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Analog Record Player
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レコードプレーヤーの修理物語

レコードを聴くぞー!といっても肝心のレコードプレーヤーがない。・・・そしてリサイクルショップで見つけた壊れたプレーヤー。その復活までの全記録・・・・ちょっと大げさ。

レコード
ひょんなことからビートルズの「レット・イット・ビー」のLPを手に入れた。楽器店からレコードが姿を消して久しい。昔はレコード店が今はCDショップという。ちかごろではあえてアナログレコードなんて呼び方もしている。
人間って不思議なもので無くなればなくなったでまたほしくなるものだ。私もその一人か、無性にレコードが聞きたくなった。


先輩からレコードとプレーヤーを譲ってもらう
そうこうしているある日、アマチュア無線の先輩青木(JA1QUM)さんから貴重なレコードとプレーヤーを譲っていただいた。それも外国製のプレーヤーである。これで聞けると喜び勇んで再生してみると、あれあれ??確かに再生はできるがオーディオと呼ぶには程遠い音か。クリスタルピックアップであるせいか、もともとの性能か分からないがこれをメインのレコードプレーヤーとするのは難しかろうと感じた。青木先輩、これはお蔵入り(QRT)です、せっかくの好意をごめんなさい。


どんなプレヤーがほしいのか自己分析

さて、どんなレコードプレーヤーがほしいのか?そりゃ新品に越したことはない。新品は5万〜10万円もするのである。
高けりゃいいってものではない。最低限の性能として、
 (1)回転にムラがないこと。正確な回転が維持できていること。
 (2)MMカートリッジまたはMCカートリッジ式であること。
そして予算は1万円以内とした。CDプレーヤーがやはりメインで聞くことを考えるとそうそう投資はできない。
結果、リサイクルショップで適当なものを探すこととなった。探すための条件として次のことを念頭に置いた。
 (1)ダイレクトドライブ式のもの。ベルトドライブはベルトがだめになっている場合致命傷だから。
 (2)カートリッジは付いていないもの。これは、中古品はカートリッジはほとんど役立たずと思われたから。カートリッジなしのほうが安い。
 (3)できればオートリターン、フルオート式のもの。
 (4)カートリッジ新品買うことを考えると、購入価格5,000円ぐらいまで。
1ヶ月ぐらいあちこち探し回っていたら、あるものだね。3,800円で条件にぴったりのものがあった。
パイオニア製PL-380Aというもの。もちろんジャンク品だが、オートリターンする、回った。と書いてある。その上なんとクオーツPLLのダイレクトドライブ式、フルオート式だ。台座足のバネがへたっているせいかターンテーブル部分が落ち込んでいるがこれは直せそうだ。




動くには動いたが
まずは汚れをきれいに拭き磨いたら見違えるほど綺麗になった。落ち込んだバネも調整ねじが全部緩んでいただけでちゃんと調整してやるとまったく問題ない状態となった。オートリターンもちゃんと来る。うふふ・・・これ結構当たりだったかもと嬉しくなった。
翌週、新品のカートリッジを買いにいく。オーディオテクニカのAT10G、定価7,000円だが新品3,300円で購入できたラッキー。これでプレーヤーとしめて7,100円で予算内である。
早速、カートリッジをつけてレコードを再生。しかし、
あれ〜・・おかしいぞ、音が・・・ 〜〜〜〜回転ムラだ。
まてまて、落ち着け、オートでやったからだめだったかも、今度はレコードに手で針をそっと落とす。〜むん、やっぱりだめだ!ひどい回転ムラだ。音楽どころではない。
よくよく見てみると、Quartz-LOCKと言うインジケータがついたり消えたり。


安物買いの銭失い
レコードプレーヤーとして基本性能の回転にムラがあることは致命的欠陥である。いくら安いとはいえそりゃないぜ・・・と言いたいが所詮ジャンク品。
●安物買いの銭失いか・・・。
●ジャンク品にはこんなリスクはあるもんだよな。
●こんな致命的欠陥だから安かったんだよな。
ってなぐちばかり心の中で言っている。
しかし、ネガティブになっていても仕方ない。きっぱりあきらめるか、徹底的に修理をするかである。
せっかく新品のカートリッジまで買ったことだし、よ〜し、気持ちを切り替えて直そう。修理もまた楽し。だぁ〜


分解

まずは分解。



プリント基板が見えるが、ダイレクトドライブをクオーツ(水晶)PLLでやっているだけに電気回路がびっしり。ここから上蓋をはずす、バネを直すときに一度分解しているがこのプレーヤーやたらとねじが多い。天下のパイオニアとは思えない。

回転ムラの症状からまずは電源回路の電源リップルを疑った。オシロスコープで見るとやや大きめ。部品の中でもっとも劣化するのは電解コンデンサ。そこで、主要な電解コンデンサを交換。しかし直らず。主要な電源はパターンから追っかけ確認したが特に問題はなさそうだ。電源関係じゃない。
回転制御用と思われる半固定ボリュームが33回転用と45回転用がある。安物の半固定ボリュームだったのでこれも交換したが関係なかった。PLL付近の抵抗コンデンサを交換したがこれも改善せず。
その他の回路はパイオニア専用のICが使われていて中身が分からず、電気回路もなし。基盤の半田付け劣化してそうなところをすべて半田のし直し。・・・しかし徒労に終わった。ここからは気力の勝負。

