民主党の外交・安全保障政策
民主党の外交政策の基本は、米国との関係を重視するとしても対米追随一辺倒をやめ、むしろ国連を中心として国際協調を推進することにより、平和で安全な日本の体制を維持しよう、というものです。
9.11の米国同時多発テロ以来、米国の強硬姿勢は必ずしもうまくいっているとは言い難いですが、やはり、米国、イギリス、日本だけで走ってしまったのが最大の原因だと思います。もう少し粘り強くフランス・ドイツ・ロシアを説得して国際協調に乗って多数の国が協力し合ってやってくれば、イラクも泥沼にならずに、米国兵士もイラク市民も犠牲を出さずに解決できたのではないか、という気がします。日本がとるべき姿勢は、米国のやることに全て諸手をあげて賛成することではなくて、良いパートナーとして言うべきことはしっかり言い、説得すべき時にはきちんと説得活動を行う、という姿勢だと思います。
米国に逆らってしまっては、安全保障条約で守ってもらっているのに、米国に見捨てられたりしたら日本はやって行けるのか、と言う意見があります。米国が米国兵士の血を流してまで日本人民の生活を守るために戦ってくれるとでも言うのでしょうか。米国が米国自身の権益を守るための前線要塞として日本を守る以上のことをやるはずがありません。そのことを考えて、強すぎる米国が暴走するときには、それを止めるのが日本の役目であり、米国の単独行動を諫止することが日本の安全に最も寄与するはずです。また、沖縄普天間基地近隣で起きたヘリ墜落事故で日本の警察が全く捜査活動を行えなかったという事態に対して、民主党は日本の主権を確保し日米地位協定を見直し、合わせて、米軍基地を整理統合することにより規模縮小し段階的に基地の返還を求めて行くという方針を掲げています。
民主党の外交政策では、アジア諸国との連携も重視されています。軍事力を強化することにより日本の覇権をちらつかせ近隣諸国に脅威を与えて日本を防衛するのではなく、相互互恵の精神で共存共栄を図り信頼関係を築き上げることにより、軍事費をかけずに国土の防衛を行っていこうという路線になっています。特に、中国との経済協力関係を強めていくことが重要です。競争してしのぎを削るのではなく、お互いに得意なところを利用しつつ中国も発展し日本も発展して行くための方策を長期的な展望に立って考えて行く必要があります。アジア諸国との相互信頼関係により米軍基地の縮小を図ることができる、というのが民主党の外交政策です。相手が嫌だと言っているのにムキになってＡ級戦犯を合祀している靖国神社に参拝して中国や韓国の反感を呼び、中国がこわいから軍備を固めなければ行けない、よって福祉にも義務教育にも予算が回せない、という自民党の外交政策との違いです。
既に、小泉首相が国連で演説し、日本が安保理常任理事国入りする意思があることを表明していますが、この点は民主党においても変わりません。小泉首相は対米関係をあまりに重視し過ぎている上に、靖国神社参拝の強硬路線をとっているために、安保理入りも中国の支持を受けられるはずもなく、国連演説も宙に浮いた突飛な印象を与えるものになってしまいました。民主党は、中国との関係改善も目指しています。また、人道支援、環境問題、人権問題などについても、日本が国連で積極的な役割を担うことを政権公約に掲げています。特に地球全体の環境保全に対しては日本が積極的に主導権を持って国内法の整備などの対処をして行くことが政権公約に盛り込まれています。こうした国際協調の上に立って多数の国の支持と信頼を集めることにより安保理入りを目指そうというのが民主党の首尾一貫した外交政策になっています。
民主党の国際協調路線においては、テロや国際紛争の際に日本が大きな役割を担えるように、憲法改正を視野に入れてＰＫＯなどの国際的な支援活動への積極的参加を果たすことが必要になってきます。自衛隊を合法的なものとして位置づけ、さらにＰＫＯ活動に派遣するために必要な法整備を行うことが民主党の政権公約に述べられています。この辺は個人的には支持しかねる面もありますが、世論調査では世論の支持を得ているので、対北朝鮮のミサイル防衛手段を講じることなどは日本人の理解は得られていると考えます。寧ろ、武器輸出３原則の緩和や自衛隊の文民統制の弱体化が画策されている状況では、国家防衛体制をしっかり固めた上で、無原則な軍事力肥大化への歯止めをかけることが重要だと思われます。
私としては、憲法改正を行うとしても憲法９条の理念を維持し、この理念を寧ろ積極的な外交上の武器として活用することにより、パレスチナ紛争や、インド・パキスタンの国境紛争などに、平和憲法の理念を踏まえた上での解決策を提示して行くような、世界各国からの称賛を受けられるような国際的リーダーシップを民主党外交政策に期待したいと思います。