PCL86 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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キットを改造して自分好みにするのも楽しみのひとつです。 「春日無線のPCL86シングルキット」を超三結(超三極管結合)に改造してみようと思います。 この改造の前にいちどPCL86で超三結を作っています。予想通りなかなかいい音なのです。6BM8でも組んでみました、出力トランスが違ったりで簡単に比べることは出来ませんが・・・私はPCL86のほうが好みの音でした。 そこで、PCL86キットを見てみるとちょっとした部品の変更で超三結になりそうです。 このキット、こんな小さな出力トランスにしては充分いい音なのですが、それでも聞いているうちに欲が出てきます。もっと低音が出ないか、もっと高域につやと伸びがほしい。1Wの出力・・・休日にはもう少し出力を上げてオーケストラを聴いてみたい。などなど人間の欲は限りがありません。 そのような欲望もあるのですが、改造をしたいという欲望はまた別なところにもあります。それは、別のアンプを作ってみたいといったものです。私は後者のほうが強くアンプを作る過程に強く魅力を感じるのです。元来ハード志向の人間のようです。 |
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キットの改造にはいくつかの制限があります。シャーシ、トランス類をはじめ従来の部品を極力流用することにします。 まず、出力5極管のプレートに流す電流ですがアウトプットトランスの最大電流は20mAですのでこれを超えることは出来ません。18〜19mAに設定します。 次にバイアス用の抵抗ですがカソードの電圧を36Vとし、18mA流れるとすると抵抗値は2kΩになります。 36/0.018=2000Ω この自己バイアス用抵抗で消費する電力は W=V*V/R から 36*36/2000=0.648W ここはそのまま熱になりますので少し余裕を見て3Wの抵抗にしました。 電源回路はもう少し平滑用の電解コンデンサの容量がほしい気がしますがそのまま流用します。そのかわり初段供給が無くなりますので33μの電解コンデンサをチョークのあとのコンデンサとパラって接続し少しでも容量を稼ぎます。 あとは、初段を定番のFET2SK30Aを使用しました。 回路は下記のとおりです。 |
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さて、この改造に使用する新たな部品はどのようなものでしょう。 部品表でまとめてみました。NFBをやらず純な超三結で行くなら7.5kと220Ωの抵抗は各2本不要です。 |
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まず、キットの回路と超三結の回路をちょっと見には似てそうですが、実際製作と言う目で見てみると結構な違いであることが分かります。切ったり張ったりの配線では無理があると思い、まずは真空管の足あたりの部品をすべて取り除き配線し直すことにしました。電源回路はそのまま使えます。 左が真空管回りの部品を取り除いたものです。ラグ端子の足が足りないため工夫しながら配線しなくてはいけません。 そして、右が組み上げたものです。 FETの2SK30Aの足の見方は左からS(ソース)、G(ゲート)、D(ドレイン)の順になっています。 |
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組み上げたらすぐ聴いてみたいものですが、そこをこらえてまずは誤配線がないかしっかりチェックです。特に改造や手直しの場合思い込みがあったり先に作った自信からチェックがおろそかになりがちです。今回は結構ばらしたので念には念を入れて配線チェックを行います。 超三結は初段のFETのソースに5kΩの半固定抵抗が付いていてこれを調整しなければいけません。 調整時は感電に充分気をつけてください。 調整の仕方は (1) 5k半固定抵抗の位置をまず中央付近にしておきます。 (2) テスターでDC40V程度が計れるレンジにしておきます。 (3) アンプの電源を入れます。 (4) ヒーターが温まるまで10秒程度待ち、テスターで5極管のカソードF番ピンとアース間の電圧を読み取ります。ここの電圧が36Vになるように半固定抵抗で合わせ込みをします。 (5) もう一方も同様に合わせ込みをします。 (6) 電源容量が小さいため片方を調整しますともう片方が若干ずれてしまいます。何度か合わせ込みをして約36Vになったら調整はおしまいです。 (7) 念のためB電源が230〜260V程度になっているか確認します。200V以下ですと電流が流れすぎ、どこかおかしいですので再点検します。 (8) いったん電源を落とし、ケースを閉じ完成です。 |
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調整が済んだら、早速聞いてみました。私は最初フィードバックなし(7.5kΩ抵抗なし)で組み上げました。 う〜ん、いける音です。なかなかいいです。今となってはオリジナルキットの音と聞き比べることは出来ませんが、何か迫力が増した感じがします。 それからゲインが増した感じでボリュームの位置が今までより少なくて音量が出ました。 これはこれで満足でしたがもうひとつ高域の透明感がほしい、そして低音の迫力は増さないかとフィードバックをとってみることにしました。 その結果、高域がぜんぜん変わりました。シンバルのあの繊細な音がちゃんと聞こえるようになり、大満足の音です。ただし、低域はトランスの限界でしょうかズシーンとくるところまでは行きません。それでも充分感動できるアンプに仕上がりました。 ただし改造を試みる方は過度の期待は禁物です。音はアンプだけで決まるものではありません。入力ソースやスピーカーシステムでもうんと違います。 オリジナルのキットを組み上げたときも価格の割りになかなかええ音と感動したものですが、400円程度でもういちど感動を味わうことが出来ました。 |
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FBをかけることで音の違いが出ましたので周波数特性を取ってみました。 本来なら歪特性も計りたいところですが・・・歪率計がない・・・。 そして下記のような結果が出ました。 FBをかけることで50k〜70kHzあたりがぐっと盛り上げって来ました。これが高域の繊細な音となって現れてきたのは間違いありません。人の耳は20kHz当たりが可聴周波数の限界とされていますが、感じる音には違いが出るものなのですね。 波形は乱れもあまり出てなく素直なカーブです。ただ、小さいトランスの宿命低域は限界のようです。低域カーブはオリジナルキットのときとほとんど同じ曲線を示しています。 |
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裸特性 NFBをかけたときの特性 |
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入出力特性を取ってみました。 本当は歪特性で見るべきでしょうが入出力でも多少の判断にはなるだろうと取ったのが下のグラフです。これで見ると1.5Wぐらいまでは出ていそうです。迫力が増した感じは出力が増したからでしょうかね。出力を5極管にしたおかげだと思います。ここでも超三結の御利益にあずかりました。 |
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真空管Home JK1EYP-Home |