民主党の文教政策の基本方針

 

 民主党の文教政策の理念は、ゆとりと豊かさの中で個性と活力が生きる社会を作るために、教育の地方分権化を推進し、価値観・能力の多様性を認める教育を行う、となっています。それに合わせて、少人数学級、奨学制度・入試制度の見直し、語学教育・生涯教育の充実、スポーツ振興などが謳われています。

 

 明日の世代を育てると言うことは、全国一律に平等で均質な教育を行って無色透明のロボットを作ることではないはずです。人間は一人一人顔も違うし声も違うし、数学が得意だったり、サッカーが得意だったり、歌が得意だったり、走るのが速かったり、遅かったり、歩くこと自体が不自由な人、いろいろな人がいます。「期待される人間像」を設定して枠にはめ込んだ人間を作ろうとしても窮屈でなかなか枠にはうまく収まりません。その意味で、運動会ではみんなで手をつないで一緒にゴールするのがベストという考え方が、人間の幸福につながるとは思えません。また、それが社会の要求に答えることだとも思えません。また、先生が右を向けと号令をかけたら何が何でも右を向く、という教育が、日本を先の戦禍の悪夢に陥れてしまった最大の原因であることも確かです。日本の将来の発展のために、各人が自省の目をもつとともに、相互に批判しあえるだけの素養も必要です。

 日本は南北に長い国です。北海道と沖縄では気候も大きく異なります。人間性も、地域によって、また、職種やライフスタイルによって大きく異なります。また、複雑に機能分化した日本社会のもとでは、科学者と野球選手が同じ教育を受けて成功するはずはないし、流通業に従事する人と新商品の開発に当たる技術者とでは必要とする知識も異なります。速く走る人はスポーツで身を立てることを考えればよいし、歩けない人でも手先の器用さで活路を見出せばそれで大きな仕事をこなして行くことが可能なはずです。

 雪深い地域、林業の盛んな地域、牧場の続く北海道、古墳とお寺に囲まれた奈良、美しい海岸に囲まれた沖縄・小笠原、それぞれの地域の特色を生かした人材の養成が行われてしかるべきです。雪深い地域でも地下に光ファイバー網が埋められていれば、情報関係の仕事を行うことができます。大雪の日には子どもたちは登校しなくても在宅で授業を受けることもできます。林業の盛んな地域では、植物学・動物学の生きた教育を行うことが可能です。植林の実習などを通じて緑豊かな日本への愛着も増すことでしょう。北海道の牧場が広がる地域では、畜産業・乳製品加工などの教育が行われるだろうし、奈良では日本の古い文化の学習や古墳発掘の実習もあるかも知れません。豊かな自然に恵まれた地域であれば、観光業への教育が必要でしょう。

 

 そうした意味合いから言って、能力別教育は差別と選別の教育であるという観点が人間性に基づくものだとは思えません。また、各人の将来の生活に寄与するものになるとも思えません。各人の人間性を重視し、将来の生活の基盤を作るためには、教育の現場において、各人の適性と能力に合わせたキメの細かい教育が為されるべきです。また、学校が、各人の適性・潜在能力を発見できるような場であるべきです。そうした観点から、地域差・個人差を考慮した柔軟な教科内容の選択が可能であるべきです。大学入試などで不利にならないような最低限のガイドラインさえ決まっていれば、地域や各人の事情・特質に合わせた教育が為されるべきです。各人の個性・個別事情に即した教育が為されるように少人数学級も必要です。

 もちろん、速く走る人と遅く走る人、歩けない人との間に人間的優劣をつけるようなことがあってはなりません。そのためには、各人にそれぞれ得意技を持たせるような教育が為される必要があります。100m競走で一番になった人にはみんなで拍手、走るのは遅いかも知れないけれど数学が得意で数学オリンピックで入賞した人にもみんなで拍手、走るのも遅いし数学も苦手だけれど楽器の演奏が上手でみんなの心を慰めてくれる人にもみんなで拍手、そして誰もが自分の得意技に自信を持っている、そういう教育を目指すべきです。ただ、出発点は平等であるべきですね。お金のある家の子どもだけが大学に進めるような授業を受けられる、とか、医者の息子だけが医療関係の教育を受けることができる、ということでは困ります。そうしたことのないような、入試制度・奨学金制度の充実が必要になります。

 様々な価値観を認め合う社会では、相互に批判しあいお互いに成長して行くことができます。政治家になった人がいろいろと心を配って政策を作ったつもりでも、実際に福祉の現場で働いている人がこういう場合に困る人が出てくるよ、と指摘すれば、政治家がきちんとそれに対応してくれる。しっかりと安全対策を施したはずの自動車でも、実地に走らせてみると、思わぬ運転をする人がいてさらなる対策が必要だと指摘すれば、開発の見直しをしてより安全な自動車が生産される、そんな相互によりよい目標に向かって批判しあい切磋琢磨してゆく社会こそが、「つよい日本」の原動力になるのではないでしょうか。日本国内には、様々な文化・宗教・価値観が共存しています。それらを認め合い、憲法・世界人権宣言・国際条約の趣旨に基づいて人権を尊重し、不当な差別を撤廃するような教育・啓発活動が行われなければなりません。

 

 

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