ダイレクトモーターは

モーター自体が壊れたのか?そうなると本当に致命的だが。モーターの上蓋をはずしてみる。

おー、なんと綺麗なこと。赤、緑、金色の三色のコイルが並んでいる。3組並んでいると言うことは位相を120度でずらし三相で制御しているらしい。それぞれのコイルが断線していないかテスターで当たるがどれも断線はしていないようだ。
あれれ、その下の基盤にラーメン丼のふちにあるような模様があるぞ。ぐるっと一周している。これは回転数ピックアップ用のセンサではないかな?ためしにその出力をオシロにつなぎ手で回転してみた。ほんの微量だが正弦波が出てくる。この線をたどって先ほどのプリント基板をチェック。増幅されたと思しき出力部分を発見。そこを周波数カウンタとオシロスコープで観測してみることにする。


不良箇所発見
周波数は33.3回転のとき54Hzあたりをふらふらしている。オシロも同期が取れず波形がふらついている。回転ムラを起こしているのだから当たり前と言えば当たり前だ。
33.3回転と言うと周波数は
f=33.3/60=0.55555(Hz)
になる。と言うことはモータの回転ピックアップはその100倍の周波数を発生している。あの模様は一周100個あるのだとピンときた。つまり、55.555Hzになればいいわけで、PLLはこの周波数で比較しているはず。なおも基盤のパターンを追いかけてみると水晶発振器に行き着く。ここも気になっていたところだがどうしても発振周波数が読み取れないでいた。普通水晶に原発信周波数が印刷されているがこいつは記号だけでそれがない。

その水晶をはずしてデップメータで計ってみる。発振しない。なんと原発信の水晶が壊れているのだと分かる。ところで原発振はいくらなのか?パイオニアに問い合わせてみるか・・・。とりあえず手持ちの時計用水晶9.765625MHzをつけてみた。比較周波数のところを見てみると44.147Hzあたりを比較的安定に推移している。これが55.555Hzになればいいのだから逆算して
9.765625:X=44.147:55.555 から
X=9.765625*55.555/44.147=12.289MHz
原発振周波数となる。同じように45回転のほうも計算すると12.287MHzと算出できた。12.287MHz〜12.289MHzの水晶をつければいいことになる。そこで、サトー電気のHPで確認すると12.288MHzと言う水晶がある。それもいろいろな型がありかなり一般的なようだ。これに間違いないと確信する。
次の休日に町田のサトー電気に12.288MHzの水晶を買いに行った。1個250円。


直った!

早速買ってきた水晶を取り付け電源ON。比較周波数は「おぉ〜」55.55Hzになっている。45回転のほうも75Hzだ。周波数偏移もほとんどない。そして、Quartz-LOCKのインジケータのLEDがぴかりと光っている。PLLが完全にロック状態だ。直った!
そして、レコードをターンテーブルへ乗せ聞いてみる。うん、OKだ、回転ムラはまったく感じられない。
ここまでの道のり長かったが、直った喜びと満足感にしばし浸っていた。


レコードも悪くない
さて、やっと直ったところで、ゆっくりレコード鑑賞。RIAAイコライザはONKYOのアンプを拝借して真空管アンプに入れ音を出してみた。CDと違い音質はあまり期待していない。ところが、なかなかいい音を出すではないか。低域も高域も悪くない。レコードによってはぱちぱちとほこりによるノイズも入るがそれもまたよし。想像以上の音に新たな感激を覚える。
これは、たぶんレコードは音質的にあまり期待できないと言う先入観があり、それを打ち壊すに充分な音質であったからであろう。これが、CDなら話が違う。いい音質を期待するから、古いレコーディング(ジャズなどよくある)をCDにしたものは聞いたときにがっかりする。
ところが、レコードの場合、たとえばオスカーピーターソンの1960年代の録音レコードでも、うん、なかなかやるじゃない。と言うように感じるのであろう。


RIAA特性
レコードの場合、カートリッジからの出力をそのまま増幅したのでは高音ばかり耳について決して原音ではない。これは、レコードと言う録音媒体に起因する。
レコードはその音の波形を溝に刻んでいく波形の振幅が大きければ大きな音となる。ところが音は高音から低音まであり、低音ほど大きく振幅させないとそれなりの音が出ない。そのままをレコード溝に刻んでいくと低域では隣の溝まではみ出してしまい溝間隔を広くとらなければならなくなる。
そこで、考案されたのがRIAA特性だ。録音時隣の溝にはみ出さないように低音を抑え低音も高音もちょうど溝に収まるように書き込む。そして、再生のときにその低音を抑えた分余計増幅してやる。周波数により増幅度合いを決めたのがRIAAという特性カーブだ。
次は真空管でこのRIAA特性イコライザアンプの製作だ!


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