民主党の基本方針について

 

 民主党の基本方針に、透明・公平・公正なルールに基づく社会を目指し、市場原理を徹底させるとともに、あらゆる人々に安心・安全を保障し、公平な機会均等を保障する、という素晴らしい理念が謳われています。

 社会保険庁の問題がマスコミでクローズアップされていますが、公共事業を民間発注する際に、公共機関のOBが多数天下りしていると優先的に仕事がとれる、あるいは既に契約業務をもっている企業が有利に受注し新規業者が入り込めない、果ては賄賂で業者が決まるというような事件がいまだに報道されます。もし、こうしたことで社会の仕組みが全て決まってしまうなら、既得権を持っていない人間は努力する意欲を失い、日本の活力は急速に萎縮してしまうでしょう。既契約企業と新規参入企業が対等に技術力を競い合うのでなければ、技術革新の激しい国際競争に、置いて行かれます。1980年代にあれほどの栄光を誇った日本の技術力も最近はアジアの激しい追い上げを受けて影が薄くなっています。このまま行けば著しい発展を遂げる中国に完全に敗退することになりかねません。

 こうした危機の時代に、既得権益を守るためには硬直した社会にしておこうという動きが見られます。東京都などで国歌斉唱を中学生・高校生に強制する教育を行う指示が教育委員会から教師に対して為されていますが、命令をただひたすら従順に聞くばかりで批判精神を失い新しいものに向かって創造的に行動する意欲を失った次世代を養成して、果たして日本はやってゆけるのでしょうか?既得権をもつ階層の人たちは、自分の権利を失いたくない、新規参入を許したくない、現状固定された社会を維持したい、そのためには、何にも考えず右向けと言われれば右を向き、特攻隊員として敵艦に突っ込めと命じられれば躊躇せず突撃して行く、そんな人間を多数育成して、歯車のように使えば自分たちの権益が守られると考えるのかも知れませんが、そんな価値観で人口13億を抱え成長著しい中国と張り合えるのでしょうか。無理ですね。中国の圧倒的な人海戦術の前に、しかも、日中を何とかいがみ合いさせて結びつかないように画策する欧米の思惑に乗ってやってくる中国と、新しいものを生み出す力を失った無資源国で食糧自給率が50%にも達しない日本がどうして伍して行けるのでしょうか。

 激しい国際競争を勝ち抜くために、努力すれば報われる、という意識を次世代に与えることが最低不可欠の絶対条件です。長いバブル崩壊のトンネルからなかなか抜け出せず景気回復も局地的にしかならない日本に今不足しているものは、やればやっただけのことがある、という成功への目的意識です。今の若者を見ていると、何をやっても疲れるだけムダという諦めの観念が徐々に忍び寄っているのを感じます。この諦めの観念は強制によっては絶対に解放されません。環境破壊、遅れてしまったゲノム研究、米国に水を空けられてしまったOS・CPUの技術開発、エネルギー源確保、食糧確保、こうした現状の問題点に対して厳しい批判の目を向けて改善への崇高な意欲を持った世代を養成しなければ21世紀の日本の発展はあり得ません。

 そのためには、機会の均等が保障されていることが技術立国日本が生き抜いて行く最低限の条件なのです。100メートル競走をするときに、スタート・ラインが共通なら、選手は必死に走ろうとするでしょう。しかし、どんなに走力のある人でも、自分は残り100メートルの地点から走るのに、自分よりも遙かに走力の劣る人が残り10メートルのラインからスタートするとしたら、走る意欲を持つはずがありません。苦しいトレーニングに耐えようなどと考えるはずがありません。同じスタート・ラインに立った人間の中で、最も肉体を鍛えた人が100メートルを速く走って優勝カップを手に入れる、そうしたことでなければ厳しい技術革新に耐え抜ける明日の戦力が養成できるはずがないのです。

 恐らくスタート・ラインを揃えるだけでも公平にはならないという意見も出るでしょう。結局は金持ちが筋力トレーニングの高価な機械を導入して鍛えるのだから、食い物も悪い貧乏人が同じような筋力を持てるはずがない、という主張も出ると思います。でも、お金なんてなくても創意工夫によって逞しい筋力を鍛えることは可能かも知れない、やってみる価値はあるかも知れない、100メートル競走で100メートル走る人と10メートルしか走らない人がいるのとは大違いです。とにかく最低限、スタート・ラインを揃えてもらうこと、これが今の日本の政治に必要なことです。既得権や天下りや賄賂では決まらない、技術力のみで競争し評価する社会システムの整備が必要です。付随して考えなければいけないとしたら、お金のない人があとこれだけお金を出しもらえればこういうトレーニングを行ってこれだけの走力をつけることができるということを科学的に示してくれるなら、研究予算をつけましょう、借金の保証人になりましょう、投資もしましょうということは必要だと思います。

