」
 葉佩は両手を一杯に広げてそう言った。
 たぶん、それは葉佩には理解しやすい思考だろう。葉佩は誰をも愛せる人だから。
 「だけどさ、恋は一つだけなんだって。死に物狂いで魂を賭けて恋したら、もう二度は出来ないんだって。もう一度しようと思ったら、魂が引き裂かれてしまうんだって。だから、恋は減るの。2回したら、二倍になるんじゃなくて、二分の一に減るんだってさ」
 その辺は、よく理解できてないのだろう。棒読み口調がそれを物語っていた。
 うーん、と首を傾げて、葉佩は唸った。
 「お姉さんには旦那さんも子供もいたんだけどなー。でも、あの歌を良く歌ってたんだよねー。何で愛する家族がいるのに、帰ってこない恋人の歌をずっと歌ってんのかと思ってたんだけど、そっかー、本人はそれで、満足なのかー」
 ひょこっとイスから降りて、取手の胸をぽすんと叩いた。
 「ありがと、かっちゃん。何か、ちょっとすっきりした」
 答えずに、取手は赤くなった。
 切々と歌われるそれから感じたことが、本当にそうなら良いと思う。
 だが、どうだろうか。
 帰ってこない恋人を待ち続ける、周りはそれを不幸と言うだろうけど、本人は待ち続ける自分に満足している。
 それは、本当に幸せな曲だろうか?
 「はっちゃん」
 「なに?」
 「もう一回、最初から聞かせてくれる?」
 「喜んで」
 そうしてピアノに向かう葉佩を、皆守が唇をへの字に曲げて見送った。その後向けられた陰鬱な敵意に取手は気づかないフリをして、葉佩のピアノに集中した。
 力無いピアノの音。
 掠れたテノール。
 それは確かに酒場の歌姫に教えられたピアノなのだろうが、全くトレースしているだけ、というのでも無い。
 そこには確かに、葉佩自身の想いも込められている。
 切ない恋を歌い上げる、それに意味はあるのだろうか。
 ひょっとしたら、ただ、それしか曲を知らないのかもしれない。
 けれど、もし、その曲を選んだことに意味があるのなら。
 
 帰ってこない恋人を想い続けること。
 
 エジプトに、恋人を置いてきた…とか?しかし、そういう類のことなら、これまで何か口にしていそうなものだ。葉佩はあっけらかんとして、何でも喋る人だから。
 葉佩に、死んだ恋人を想い続ける、というようなシチュエーションは似合わない。いや、似合う似合わないの問題でも無いが。
 あぁ、それとも。
 詳しい歌詞は分からないが、帰ってこない恋人は『死んでいる』のでは無いのかもしれない。ただ、歌姫が『捨てられた』だけかも知れない。
 とすれば、もう一つ意味を見出せる。
 
 振り向かない人に恋すること。

 掠れたテノールが、切々と恋の歌を歌う。
 普段の葉佩が見せるような起伏の激しい感情では無い。逆に、静かな湖面のような…だがどこまでも深く澄んだ清冽な感情を思わせる。
 取手は、もう一度、考える。
 何故、葉佩はこの歌を選んだのだろう。
 何故、今、この歌を思い出し、この歌を歌いたくなったのだろう。
 そして、この歌は…誰に向けられているのだろう。
 
 葉佩は、誰に恋しているのだろう。

 取手は、そっと隣の皆守を窺った。面倒くさそうにアロマパイプを囓って、それでもちゃんと待っている男。
 今、葉佩に一番近い人は皆守だろうが…『報われない恋の相手』という気はしない。もしも葉佩が水を向けたら、たぶん皆守は喜んで食いつくと思われる。
 あぁ、そもそも、葉佩は自分の『恋』を自覚しているのだろうか。あんなに喜怒哀楽が分かり易い葉佩のことだ。自覚していたら、周囲にもすぐに分かりそうなものだ。
 自覚もしていないけれど、ひそかに恋い慕う気持ち。
 葉佩の周囲にいる人たちを、脳裏に思い浮かべてみる。だが、葉佩が挙動不審になるような相手はいないような気がする。
 葉佩は誰が相手でもまるで幼なじみででもあるかのようにすぐに打ち解ける。
 たとえ、相手があの生徒会長ででも、だ。まあ、会長の場合は、あっちが打ち解けないのだが。
 恋の相手…可愛らしいお人形のような椎名さんとかどうだろう。…いや『妹のように』可愛がっているだけに見える。
 とても気の合っているらしい八千穂さんは?…『報われない恋』とは無縁な気がする。
 取手は話したことはないが、神秘的な白岐さんとか…どうだろう、ごく普通の同級生として会話をしているように見えるのだが…。
 それから、取手は自分の思考に戸惑う。
 葉佩が誰に恋をしようと、関係がないではないか。
 それは葉佩だけの問題であるのだから、取手が気を揉むようなことでも…ましてや、不快になる所以は全く無いはずだ。
 だが、理性ではそう分かっていても、どうしても気になる。
 何故なら、それは。

 
 最後の一音が消えていって、葉佩は息を吐きながら振り向いた。
 そうして、ひどくびっくりした顔で、取手を見つめた。
 「か、かっちゃん!?どうかした!?」
 イスから飛び降りて取手に駆け寄り、温かな手を取手の額に当てる。
 「熱…ちょっとある?うわ、ごめん、調子悪いのに気づかなかったや!」
 「え、え、え…ち、違うよ、ただ…これは…これは、ね…」
 取手は大きな両手で顔を覆った。
 頬が、いや、顔全体が熱い。
 おまけに、葉佩が触れた箇所から熱がますます広がっていく気がする。
 「音に…巻き込まれただけ…だから」
 
 そう、巻き込まれたのだ。


 恋の歌に。







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