ギシっと音を立てて、ベッドのスプリングが沈む。シングルベッドに男二人が倒れ込んでいるのだから、身動ぎせずとも、軋む音が響く。
「と、取手?」
戸惑いながら、葉佩九龍は上に覆いかぶさる同級生に声をかけた。
だが、取手鎌治は何も言わないまま、じっとこちらを見つめている。どこか縋るような視線。けれど、別の熱も含んでいるような視線。敵意ではないその目は九龍にとって、感じたことのないものだ。
「なあ、取手、何をしたいんだよ……?」
居心地の悪さに九龍は視線を逸らして、問いかける。
「ただ……、君に触れたい」
言うなり、大きな手が九龍の頬に触れた。
「お、おい、取手! ちょっと待ってくれ、俺は男だぞ!」
慌てて、身体を起そうとするが、体格では取手の方が上である。最もトレジャーハンターとして武術の心得はあるし、いざとなれば、投げる事もできなくはない。ただ、尋常ではなかった戦いの時と現在の状況は異なる。
それに……、九龍はどうも、取手の縋るような、慕うような、子犬のような視線が苦手だった。何というか、邪険にできないのだ。
「男だと、触れちゃいけないのかい?」
首を傾げる取手。心底不思議そうな様子に九龍の方が困る。
「いや、でも、そういう台詞は普通は女の子とかに言わないか……?」
「そうかな? 僕は君が大切なだけだけど」
「いや、だから……」
じっと見つめてくる取手に、九龍は何といっていいか、わからず、途方にくれる。
「僕に触れられるのは嫌かい?」
「………………う」
嫌ではない。けれど、この状況は、何となくまずい。
「僕のこと、嫌いかい?」
真っ直ぐ、九龍を見つめながら、尋ねてくる取手。
「いやな、嫌いとかじゃないぞ、ただ、この体勢は――」
言いかけたとき、不意にドアが開いた。
「葉佩、ノート持ってきたぞ…………」
ノートを片手に入ってきた皆守が、ドアの前で固まった。
奇妙な沈黙。
やがて。
「邪魔したな……」
疲れた様子でアロマに火を点けながら立ち去ろうとする皆守。その様子に。
「ちょっと待てー!! 誤解するなあー!!!」
九龍の絶叫が響き渡った。
うわわわ〜ん!第2話と第3話の間で、早くものしかかってるかまちーです!
気弱な大型犬かまちー、天然に正直者です(笑)。
素敵だ…はう(卒倒)。
是非ともこのままゲームを進めて頂き、取手主を書いて頂きたいものです〜。(-人-)ナムナム
茜さま、ありがとう御座いました〜〜!!
あ、茜さまをご存じない方用注意:魔人の村主の方で相互リンクさせて頂いてる『海天藍』の主さまです。
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