 

 それとともに、民主党の議員がよく言っていることがあります。それは、何度失敗してもやり直しの利く社会を目指そうということです。失敗があったときにその責任をきちんととれば、一回の失敗で人生の破滅になってしまうのではなく、その失敗を教訓として新たな提案を示せば新たなビジネス・チャンスに挑戦できるようにしようということです。必死の努力もむなしく予測不能の事態により会社の経営が行き詰まってしまった経営者の全財産を奪ってしまうのではなく、再起に必要な資産は残して倒産即自殺に追いつめないように、という保障のメカニズムが必要でしょう。そして、仮に失敗しても最低限の生活は保障されているという安心感があれば、思い切って大きなビジネス・チャンスに果敢に挑戦する意欲が日本社会の中に湧き起こってくると思います。叩き上げで鍛えられた経営者の中には何を甘いことを言っているのか、という厳しい声も出てくると思いますが、新しいビジネス、新しい雇用、技術革新、システム改革を積極的に進めるためには、それがうまく思い通りに行かなかった場合でも、破滅には至らない社会保障のメカニズムが準備されている、という安心感が必要だし、その安心感があれば、もっと大きくチャンレジして、もっと大きな日本の発展が得られるはずです。

 ビジネスの世界だけでなく、国会議員に対しても同じようなことが言えると思います。国会議員は誰でも目指せるわけではありません。民主党の多くの議員も立候補する前に勤めていた会社や官庁を退職して選挙に臨んでいます。選挙戦に敗れた場合どうやって生活して行くのか目途が立っていなければ、一般人には立候補するなど思いもよりません。民主党では二世議員の弊害が指摘されていますが、親の地盤や知名度があるというのでもなければ、国会議員になろうなどと一般人は考えないと思います。もちろん、国家の政策を立案決定するわけですからそれなりの覚悟は必要だと思いますが、選挙戦に敗北したときの生活保障が確保されていないと、本来政治家としての高い能力を持っている人を政治の世界から締め出すことになるのではないでしょうか。国会議員に立候補者が乱立するようになっては困ると現職の国会議員の皆さんは考えるかも知れませんが、政治を志す若者に機会を与えるためには、民主党の政策理念に基づいて、選挙に敗北したときには元の職場に復帰できる制度、あるいは、選挙に敗れても政治の世界の中で求職活動ができる制度、あるいは選挙運動資金の一部を保証する制度、あるいは新規にビジネスを開拓するための資金を融資する制度などが必要なのではないかと思います。

 それと、失敗したときの最低限の生活保障とともに、そもそも失敗させないメカニズムも必要だと思います。バブル時代に厳しい査定を行うこともなくどんぶり勘定で融資が行われたために、バブル以降の経済の落ち込みの幅を大きくしてしまった、ということが言われています。失敗をさせないように、厳しく査定を行う、ということも必要だと思います。単なるアイデアのレベルで無駄なものをどんどん企画してしまうのではなく、多角的に充分な検討を行って絶対に成功するビジネス・モデルに仕立て上げてから新規事業に参入して行くようなチェックのシステムも必要になるでしょう。そのためには隠された密室で裏取引で決まるのではなく、顧客ニーズを正確に予測するのに必要な情報が全て公開されている必要があるでしょう。痛みを隠してしまうのではなく外部の意見を採り入れてより良い解決法を目指すことを奨励するような経済政策が望まれます。

 最後にもう一つ検討しておくべきことがあります。100メートル競走で言えば8人の選手がいて優勝するのは一人だけです。残りの7人は敗者になります。この敗者に対して、100メートル競争に再チャレンジさせるのか、あるいは他の競争に方向転換させるのか、こうしたカウンセリングのシステム、業務転換のシステムも考えておかないと、優勝者以外が全て切り捨てられるというのでは困ります。有権者の支持も得られないでしょう。昔の国鉄が民営化されてJRになったとき、過剰になってしまう駅員さんや乗務員さんの働き場所を考えなければいけない、という問題がありました。民営化時の規制緩和により、JRがコンビニを経営したり食堂を経営したり新たなビジネスに参入することができるようになりました。駅員さんの中には料理の上手な人もいたでしょう、この人には食堂の調理人になってもらう、交渉の上手な人にはコンビニの仕入れの交渉に当たってもらう、配置転換される人の希望や特技を考慮しながら、そうした人員再配置のメカニズムが国家規模で行えるように、国家規模でどういうニーズが市場にあってどこに求人が何人あるのかという情報が把握され、能力の再教育などが有効に機能している必要があると思います。

 

 

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